2021年07月30日

雇用関連統計21年6月-緊急事態宣言の影響で厳しい状態が続く

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は再び2%台に低下

完全失業率と就業者の推移 総務省が7月30日に公表した労働力調査によると、21年6月の完全失業率は前月から0.1ポイント低下の2.9%(QUICK集計・事前予想:3.0%、当社予想は3.1%)となった。労働力人口が前月から15万人の増加となる中、就業者が前月から21万人増加したため、失業者は前月から▲2万人減の202万人(いずれも季節調整値)となった。

6月の就業者は4ヵ月ぶりに増加したが、3月から5月までの3ヵ月で▲52万人の大幅減少となったことを踏まえれば戻りは弱い。

雇用情勢は20年末にかけて持ち直しつつあったが、21年入り後は緊急事態宣言の影響で厳しい状態が続いている。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
就業者数は前年差22万人増(5月:同11万人増)と3ヵ月連続で増加した。ただし、緊急事態宣言の影響で20年4月以降に急速に落ち込んだ反動による部分が大きく、前々年と比較すると▲55万人の減少となっている(5月は同▲65万人減)。

産業別には、卸売・小売が前年差49万人増(5月:同9万人増)と大幅に増加したほか、新型コロナウイルス感染症の影響から大幅な減少が続いていた宿泊・飲食サービスは前年差13万人増(5月:同▲8万人減)と1年6ヵ月ぶりに増加した。ただし、前々年と比較すると▲25万人の減少となっている(5月:同▲46万人減)。
 
雇用者数(役員を除く)は前年に比べ47万人増(5月:同36万人増)と3ヵ月連続で増加したが、前々年差では▲27万人減と減少が続いている。雇用形態別にみると、非正規の職員・従業員数は前年差31万人増(5月:同16万人増)と3ヵ月連続で増加したが、前々年差では▲73万人減(5月:同▲45万人減)となっている。一方、新型コロナウイルス感染拡大後も増加を続けてきた正規の職員・従業員数は前年差15万人増(5月:22万人増)となったが、20年度中に比べるとそのペースは鈍化している。新卒採用抑制の影響などもあり、21年度の正規雇用が低迷する可能性を示唆している。

2.宿泊、飲食、娯楽業の休業率が大幅に低下

休業者数は182万人となり、前年に比べて▲54万人の減少(5月:同▲211万人減)、前々年と比べると36万人の増加(5月:同63万人増)となった。

産業別の休業率(休業者/就業者)をみると、緊急事態宣言の影響で5月に大幅に上昇した宿泊業(5月:11.3%→6月:5.6%)、飲食店(5月:12.4%→6月:7.2%)、娯楽業(5月:8.2%→6月:2.7%)が大幅に低下した。
休業者数の推移/主な産業別休業率

3.有効求人倍率は3ヵ月ぶりに改善

有効求人倍率の推移 厚生労働省が7月30日に公表した一般職業紹介状況によると、21年6月の有効求人倍率は前月から0.04ポイント上昇の1.13倍(QUICK集計・事前予想:1.10倍、当社予想は1.08倍)となった。有効求人数は前月比▲0.0%の横ばいだったが、有効求職者数が同▲3.6%と大幅に減少したことが求人倍率を押し上げた。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.01ポイント低下の2.08倍となった。新規求人数は前月比4.9%の増加となったが、新規求職申込件数が前月比5.5%とそれを上回る伸びとなった。

6月は失業率、有効求人倍率ともに改善したが、21年初め頃に比べて労働力人口、就業者の水準は低く、依然として厳しい状態が続いている。7月以降も緊急事態宣言は継続しており、対象地域の拡大も見込まれていることから、雇用情勢が大きく改善することは期待できないだろう。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2021年07月30日「経済・金融フラッシュ」)

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