2021年06月30日

鉱工業生産21年5月-半導体不足の影響で自動車が大幅減産

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.5月の生産は事前予想を大きく下回る

鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 経済産業省が6月30日に公表した鉱工業指数によると、21年5月の鉱工業生産指数は前月比▲5.9%(4月:同2.9%)と3ヵ月ぶりに低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲2.4%、当社予想は同▲2.0%)を大きく下回る結果となった。出荷指数は前月比▲4.7%と3ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比▲1.7%と2ヵ月連続の低下となった。

5月の生産を業種別に見ると、半導体不足の影響で自動車が前月比▲19.4%の大幅低下となったほか、内外の設備投資の回復を背景に好調に推移していた生産用機械(前月比▲5.9%)、汎用・業務用機械(同▲4.1%)も大きく落ち込んだ。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は21年1-3月期の前期比7.8%の後、4月が前月比14.5%、5月が同▲3.0%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は21年1-3月期の前期比0.1%の後、4月が前月比2.6%、5月が同1.5%となった。4、5月の平均を1-3月期と比較すると、資本財(除く輸送機械)は8.9%、建設財は3.9%高い水準となっている。
財別の出荷動向 21年1-3月期のGDP統計の設備投資は前期比▲1.2%の減少となったが、20年10-12月期に同4.3%の高い伸びとなった反動もあり、基調としては持ち直しの動きが続いている。4-6月期の設備投資は2四半期ぶりの増加となる可能性が高いだろう。

消費財出荷指数は21年1-3月期の前期比▲0.9%の後、4月が前月比1.2%、5月が同▲4.9%となった。5月は耐久消費財(前月比▲7.9%)、非耐久消費財(同▲2.4%)ともに大きく落ち込んだ。

21年1-3月期のGDP統計の民間消費は前期比▲1.5%と3四半期ぶりの減少となった。足もとの消費関連指標を確認すると、外食、旅行などのサービス消費の低迷が続いていることに加え、緊急事態宣言に伴う休業、時短営業の影響で財消費も弱めの動きとなっている。現時点では、21年4-6月期の民間消費は小幅ながら2四半期連続で減少すると予想している。

2.4-6月期の増産は確実に

製造工業生産予測指数は、21年6月が前月比9.1%、7月が同▲1.4%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(5月)、予測修正率(6月)はそれぞれ▲4.5%、▲0.8%であった。

予測指数を業種別にみると、半導体不足の影響で5月に前月比▲16.6%の大幅減産となった輸送機械は、6月が同14.2%、7月は同7.9%の大幅増産計画となっている。先行き不透明感は強いものの、5月を底に持ち直しに向かうことは期待できそうだ。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
21年5月の生産指数を6月の予測指数で先延ばしすると、4-6月期の生産は前期比2.4%となる。1-3月期(前期比2.9%)に比べれば伸びは鈍化するものの、4四半期連続の増産は確保できる見込みだ。

緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の悪影響はサービス業を中心に表れ、製造業への影響は限定的にとどまっている。半導体不足の影響で自動車の減産が長期化するリスクには注意が必要だが、世界経済の回復を背景とした輸出の増加を主因として、製造業の生産活動は先行きも堅調を維持することが見込まれる。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2021年06月30日「経済・金融フラッシュ」)

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