2021年06月10日

企業物価指数(2021年5月)―前年比4.9%と上昇幅がさらに拡大

藤原 光汰

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1.前年比4.9%と前月から上昇幅がさらに拡大

6月10日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、21年5月の国内企業物価は前年比4.9%(4月:同3.8%)と3ヵ月連続の前年比プラスとなり、上昇幅は前月を大きく上回った。また、事前の市場予想(QUICK集計:前年比4.5%、当社予想は同4.9%)を上回る結果となった。

4月から伸びを大幅に高めたが、これは世界経済の回復を背景に国際商品市況が堅調に推移していることに加え、前年同月に新型コロナウイルスの影響で大きく下落していた(前年比▲2.7%、消費増税の影響を除くと同▲4.2%)反動が出たためである。内訳をみると、原油価格の上昇により、石油・石炭製品は前年比53.5%と、前月(同39.5%)に続き大幅に上昇したほか、世界的な経済活動の持ち直しに伴い銅の国際価格が高値をつけていることを受けて、非鉄金属は前年比41.6%(4月:同35.6%)の高い伸びとなった。

国内企業物価は前月比では0.7%(4月:同0.9%)と6ヵ月連続の上昇となった。前月比で内訳をみると、原油高に伴いガソリン(前月比1.6%)、灯油(同2.9%)、軽油(同3.0%)などが上昇したことを受けて、石油・石炭製品が前月比1.5%(4月:同2.1%)と6ヵ月連続の上昇となったほか、電力・都市ガス・水道が前月比3.3%(4月:同2.4%)となった。また、世界経済の回復を受けて非鉄金属が前月比5.1%(4月:同3.2%)と上昇幅が拡大したほか、スクラップ類が同10.1%(4月:同2.1%)の高い伸びとなった。そのほか、木材価格の高騰を受けて、木材・木製品が前月比4.6%(4月:同3.0%)と高い伸びとなった。
国内企業物価指数(前年比・前月比)の推移/国内企業物価指数の前年比寄与度分解

2.輸入物価(前月比)は7ヵ月連続のプラス

輸入物価指数変化率の要因分解(契約通貨ベース) 21年5月の輸入物価は、契約通貨ベースでは前月比2.1%(4月:同2.2%)と7ヵ月連続のプラスとなった。また、21年5月の円相場(対ドル)は前月比0.1%と前月とほぼ横ばいとなったため、円ベースでは前月比2.2%(4月:同2.5%)と契約通貨ベースの伸びとほぼ同じとなった。

契約通貨ベースで輸入物価の内訳をみると、生産活動の回復を受けて鉄鉱石(前月比34.7%)や銅鉱(同3.9%)が上昇したことにより、金属・同製品は前月比10.3%(4月:同3.3%)と前月からプラス幅が大幅に拡大し。また、電気・電子機器(前月比1.4%)や飲食料品・食料用農水産物(同1.8%)、木材・木製品・林産物(同4.5%)など多くの項目でプラス寄与となった。

3.国内企業物価は今後も高めの伸びが継続する見込み

需要段階別指数の推移 21年5月の需要段階別指数(国内品+輸入品)をみると、素原材料が前年比45.5%(4月:同24.7%)、中間財が前年比8.5%(4月:同6.2%)、最終財が前年比2.8%(4月:同2.0%)となり、すべての需要段階でプラス幅が拡大した。前年(20年)同月に新型コロナウイルス感染拡大によって大きく落ち込んだ反動で上振れしやすくなっているものの、前々年(19年)4月と比較しても、素原材料、中間財は2.4%、1.8%となっており、経済活動の回復を受けて川上の価格はコロナ前の水準を上回っている。一方、最終財は▲0.7%となっており、国内の最終需要が弱いため、川上から川下へ価格が波及するのは時間がかかるだろう。

また、消費者物価(生鮮食品を除く総合)と関連性の高い消費財は前年比3.5%(4月:同2.7%)と高い伸びとなっている。

ワクチン普及等により米中を中心として世界的に経済活動は正常化に向かっており、国際商品市況は今後も底堅く推移することが見込まれる。前年に大きく落ち込んだ反動もあり、国内企業物価は6月も前年比4%台後半の高めの伸びとなる公算が大きく、その後も高めの伸びが継続するだろう。
 
 

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(2021年06月10日「経済・金融フラッシュ」)

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