2021年06月09日

景気ウォッチャー調査(21年5月)~現状判断DIは低下も、ワクチン接種への期待から先行き判断DIは上昇

経済研究部 准主任研究員   山下 大輔

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1.景気の現状判断DIは2か月連続で低下、先行き判断DIは3か月ぶりの上昇

現状判断DI・先行き判断DIの推移 6月8日に内閣府が公表した2021年5月の景気ウォッチャー調査(調査期間:5月25日から月末)によると、3か月前との比較による景気の現状判断DI(季節調整値)は38.1と前月から1.0ポイント下落した。他方、2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は47.6と前月から5.9ポイント上昇した。現状はわずかに低下する一方で、先行きは反転した。
地域別でみても、現状判断DI(季節調整値)は、全国12地域中5地域で上昇し、7地域で低下した。前月からの上昇幅が最も大きかったのは近畿(前月差4.9ポイント)であり、下落幅が最も大きかったのは北海道(前月差▲8.9ポイント)であった。他方、先行き判断DIは北海道と沖縄を除く全国10地域で前月よりも上昇した。地域別の感染動向がおおむね反映された結果であった。

景気の現状水準判断DI(季節調整値)も前月から2ポイント低下するなど、今回の結果からは、緊急事態宣言の継続などにより現状の景況感は引き続き厳しい状況にあることが示された。他方で感染者数の減少やワクチン接種などによる先行きの景況感改善への期待も伺える。
地域別現状判断DI・先行き判断DIの前月/現状判断DIと現状水準判断DIの比較

2.景気の現状判断DI(季節調整値):家計は低下も、企業、雇用は上昇

現状判断DI(季節調整値)は、4月に9.4まで落ち込んだ後に、5月から6か月連続で改善し、10月には50を超えた。その後の感染拡大により、11月から下落に転じ、21年1月には31.2まで落ち込んだが、2月、3月と大幅上昇に転じていた。しかし、一部地域に対する休業要請を伴う緊急事態宣言再発出などにより、4月は大きな落ち込みとなり、5月もわずかに低下した。
現状判断DI・回答者構成比 景気の現状判断DIの回答者構成比をみても、悪化と回答した割合(「悪くなっている」と「やや悪くなっている」の回答の合計)が増加し(4月:42.5%→5月:48.0%)、その分だけ、改善と回答した割合(「良くなっている」と「やや良くなっている」の回答の合計)(4月:15.0%→5月:11.9%)と現状維持(「変わらない」)と回答した割合 (4月:42.5%→5月:40.1%)が減少しており、悪化が伺える。
現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連は33.5(前月差▲1.9ポイント)、企業動向関連は46.9(同1.1ポイント)、雇用関連は49.6(同0.2ポイント)であり、家計動向関連は2か月連続で低下する一方で、企業動向関連や雇用関連は反転した。製造業は、顕著な生産活動を反映して2か月ぶりに50を超えた。また、家計動向関連では住宅以外の内訳で前月から更に低下し、飲食の落ち込みが大きかった(前月差▲4.4ポイント)。内訳の中での二極化がみられている。
現状判断DIの内訳の推移/現状判断DI(家計動向関連)の内訳の推移
回答者のコメントからは、緊急事態宣言や休業要請による悪影響の指摘もある一方、産業によっては好調さに言及するものもあった。雇用の好調さを指摘するコメントもあった。

<緊急事態宣言や休業要請による悪影響についての主なコメント>
  • 悪いまま何も変わっていない。緊急事態宣言の発令、ワクチン接種の遅れなど、良いニュースが見当たらない(北海道・旅行代理店)。
  • ゴールデンウィーク期間に、首都圏に対して、緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置が発出されたことから、来客数が例年を大きく下回っている(北関東・テーマパーク)。
  • 時短営業とアルコール提供禁止で、売上はほとんど半分以下になっており、景気はかなり悪い(南関東・一般レストラン)。

<(産業によっては)好調ぶりを指摘する主なコメント>
  • 5月前半は、緊急事態宣言により多くの量販店が休業となったが、実売はそこまで大幅な減少はなく、テレビや空気清浄機、洗濯機など、これまで好調な商品は引き続き堅調な動きとなっている(近畿・電気機械器具製造業)。
  • 放送、通信サービス共に、契約者数が前年同期比を上回り、前々年同期の水準に戻りつつある(北陸・通信会社)。
  • 受注量が2年前の水準に戻っている。原材料等の価格改定も取引先で応対してもらえるようになっている(南関東・精密機械器具製造業)。
  • 半導体不足の影響を受け、カーナビ等の高額商材が品薄で、売上が伸びにくいなかでも、客単価、来客数共に、前年を超えているので、景気はやや良くなっている(甲信越・自動車備品販売店)。

