2021年05月28日

雇用関連統計21年4月-正規雇用の増加ペースが急速に鈍化

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率の上昇以上に内容は厳しい

完全失業率と就業者の推移 総務省が5月28日に公表した労働力調査によると、21年4月の完全失業率は前月から0.2ポイント上昇の2.8%(QUICK集計・事前予想:2.7%、当社予想は2.8%)となった。労働力人口が前月から▲3万人の減少となる中、就業者が前月から▲26万人減少したため、失業者数は前月から14万人増の194万人(いずれも季節調整値)となった。
失業率は20年12月の3.0%から21年1月以降は2%台に低下しているが、その主因は非労働力化の進展である。4月の就業者数は20年12月より▲25万人少なく、3、4月の2ヵ月で▲39万人の大幅減少となっている。ヘッドラインの失業率以上に内容は厳しい。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
就業者数は前年差29万人増(3月:同▲51万人減)と13ヵ月ぶりに増加に転じた。ただし、20年4月に緊急事態宣言の影響で急速に落ち込んだ反動による部分が大きく、前々年と比較すると▲51万人の減少となっている。

産業別には、卸売・小売が前年差8万人増(3月:同▲2万人減)、生活関連サービス・娯楽が前年差5万人増(3月:同▲3万人減)と増加に転じたが、宿泊・飲食サービスは前年差▲20万人減(3月:同▲40万人減)と減少が続いた。前々年差では▲66万人の大幅減少となる。一方、医療・福祉は前年差37万人増(3月:同20万人増)と大幅な増加が続いている。
 
雇用者数(役員を除く)は前年に比べ25万人増(3月:同▲42万人減)と13ヵ月ぶりに増加に転じたが、前々年差では▲9万人減と減少が続いている。雇用形態別にみると、非正規の職員・従業員数は前年差20万人増(3月:同▲96万人減)と増加に転じたが、前々年差では▲77万人減となった。一方、新型コロナウイルス感染拡大後も増加を続けてきた正規の職員・従業員は前年差5万人増(3月:54万人増)と増加ペースが急速に鈍化した。新卒採用抑制の影響などもあり、21年度の正規雇用が低迷する可能性を示唆している。

2.対面型サービス業の休業率は高止まり

休業者数は199万人となり、前年に比べて▲398万人の減少となった。前年から大幅減少となったのは、20年4月に緊急事態宣言の影響で過去最多の597万人となったためで、前々年と比べると22万人増となっている。

産業別の休業率(休業者/就業者)をみると、3月に低下した宿泊業(2月:13.0%→3月:6.0%→4月:8.2%)、飲食店(2月:8.7%→3月:5.5%→4月:6.8%)は再び上昇し、娯楽業(2月:6.3%→3月:7.4%→4月:5.1%)は低下した。緊急事態宣言の影響を強く受ける対面型サービス業は月々の振れを伴いながら高止まりが続いている。
休業者数の推移/主な産業別休業率

3.有効求人倍率の改善は頭打ち

有効求人倍率の推移 厚生労働省が5月28日に公表した一般職業紹介状況によると、21年4月の有効求人倍率は前月から0.01ポイント低下の1.09倍(QUICK集計・事前予想:1.10倍、当社予想は1.12倍)となった。有効求職者数が前月比2.6%の増加となり、有効求人数の増加(同1.4%)を上回った。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.17ポイント低下の1.82倍となった。新規求職申込件数が前月比4.9%の高い伸びとなる一方、新規求人数が前月比▲4.3%の減少となった。有効求人倍率は20年10月の1.04倍を底に持ち直していたが、ここにきてその動きが一服している。新規求人倍率が20年12月の2.11倍をピークに1.82倍まで大きく低下したことを踏まえると、有効求人倍率は当面低調に推移する可能性が高い。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2021年05月28日「経済・金融フラッシュ」)

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