2021年07月21日

貿易統計21年6月-4-6月期の外需寄与度はほぼゼロに

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.自動車輸出が持ち直し

財務省が7月21日に公表した貿易統計によると、21年6月の貿易収支は3,832億円の黒字となり、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:4,599億円、当社予想は3,490億円)通りの結果となった。コロナ禍で前年に大幅に落ち込んだ反動で、輸出入ともに前年比で高い伸びとなったが、輸出の伸び(前年比48.6%)が輸入の伸び(同32.7%)を上回ったため、貿易収支は前年に比べ6,741億円の改善となった。自動車輸出は5月の前年比135.5%に続き、6月も同102.8%の大幅増加となった。新型コロナの影響で20年6月に前年比▲49.9%の大幅減少となった反動もあるが、前々年比でみても、21年5月の▲15.6%から+1.5%へと持ち直している。半導体不足に伴う自動車生産、輸出の急激な落ち込みには歯止めがかかりつつある。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比37.2%(5月:同38.5%)、輸出価格が前年比8.3%(5月:同8.0%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年8.2%(5月:同6.9%)、輸入価格が前年比22.6%(5月:同19.6%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は▲902億円と4ヵ月ぶりの赤字となった。輸出は前月比2.4%の増加となったが、原油高の影響で輸入が同4.0%と輸出の伸びを上回ったことが貿易収支の悪化につながった。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 6月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=69.2ドル(当研究所による試算値)となり、5月の65.6ドルから上昇した。原油価格(ドバイ)は、6月上旬から7月中旬にかけての70ドル台から60ドル台後半まで下落しているが、通関ベースの原油価格は市場価格が遅れて反映されるため、7月には70ドル台まで上昇することが見込まれる。

2.欧米向けの輸出が回復

21年6月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比79.5%(5月:同77.7%)、EU向けが前年比25.9%(5月:同38.8%)、アジア向けが前年比26.1%(5月:同21.7%)、うち中国向けが前年比23.7%(5月:同15.6%)となった。

21年4-6月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比12.2%(1-3月期:同▲2.8%)、EU向けが前期比18.7%(1-3月期:同▲9.7%)、アジア向けが前期比1.8%(1-3月期:同8.0%)、中国向けが前期比▲0.5%(1-3月期:同7.9%)、全体では前期比2.2%(1-3月期:同3.3%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 輸出の牽引役となっていたアジア向けが減速する一方、ワクチン接種の進捗に伴う行動制限の緩和によって景気の回復基調が鮮明となっている米国、EU向けが高い伸びとなっている。世界的な設備投資の回復やデジタル関連需要の拡大を背景に、資本財、情報関連財を中心として輸出は緩やかな増加基調を維持している。

一方、21年4-6月期の輸入数量指数(当研究所による季節調整値)は前期比2.3%(1-3月期:同3.2%)と3四半期連続の上昇となった。国内のサービス消費は弱い動きとなっているが、財の需要が底堅く推移していること、ワクチン購入が押し上げ要因となっていることから、財の輸入は持ち直しの動きが継続した。

3.4-6月期の外需寄与度はほぼゼロに

6月までの貿易統計と5月までの国際収支統計の結果を踏まえて、21年4-6月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出、輸入ともに前期比2%台前半の増加となった。この結果、4-6月期の外需寄与度は前期比でほぼゼロ%(1-3月期:同▲0.2%)となることが予想される。

当研究所では、鉱工業生産、建築着工統計等の結果を受けて、7/30のweeklyエコノミストレターで21年4-6月期の実質GDP成長率の予測を公表する予定である。現時点では、外需が成長率に対してほぼニュートラルとなる中、緊急事態宣言の影響で民間消費は減少するものの、設備投資、住宅投資、政府消費が増加することから、前期比年率1%程度のプラス成長を予想している。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2021年07月21日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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