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まん延防止等重点措置は緊急事態宣言と何が違うのか
基礎研REPORT(冊子版)6月号[vol.291]
保険研究部 常務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長・ジェロントロジー推進室研究理事兼任 松澤 登
大まかなイメージとしては、2020年4月に出された一度目の緊急事態宣言は特措法の想定する「緊急事態宣言」であった一方、2021年1月に出された二度目の緊急事態宣言は実際には「まん延防止等重点措置」に相当する措置であったと捉えるのが妥当と思われる。
一度目の緊急事態宣言の時は、接待を伴う夜の店や大規模商業施設などへは営業自粛要請、スポーツや劇場などへは興行中止要請が行われ、また各種公共施設等がほぼ閉鎖された。二度目の緊急事態宣言の時においては、各種興行や各種施設は入場人数を限定したり、営業時間を短縮して営業したりすること等が要請された。
このように二度目の緊急事態宣言が一度目より緩やかであったのは、新型コロナ感染症を克服するまでには長期戦を覚悟するほかはなく、長期戦のためには経済を動かせる範囲では動かしておく必要があると判断されたことによると推察される。そして、後述の通り、まん延防止等重点措置は、この二度目の緊急事態宣言で行ったことがほぼ実施できるものとされている。
ところで、改正前の特措法では、緊急事態宣言のもとで営業自粛要請に従わない事業者に対しては、営業自粛指示とその旨の公表しかできなかった。改正特措法では、営業自粛指示を営業自粛命令に格上げ(改正特措法第45条第3項)し、命令違反に対しては30万円以下の過料に処すこととされた(改正特措法第79条)。このように都道府県知事の営業自粛要請に対して最終的に過料という金銭的なペナルティを課すことができるようになり、改正特措法の緊急事態宣言は、従前よりも一段、強い措置となったと言える。
一方、まん延防止等重点措置は、2021年1月からの二度目の緊急事態宣言と比較して考えると決して軽いものではない。特に、時短営業要請違反事業者に対しては要請に従うように命ずることができ(改正特措法第31条の6第3項)、命令違反事業者には20万円以下の過料を課す(改正特措法第80条第1号)。このような過料を課すことは、2021年2月13日より前の特措法による緊急事態宣言ではできなかった。
以上を例えると、新型コロナが国内で発生したことを受け、政府対策本部が設置され、新型コロナへの感染状況の監視とともに一般的な感染予防を政府等が要請するにとどまる段階は一階部分になる。そして緊急事態宣言を出された段階が二階部分となるとすると、今回の改正は二階部分を以前よりもかさ上げするとともに、中二階としてまん延防止等重点措置を作ったということになる(イメージとして図表参照)。
細かい法律論をすると、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の発令には、前提要件となる感染状況が全国的か地域的か、あるいは対象となる地域が県全体か、県のさらに一部地域かということもあるが、制度の運用上はあまり本質的な相違ではないように思われる。
ところで、緊急事態宣言にせよ、まん延防止等重点措置にせよ、「外出先」を絞ることで人流を抑制する方策である。昨今問題となっている屋外での飲み会なども含めて人流を抑制したいのであれば、もう一段厳しい規制、すなわち直接的な外出制限を検討し始める段階にきているように思う。

03-3512-1866
(2021年06月08日「基礎研マンスリー」)
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