2021年07月05日

さくらレポート(2021年7月)~多くの地域で製造業の水準がコロナ前を上回るも、先行きの慎重姿勢は強い

経済研究部 研究員   藤原 光汰

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1.全9地域中2地域で景気判断を引き上げ、2地域で引き下げ

7月5日に日本銀行が公表した「地域経済報告(さくらレポート)」によると、全9地域のうち、2地域で景気の総括判断を引き上げ、5地域で判断を据え置き、2地域で引き下げた。北陸、近畿では総括判断から「厳しい状態」の文言が削除され、総括判断が引き上げられた。中国、四国は総括判断が引き下げられたものの、「持ち直しのペースが鈍化している」として持ち直しの基調は維持されており、その他の地域でも「持ち直している」あるいは「持ち直しつつある」との認識を示す地域が多かった。一方、北海道は前回の報告に続き「横ばい圏の動き」との判断が維持された。需要項目別等別の判断をみると、多くの地域で個人消費、設備投資が持ち直す中、北海道では持ち直しが遅れていることが示されており、このことが景気の改善を遅らせる要因になっているとみられる。
地域経済報告

2.業況判断の改善ペースは地域ごとに異なり

「地域経済報告(さくらレポート)」と同時に公表された「地域別業況判断DI(全産業)」をみると、全9地域中8地域で前回調査(2021年3月)から改善し、九州・沖縄は横ばいとなった。

前回調査からの改善幅をみると、中国が+7ポイントと大きく、次いで北陸、関東甲信越が+6ポイントとなっている。一方、+2ポイントの改善にとどまった四国、前回から横ばいとなった九州・沖縄は前回調査における改善幅も相対的に小さく、景況感の改善が緩やかにとどまっており、改善ペースが地域ごとに異なっている状況が窺える。

先行き(2021年9月)の景況感については、6地域でDIの水準が低下しており、多くの地域で悪化が見込まれている。さくらレポートにおいて景気の総括判断が引き下げられた中国、四国は、持ち直しの基調判断が維持されたものの業況判断DIの低下幅は最も大きくなっており、先行きへの警戒感が非常に根強いことが窺える。

全体として、ワクチン接種の進展による経済活動の回復が期待される一方、感染力の強い変異株の流行が懸念されているほか、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の長期化に伴い経済活動の制限が続いているため、先行きの不透明感は引き続き強いものとみられる。新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中で、景況感を楽観視できない状況は今後も継続するだろう。
地域別の業況判断DI(全産業)/業況判断DIの変化幅(全産業)

3.製造業の業況判断は8地域で改善、うち7地域はコロナ前の水準を回復

製造業の業況判断DIは、9地域のうち8地域で改善し、四国は悪化した。この結果、北海道、四国を除く7地域は新型コロナウイルス感染拡大前(2019年12月)の水準を回復した。

世界経済の回復を背景とした輸出の増加に伴い、製造業の生産活動は堅調に推移しており、景況感も多くの地域で改善がみられた。業種別には、国際商品市況の改善を反映し、鉄鋼や非鉄金属が多くの地域で改善したほか、世界的な設備投資の回復を背景にはん用・生産用・業務用機械でも改善がみられた。一方、半導体不足による自動車の減産を受けた輸送用機械の悪化が重荷となった。

前回調査からの改善幅は、関東甲信越(+13ポイント)が最大となり、次いで北海道(+12ポイント)、北陸(+11ポイント)が高い。北海道では、ほとんどの業種で改善しており、特に電気機械(+43ポイント)や木材・木製品(+33ポイント)が強い。一方、四国は▲1ポイントの悪化となっており、紙・パルプ(▲26ポイント)や鉄鋼(▲20ポイント)の低下が下押し要因となった。

先行きについては、4地域で改善、4地域で悪化を見込んでいる。北陸は鉄鋼(+57ポイント)やはん用・生産用・業務用機械(+9ポイント)が好調を維持していることなどを受けて+4ポイントの改善を見込んでいる。一方、近畿は半導体不足の影響で輸送用機械(▲7ポイント)の2四半期連続の悪化を見込んでいるほか、電気機械(▲5ポイント)など、多くの業種で悪化が見込まれており、全体では▲3ポイントの悪化が見込まれている。業種別では、原材料価格の高騰が先行きの重荷となっており、多くの地域で木材・木製品の悪化が見込まれているほか、非鉄金属、金属製品でも悪化を見込む地域が目立っている。

なお、日銀短観6月調査では、2021年度の想定為替レート(全規模製造業ベース)が106.53円と、前回調査の想定(105.93円)よりはやや円安方向に修正されたものの、足元の為替相場(111円台)よりもかなりの円高水準を想定している。為替が現在の水準を維持し続ければ、これは製造業の景況感の上振れ要因となる。
地域別の業況判断DI(製造業)/業況判断DI(製造業)の変化幅
改善・悪化幅(前回→今回)/改善・悪化幅(今回→先行き)

4.非製造業の業況判断は伸び悩み、製造業との二極化がさらに際立つ内容に

非製造業の業況判断DIは、8地域で改善し、九州・沖縄は悪化した。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令に伴い、対面型サービスを中心に非製造業は前回調査に引き続き低迷を余儀なくされた。その結果、非製造業の改善幅は製造業を大きく下回っており、製造業と非製造業との二極化の構図がさらに際立つ内容となった。

業種別では、緊急事態宣言の発令に伴う休業要請、営業時間短縮要請の影響で、すべての地域で小売が前回調査から大きく落ち込んだ。小売は前回調査でDIの水準がプラスを維持していた地域もあったが、今回調査で景況感が落ち込んだことで、四国を除く全地域でDIの水準がマイナスとなっている(四国は0)。一方、自粛要請の影響を強く受ける宿泊・飲食サービスや対個人サービスでは、東北や近畿など、改善している地域もみられた。厳しい経営環境であることに変わりはないが、もともとのDIの水準が低位であることに加え、前回調査時点と比べて人流が増えていることなどが影響したものとみられる。

前回調査からの改善幅は、近畿が+5ポイントと最大となり、北陸、関東甲信越、四国が+3ポイントで続いた。近畿では、対個人サービスや宿泊・飲食サービスのほか、デジタル関連需要の強さを反映し情報通信(+10ポイント)や資源価格上昇の恩恵を受ける卸売(+15ポイント)などで改善した。

先行きについては、3地域で改善、5地域で悪化を見込んでいる。木材価格の高騰を受けて建設が全地域で悪化しており、全体を下押ししている。一方、宿泊・飲食サービスや対個人サービスは多くの地域で上昇している。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置は長期化しているが、人の移動が増えてきていることや、ワクチン接種の進展に伴う経済活動の回復を期待しているとみられる。

先行きの改善幅も、非製造業は製造業を下回っている。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの影響はサービス業を中心とした非製造業に表れるため、次回調査(2021年9月)でも製造業と非製造業の二極化の構図は変わらないだろう。
地域別の業況判断DI(非製造業)/業況判断DI(非製造業)の変化幅
改善・悪化幅(前回→今回)/改善・悪化幅(今回→先行き)
 
 

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経済研究部   研究員

藤原 光汰 (ふじわら こうた)

研究・専門分野
日本経済

(2021年07月05日「経済・金融フラッシュ」)

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