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- 法人企業統計21年1-3月期-企業収益は回復傾向が鮮明となるが、設備投資は低迷が続く
2021年06月01日
1.8四半期ぶりの増益
製造業は、海外経済の回復を背景とした輸出の増加を主因として、売上高が前年比▲1.4%(10-12月期:同▲5.4%)と減少幅が縮小したことに加え、売上高経常利益率が20年1-3月期の4.7%から7.8%へと大きく改善したことが収益の押し上げ要因となった。
非製造業は、国内需要の持ち直しを反映し、売上高が前年比▲3.6%(10-12月期:同▲4.1%)と減少幅が若干縮小する中、売上高経常利益率が20年1-3月期の4.6%から5.3%へと改善したことが収益の押し上げ要因となった。
売上高経常利益率を要因分解すると、製造業、非製造業ともに変動費要因が利益率改善の主因となった。既往の原油安の影響で変動費の減少が続く中で、売上高の減少幅が縮小したため、売上高変動費率が大きく低下した。
非製造業は、国内需要の持ち直しを反映し、売上高が前年比▲3.6%(10-12月期:同▲4.1%)と減少幅が若干縮小する中、売上高経常利益率が20年1-3月期の4.6%から5.3%へと改善したことが収益の押し上げ要因となった。
売上高経常利益率を要因分解すると、製造業、非製造業ともに変動費要因が利益率改善の主因となった。既往の原油安の影響で変動費の減少が続く中で、売上高の減少幅が縮小したため、売上高変動費率が大きく低下した。
2.経常利益(季節調整値)はコロナ前の水準を回復
経常利益を業種別に見ると、製造業は輸送用機械(前年比188.0%)、業務用機械(同110.7%)、電気機械(同52.2%)、情報通信機械(同48.1%)など、食料品(同▲22.5%)などを除くほとんどの業種が大幅増益となった。一方、非製造業は運輸・郵便業(▲578億円)、電気業(▲1,525億円)、宿泊業(▲2,417億円)、飲食サービス業(▲1,187億円)、生活関連サービス業(▲375億円)など、新型コロナウイルス感染症の影響を強く受けている対面型サービス業を中心に赤字が続く業種が目立ったが、卸売・小売業(前年比16.1%)、不動産業(同8.5%)、情報通信業(同8.3%)などの増益がそれをカバーする形となった。
季節調整済の経常利益は前期比5.6%(10-12月期:同18.9%)と3四半期連続で増加した。製造業が前期比12.5%(10-12月期:同34.8%)、非製造業が前期比1.4%(10-12月期:同11.0%)となった。経常利益(季節調整値)は、新型コロナウイルスの影響が顕在化した20年1-3月期、4-6月期で40%近く落ち込んだが、7-9月期以降の3四半期でそれを取り戻し、コロナ前(19年10-12月期)の水準を回復した。ただし、製造業はコロナ前の水準を40%近く上回っているのに対し、非製造業は対面型サービス業の低迷が続いていることから、コロナ前の水準を依然として10%程度下回っている。なお、21年1-3月期の経常利益の水準(18.9兆円)は、直近のピーク(18年4-6月期の24.8%)に比べれば20%以上低い。製造業、非製造業ともにそれぞれのピークを20%以上下回っている。
企業収益は、20年前半は新型コロナウイルス感染症の影響で急速に落ち込んだものの、その後は製造業を中心に想定を上回るペースで急回復した。4-6月期は、製造業が輸出の好調と財消費の堅調に支えられて回復の動きが継続する一方、緊急事態宣言の影響を大きく受ける宿泊、飲食サービス業などの対面型サービス業は引き続き低調な動きとなることが予想される。業種間の格差は一段と広がる可能性が高い。
企業収益は、20年前半は新型コロナウイルス感染症の影響で急速に落ち込んだものの、その後は製造業を中心に想定を上回るペースで急回復した。4-6月期は、製造業が輸出の好調と財消費の堅調に支えられて回復の動きが継続する一方、緊急事態宣言の影響を大きく受ける宿泊、飲食サービス業などの対面型サービス業は引き続き低調な動きとなることが予想される。業種間の格差は一段と広がる可能性が高い。
3.設備投資は減少が継続
設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比▲7.8%と4四半期連続で減少し、10-12月期の同▲4.8%から減少幅が拡大した。製造業(10-12月期:前年比▲8.5%→1-3月期:同▲6.4%)は減少幅が縮小したが、非製造業(10-12月期:前年比▲2.6%→1-3月期:同▲8.5%)の減少幅が拡大した。設備投資の内訳をみると、テレワーク拡大やデジタル化に向けたソフトウェア投資は2四半期連続で増加し、製造業の生産活動の好調を受けて機械投資の減少幅が縮小したが、対面型サービス業を中心に建設投資の減少幅が拡大したことが設備投資全体を大きく押し下げた。
