2021年08月11日

景気ウォッチャー調査(21年7月)~感染再拡大や緊急事態宣言再発出から先行きへの警戒感強まる

経済研究部 准主任研究員   山下 大輔

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1.景気の現状判断DIは2か月連続上昇、先行き判断DIは2か月ぶりに低下

現状判断DI・先行き判断DIの推移 8月10日に内閣府が公表した2021年7月の景気ウォッチャー調査(調査期間:7月25日から月末)によると、3か月前との比較による景気の現状判断DI(季節調整値)は48.4と前月から0.8ポイント上昇した。他方、2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は48.4と前月から4.0ポイント低下した。先行きDIは再び50を割った。

地域別でみると、現状判断DI(季節調整値)は、全国12地域中8地域で上昇した。前月からの上昇幅が最も大きかったのは九州(前月差4.7ポイント)で、前月からの低下幅が最も大きかったのは沖縄(前月差▲13.9ポイント)であった。他方、先行き判断DIは全国12地域で前月よりも低下した。
今回の結果からは、このところの感染急拡大の影響により、先行きの景況感への懸念が強まっていることがわかる。ただし、調査期間中には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、コロナ禍の長期化、これまでの景況感の大きな悪化の経験、自粛のあり方や人々の行動様式の変容なども相まって、感染動向は景気の現状判断にそれほど大きな影響を与えなかったのかもしれない。また、景気の方向感を示す現状判断DIと異なり、景気の水準感を示す景気の現状水準判断DI(季節調整値)は39.0となり、低水準とはいえ、コロナ以前の2020年1月の39.1と同程度に回復した。
地域別現状判断DI・先行き判断DIの前月差/現状判断DIと現状水準判断DIの比較

2.景気の現状判断DI(季節調整値):家計動向関連が上昇

現状判断DI・回答者構成比 現状判断DI(季節調整値)は、4月に9.4まで落ち込んだ後に、5月から6か月連続で改善し、10月には50を超えた。その後の感染拡大により、11月から下落に転じ、21年1月には31.2まで落ち込んだが、2月、3月と大幅上昇に転じていた。しかし、一部地域に対する休業要請を伴う緊急事態宣言再発出などにより、4月は大きな落ち込みとなり、5月もわずかに低下した。沖縄県以外に対する緊急事態宣言が解除されたことなどから、6月は3か月ぶりに上昇した。調査期間前の7月12日から東京都に緊急事態宣言が再発出されたが、7月調査でもDIの改善は継続した。(調査期間後の8月2日から、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府に対しても再発出)
景気の現状判断DIの回答者構成比をみても、改善又は現状維持と回答した割合が増加し、悪化と回答した割合が減少した。

現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連は47.2(前月差+2.6ポイント)と2か月連続で上昇したが、企業動向関連(49.4(同▲3.7ポイント))、雇用関連(53.7(同▲2.4ポイント))は低下に転じた。家計動向関連の内訳をみても、小売、サービス、飲食は前月に引き続き上昇した。住宅は、木材不足の影響がみられている。なお、企業動向関連や雇用関連の低下は、前月までの上昇が一服したためとも考えられるが、企業動向関連については半導体不足の影響もみられている。
現状判断DI(家計動向関連)の内訳の推移/現状判断DIの内訳の推移
<東京オリンピック・パラリンピックについての回答者の主なコメント>
「オリンピック」のコメント数と現状景気判断
  • 東京オリンピック開催に伴い、警備関係者の団体宿泊を受け入れたため、稼働の底上げにつながっており、稼働率が最終で85%に戻ってきている。ただし、依然として客単価は以前より低い(東京都)(南関東・都市型ホテル(スタッフ))
  • 東京オリンピックの開催に伴い客の動きが明らかに消費に傾いている。ただ、こうした動きが一時的なものかどうかが分からない(北海道・百貨店(役員))
  • 梅雨が明けても、前年より夏物商材の動きが鈍感である。テレビの動きも東京オリンピック需要は少ない(北関東・家電量販店(店長))
  • 新型コロナウイルスの影響か自宅で東京オリンピック中継を観る家庭が多いのか分からないが、昼までは例年どおりの来客があるが、午後2時から急に来客数が減っている(東海・一般レストラン(経営者))
<ワクチンについての回答者の主なコメント>
「ワクチン」のコメント数と現状景気判断
  • ワクチン接種の開始や、新型コロナウイルスへの慣れにより、人の動きが活発化している。近場での行楽も増えており、少しずつではあるが景気は回復基調となっている。来客数も前年を上回ってきている(近畿・スーパー(店長))
  • ワクチン接種が進んでいることが影響してか、観光関連や集客を目的としたイベント関連の広告が戻りつつある(東海・新聞社[求人広告](営業担当))

3.景気の先行き判断DI(季節調整値):全ての内訳で下落

先行き判断DI・回答者構成比 2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は、20年7月に感染拡大への懸念で大きく落ち込んだ後に、11月を除いて上昇し、21年3月から2か月連続で大きく低下したものの、5月、6月と再び上昇していたが、再度低下した。感染再拡大による先行きへの警戒感が強まっている。

景気の先行き判断DIの回答者構成比でみても、悪化又は現状維持と回答した割合は増加し、改善と回答した割合は減少した。

先行き判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連は47.1(前月差▲4.4ポイント)、企業動向関連は50.5(同▲1.7ポイント)、雇用関連は52.3(同▲6.8ポイント)であり、全てで低下した。家計動向関連は再び50を割った。
先行き判断DIの内訳の推移/先行き判断DI(家計動向関連)の内訳の推移
<ワクチンに関する回答者の主なコメント>
「ワクチン」のコメント数と先行き景気判断
  • ワクチン接種が進展することで景気はやや良くなる。夏から初秋にかけての人出はどうしても抑えられないと考えられるため、新型コロナウイルスの感染者は増えるとみられるが、ワクチンの効果で経済活動が上向くことを期待している(北海道・一般小売店[土産](経営者))
  • ワクチン接種の加速化によって新型コロナウイルスの感染が落ち着くと考えるが、全体的に現在の政策や取組ではなかなか感染者数が減る傾向は期待できず、厳しい状況が続くとみている(北陸・テーマパーク(役員))
<オリンピックに関する回答者の主なコメント>
「オリンピック」のコメント数と先行き景気判断
  • 東京オリンピックに伴う需要の増加が余りみられない分、開催後の減少も小さいと予想される(近畿・電気機械器具製造業(宣伝担当))
  • 新型コロナウイルス感染者数が増えているという事実と、東京オリンピックが終了することにより、仕事が減ってしまうのではないか。2~3か月先の景気は下向いていると予想している(南関東・求人情報誌制作会社(営業))
7月調査では、現状の景況感は下落に転じておらず、先行きへの警戒感が示されたが、8月調査では、このところの感染再拡大の動向やその影響が反映されることとなる。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

山下 大輔 (やました だいすけ)

研究・専門分野
日本経済

(2021年08月11日「経済・金融フラッシュ」)

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