<雇用の好調さに関する主なコメント>
  • 5月に入り、採用者数が目に見えて増えてきている。前年の4~5月が緊急事態宣言で大きく落ち込んだ反動もあるが、業種によっては採用意欲がかなり高まっている(近畿・職業安定所)。
  • 新型コロナウイルスの影響や緊急事態宣言の発令による飲食店へのダメージはあるものの、第1次産業及び第2次産業の求人数については若干の増加傾向がみられるなど、業種間による温度差がみられる(北海道・求人情報誌製作会社)。
  • 2022 年卒業の求人は、業種により差があるものの、ほぼ例年通りに動いており、企業の 採用活動も前年よりは順調に動いている。内定を得ている学生も前月より増えている状 況である(九州・学校[大学])。

3.景気の先行き判断DI(季節調整値):全ての内訳で上昇

2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は、20年7月に感染拡大への懸念で大きく落ち込んだ後に、11月を除いて上昇し、21年3月から2か月連続で大きく低下したものの、今月は反転した。
先行き判断DI・回答者構成比 景気の先行き判断DIの回答者構成比でみても、悪化と回答した割合(「悪くなる」と「やや悪くなる」の回答の合計)(4月:37.6%→5月:28.1%)は減少し、現状維持(「変わらない」)と回答した割合(4月:48.1%→5月:48.5)は増加し、改善と回答した割合(「良くなる」と「やや良くなる」の回答の合計)(4月:14.3%→5月:23.4%)は増加した。
先行き判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連は46.5(前月差6.5ポイント)、企業動向関連は49.0(同3.7ポイント)、雇用関連は52.0(同6.5ポイント)であり、全てで上昇した。製造業と雇用関連は50を超えた。家計動向関連の内訳では、飲食の上昇幅が大きかった(前月差8.8ポイント)。
先行き判断DIの内訳の推移/先行き判断DI(家計動向関連)の内訳の推移
回答者のコメントからは、ワクチンや東京オリンピック・パラリンピックへの言及が多々見られた。その他、海外需要の好調さや半導体不足に言及したコメントもあった。

<ワクチンに関する主なコメント>
  • 緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の解除を始め、新型コロナウイルスのワクチン接種拡大により人流が回復すれば、消費マインドは改善される(北関東・百貨店)。
  • ワクチン接種の進展がかなりの朗報になり、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置もこれ以上長引くはずはないと思うため、人の動きや会食も制限付きながらも回復に向かうと考え、景気はやや良くなると判断した(東海・観光型ホテル)。

<東京オリンピック・パラリンピックに関する主なコメント>
  • 東京オリンピックが無観客で開催されれば、テレビの販売に期待が持てる(北陸・家電量販店)。
  • 東京オリンピックの開催は1つの起爆剤になるのではと考えているが、うまくいくかどうか分からないのが本音である。飲食店の廃業なども今後ますます増えていくのではないかと危惧している(東北・その他専門店)。
  • 東京オリンピックが開催されることになれば、今以上に新型コロナウイルス感染者数が増えるとみられるため、景気は悪くなる。(北海道・美容室)
  • 東京オリンピックの開催や夏休み需要の見通しが読みづらく、先行きが分からない(九州・観光名所)。

<海外需要の好調さに関する主なコメント>
  • 新型コロナウイルスのワクチン効果に期待している。国際物流においては、コンテナ不足が解消し、荷動きが戻りつつあるようである。それに伴う国内物流の動きにも期待したい(南関東・輸送業)。
  • 国内向けの輸送量は低調に推移すると思われるが、大口客の海外向け輸送量は引き続き増加傾向にある(四国・輸送業)。
  • 中国及び先進国向け輸出の受注が非常に好調であり、船便の手配に苦慮している状況が続いている。一方で、鋼材関係が値上げ基調となっており、収益を圧迫しつつある。また、人手不足も依然として継続していることから、近隣企業と協力しながら、その解消 に努めている(北陸・一般機械器具製造業)。
  • スクラップ市況が前年の今頃と比べると2倍くらいに高騰している。中国の景気が良いからと聞いているが、スクラップの動きは先行指標となるため、景気は多少良くなると思う(東海・輸送用機械器具製造業)。

<半導体不足に関する主なコメント>
  • しばらくは、半導体不足の状況が続くため生産減少になり、新車販売台数は低迷する(九州・乗用車販売店)。
  • 半導体不足の影響で、自動車関連を中心に6~7月の受注の内示が減少している(近畿・金属製品製造業)。
  • 半導体業界は好調で、やや良くなる(甲信越・金属製品製造業)。
  • 半導体需要が落ち着きつつあり、今後としては従来の価格帯に戻るとみられ、相対的に景 気は若干悪くなると考えられる(東北・電気機械器具製造業)。
 
5月調査の結果は、緊急事態宣言継続などにより景況感の悪化が継続していることが示された。他方、先行きについては、ワクチン接種と東京オリンピック・パラリンピックへの期待に言及するコメントが多かった。感染者数は減少傾向で推移しており、ワクチン接種が順調に進み、緊急事態宣言が予定通りに解除される状況になれば、東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い、景況感は大きく好転することが期待される。
 
 
 

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経済研究部   准主任研究員

山下 大輔 (やました だいすけ)

研究・専門分野
日本経済

(2021年06月09日「経済・金融フラッシュ」)

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