2021年05月31日

鉱工業生産21年4月-生産はコロナ前の水準を上回る

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.生産はコロナ前の水準を上回る

経済産業省が5月31日に公表した鉱工業指数によると、21年4月の鉱工業生産指数は前月比2.5%(3月:同1.7%)と2ヵ月連続で上昇したが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比4.1%、当社予想は同4.4%)を下回る結果となった。出荷指数は前月比2.6%と2ヵ月連続の上昇、在庫指数は前月比▲0.1%と2ヵ月ぶりの低下となった。4月の生産指数は99.6となり、新型コロナウイルス感染拡大前の20年1月の水準(99.1)を上回った。ただし、直近のピーク(18年10月の105.6)に比べると▲5.7%低い水準にとどまっている。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 4月の生産を業種別に見ると、半導体不足の影響で自動車が前月比▲0.8%の低下となったが、内外の設備投資の回復を背景に、汎用・業務用機械(前月比16.1%)、生産用機械(同7.8%)が高い伸びとなったほか、デジタル関連需要の強さを反映し、電子部品・デバイスも前月比5.8%の上昇となった。

財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は21年1-3月期の前期比7.8%の後、4月は前月比15.2%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は21年1-3月期の前期比0.1%の後、4月は前月比2.7%となった。
財別の出荷動向 21年1-3月期のGDP統計の設備投資は前期比▲1.4%の減少となったが、20年10-12月期に同4.3%の高い伸びとなった反動もあり、基調としては持ち直しの動きが続いていると判断される。

消費財出荷指数は21年1-3月期の前期比▲0.9%の後、4月は前月比▲0.4%となった。耐久消費財が前月比▲0.6%(1-3月期:前期比▲4.1%)、非耐久消費財が前月比1.4%(1-3月期:前期比1.6%)であった。

21年1-3月期のGDP統計の民間消費は前期比▲1.4%と3四半期ぶりの減少となった。足もとの消費関連指標を確認すると、財消費は一定の底堅さを維持しているが、緊急事態宣言の影響から、外食、旅行などのサービス消費は引き続き弱い動きとなっている。現時点では、21年4-6月期の民間消費は小幅ながら2四半期連続で減少すると予想している。

2.緊急事態宣言長期化でも生産は堅調を維持する見込み

製造工業生産予測指数は、21年5月が前月比▲1.7%、6月が同5.0%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(4月)、予測修正率(5月)はそれぞれ▲4.1%、▲1.5%であった。

予測指数を業種別にみると、半導体不足の影響などから弱い動きとなっている輸送機械は、5月に前月比▲15.3%の大幅減産となった後、6月は同18.5%の大幅増産となっている。ただし、5月の予測修正率が▲7.1%の大幅マイナスとなっていることを踏まえると、6月の高い伸びが実現する可能性は低いだろう。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
21年4月の生産指数を5、6月の予測指数で先延ばしすると、4-6月期の生産は前期比3.6%となる。輸送機械を中心に実績が計画を下回る可能性が高いことには留意する必要があるものの、4四半期連続の増産は確保できそうだ。

いったん解除された緊急事態宣言は4/25に4都府県で発令され、その後対象地域が10都道府県まで拡大された後、期限も6/20まで延長された。ただし、緊急事態宣言の悪影響はサービス業を中心に表れ、製造業への影響は限定的にとどまっている。半導体不足の影響で自動車の減産が長期化するリスクには注意が必要だが、緊急事態宣言が長引く中でも製造業の生産活動は堅調を維持することが見込まれる。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2021年05月31日「経済・金融フラッシュ」)

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