季節調整済の設備投資(ソフトウェアを含む)は前期比▲0.4%(10-12月期:同▲0.4%)と4四半期連続で減少した。製造業は前期比0.5%(10-12月期:同▲1.7%)と6四半期ぶりに増加したが、非製造業は前期比▲0.9%(10-12月期:同0.3%)と2四半期ぶりに減少した。企業収益は回復傾向が明確となっているが、設備投資は低迷が続いている。19年以降の企業収益の悪化を受けて、設備投資の好調を支えていた潤沢なキャッシュフローという前提が崩れたこと、需要の急激な落ち込みを経験したことで企業の慎重姿勢が強くなっていることが、設備投資の抑制につながっているとみられる。
ただし、企業収益はすでにコロナ前の水準を取り戻しており、設備投資回復の条件は整いつつある。先行きについては、対面型サービス業の建設投資が引き続き下押し要因となるものの、機械投資やデジタル関連投資が増加することから、設備投資全体としては持ち直しに向かうことが予想される。
季節調整済の設備投資(ソフトウェアを含む)は前期比▲0.4%(10-12月期:同▲0.4%)と4四半期連続で減少した。製造業は前期比0.5%(10-12月期:同▲1.7%)と6四半期ぶりに増加したが、非製造業は前期比▲0.9%(10-12月期:同0.3%)と2四半期ぶりに減少した。企業収益は回復傾向が明確となっているが、設備投資は低迷が続いている。19年以降の企業収益の悪化を受けて、設備投資の好調を支えていた潤沢なキャッシュフローという前提が崩れたこと、需要の急激な落ち込みを経験したことで企業の慎重姿勢が強くなっていることが、設備投資の抑制につながっているとみられる。
ただし、企業収益はすでにコロナ前の水準を取り戻しており、設備投資回復の条件は整いつつある。先行きについては、対面型サービス業の建設投資が引き続き下押し要因となるものの、機械投資やデジタル関連投資が増加することから、設備投資全体としては持ち直しに向かうことが予想される。
4.1-3月期・GDP2次速報は小幅上方修正を予想
本日の法人企業統計の結果等を受けて、6/8公表予定の21年1-3月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲1.2%(前期比年率▲4.8%)となり、1次速報の前期比▲1.3%(前期比年率▲5.1%)から若干上方修正されると予想する。
設備投資は1次速報の前期比▲1.4%から同▲1.2%へと上方修正されるだろう。設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比▲9.9%(10-12月期:同▲6.1%)と6四半期連続で減少し、減少幅は前期から拡大した。法人企業統計ではサンプル替えや四半期毎の回答企業の差によって断層が生じるが、当研究所でこの影響を調整したところ前年比▲9%台の減少となった。また、金融保険業の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比19.5%(10-12月期:同5.3%)と6四半期連続で増加し、伸びが大きく加速した。1次速報段階では、設備投資の需要側推計値は前年比▲10.2%となっており、本日の法人企業統計の結果は設備投資の上方修正要因と考えられる。
また、民間在庫変動は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映されるが、1次速報の前期比・寄与度0.3%から変わらないだろう。
その他の需要項目では、民間消費は3月のサービス産業動向調査の結果などが反映され、前期比▲1.4%から同▲1.3%へ、公的固定資本形成は3月の建設総合統計の結果が反映され、前期比▲1.1%から同▲0.8%へ上方修正されると予想する。
また、民間在庫変動は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映されるが、1次速報の前期比・寄与度0.3%から変わらないだろう。
その他の需要項目では、民間消費は3月のサービス産業動向調査の結果などが反映され、前期比▲1.4%から同▲1.3%へ、公的固定資本形成は3月の建設総合統計の結果が反映され、前期比▲1.1%から同▲0.8%へ上方修正されると予想する。
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(2021年06月01日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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