コラム
2021年08月27日

鈍る緊急事態宣言への反応

経済研究部   藤原 光汰

このレポートの関連カテゴリ

緊急事態宣言 日本経済 などの記事に関心のあるあなたへ

btn-mag-b.png
基礎研 Report Head Lineではそんなあなたにおすすめのメルマガ配信中!
各種レポート配信をメールでお知らせするので読み逃しを防ぎます!

ご登録はこちら

twitter Facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 Pocketで後で読む

文字サイズ

変異株の感染拡大などにより、新型コロナウイルスの感染者数が増加の一途を辿っている。政府は緊急事態宣言・まん延防止等重点措置を発令し、経済活動に制限を課すことで感染拡大の抑え込みを図っているが、状況はなかなか改善せず、その結果宣言の延長・対象地域の拡大が繰り返されている。7/12時点では、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の対象地域が6都府県だったが、本日(8/27)から緊急事態宣言が21都道府県、まん延防止等重点措置が12県へと拡大している(図表1)。
(図表1)緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置の対象地域、期間

緊急事態宣言下での人出

緊急事態宣言の発令により経済活動を制限し、人流を抑制することで感染を抑えようとしているが、人流の抑制効果はどの程度あるのだろうか。東京都および大阪府の人流データをみると、1回目の緊急事態宣言が発出された20年4~5月は人出が大きく減少し、緊急事態宣言による人出の抑制効果は非常に大きかった。しかし、2度目、3度目の緊急事態宣言が発令された21年1月~3月、4月末~6月の人流の減少は1度目を下回っている。また、期間中に緊急事態宣言の期限が何度も延長され、宣言の終わりが見えないという状況で、人々の“自粛疲れ”が現れ始め、宣言期間中にもかかわらず人出が徐々に増加することとなった。さらに、宣言の解除からわずか3週間で再び発令された21年7月~現在にかけては、発令前と比べてほとんど人出が減少していないことがわかる。このことから、緊急事態宣言による人出の抑制効果は、宣言を発出するたびに弱くなっていることに加え、何度も期限の延長を繰り返すことが効果を低下させてしまっている。

一方、2021年5月に、およそ1年ぶりに2度目の緊急事態宣言が発出された岡山県および広島県の人流データをみると、2020年の宣言期間と同程度に人出が減少しており、一点集中型の政策としての緊急事態宣言は、人々に行動変容を促し、人流を抑制する効果が発揮されると考えられる。
(図表2)小売・娯楽施設の人出(東京・大阪)/(図表3)小売・娯楽施設の人出(岡山・広島)

緊急事態宣言に対する感応度は低下

人流データから緊急事態宣言による人出の抑制効果が弱まっていることが読み取れるが、実際に人々が緊急事態宣言をどのように受け止めているのか、景気ウォッチャー調査を用いて調べた。景気ウォッチャー調査は、景気動向を敏感に反映する現象を観察できる業種の適当な職種の中から約2,000名にアンケートを実施しているため、人々の緊急事態宣言への感応度を確認することができると考えられる。

景気ウォッチャー調査の結果から、長期間にわたって緊急事態宣言の対象地域となっていた南関東と近畿の結果を取り出し、「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」という単語を含むコメントが、全コメントに占める割合を示したものが図表4、図表5である。

緊急事態宣言についてコメントした回答数は、20年4、5月が20%程度と小さかったが、これはコメントの大部分が“新型コロナウイルス”という単語を含んでいたことが影響している。新型コロナウイルスの流行初期だったため、人々が緊急事態宣言よりも新型コロナウイルスというワードに強く反応していた。したがって、コメント数は多くないが、緊急事態宣言への感応度が低かったという訳ではないだろう。その後緊急事態宣言の解除を経て20年末に0%となった後、2度目の緊急事態宣言が発出された21年1月には、関東・近畿ともに40~50%程度に急上昇したものの、2月は宣言の期間中であるにもかかわらず、前月からコメント数が減少している。コメントの内容を見ると、景気の悪化要因として挙げている割合が2月に大きく低下し、変わらないと答えている割合が上昇している。この結果、景気の現状判断DIは1月から上昇している。また、4月に再び緊急事態宣言が発出されると、コメント数が再び増加したが、その割合は1月と比べると若干低いほか、悪化要因として挙げている割合も低下している。さらに、南関東は、東京都が7月に4度目の緊急事態宣言を発令したものの、コメント数は6月から減少している。これらのことから、宣言の期間が長引き、解除と再発令が繰り返されるもとで、緊急事態宣言に対する人々の感応度は徐々に低下しているといえるだろう。
(図表4)緊急事態宣言関連のコメント数(南関東)/(図表5)緊急事態宣言関連のコメント数(近畿)
このように日本では緊急事態宣言の発令により感染拡大の抑え込みを図っているが、宣言に対する人々の感応度は低下し、人出の抑制効果はかなり薄まっており、宣言の終わりが見えない状況が続いている。一方で緊急事態宣言下の飲食店などへの営業制限等により、対面型サービス業種を中心とした経済への悪影響も大きい。

ワクチン接種が進む欧米では経済活動の正常化が進展している。イベントは人数制限の規制を撤廃するなど、コロナ禍の影響を大きく受けた対面型サービス業種も持ち直しつつあり、日本に先駆けて経済の回復が進んでいる。日本ではワクチン接種の開始が欧米に比べて遅れたものの、足元で接種ペースは加速しており、8月末には2回目の接種率が全国民の50%近くに、9月末には60%近くに達する見通しとなっている1。欧米と同様に、経済活動の正常化に向けた議論を進めるためにも、医療体制の拡充が早急に求められるだろう。
 
1 2021年8月17日菅内閣総理大臣記者会見より
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
twitter Facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 Pocketで後で読む

このレポートの関連カテゴリ

経済研究部  

藤原 光汰 (ふじわら こうた)

研究・専門分野

(2021年08月27日「研究員の眼」)

アクセスランキング

レポート紹介

【鈍る緊急事態宣言への反応】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

鈍る緊急事態宣言への反応のレポート Topへ