2021年06月03日

日本株式は高値圏を維持できるか

金融研究部 准主任研究員   前山 裕亮

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1――バブル後、最高値圏にいる日本株式

日本株式は2020年2月、3月のいわゆるコロナ・ショックで急落して以降、上昇基調が続いた。日経平均株価(紺線)が一時3万円を超えるなど、コロナ・ショック前を大きく超える水準で推移している【図表1】。日経平均株価については特定の銘柄(値がさ株)が水準を引き上げている面もあるが、TOPIX(東証株価指数:青線)についても1,900ポイントを超えた水準にある。コロナ・ショック前のTOPIXの高値が2018年1月23日につけた1,911ポイントであったことを踏まえると、日経平均株価ほどではないにせよ、TOPIXもバブル後の最高値圏にあることが分かる。

ただ、日経平均株価、TOPIXのともに2021年度に入ってから、米国の金融政策や長期金利の動向などが重しとなり、ほぼ横ばいで推移している。
【図表1】 日経平均株価とTOPIXの推移

2――今後を占う上で重要な企業業績の動向

2――今後を占う上で重要な企業業績の動向

今後も日本株式は米国の金融政策や長期金利の動向など外部環境に左右される展開が続くと思われる。ただ、そのような外部環境の変化と合わせて、やはり企業業績の動向にも注意が必要だと考えている。外部環境の急変などにより株価が一時的に下落することがあっても、企業業績が堅調であれば株価を下支えすると期待される。逆に企業業績が想定より落ち込むと、元の水準に戻るまでかなりの時間を要する可能性がある。

先ほど触れた2018年1月23日にTOPIXがバブル後の最高値をつけたあとも、米長期金利の上昇をきっかけにTOPIXは急落している。さらに、その後に米中対立の深刻化や消費増税に伴う業績低迷も加わったため、株価が元の水準に戻るまでかなり時間を要した。TOPIXが1,911ポイントを再び超えたのは、この2021年の2月であり、元の水準まで戻るのに3年以上かかったことになる。

特に日本株式の株価は企業業績からみると足元でもやや割高で、将来の大幅な業績拡大を織り込んだ水準にある点にも考慮する必要である。TOPIXの予想PER(12カ月先予想:青線)をみると、3月まで17倍を超えていたが足元16倍程度と2021年度に入ってから低下してきている【図表2】。それでも過去2013年以降、TOPIXの予想PERが概ね12倍から15倍で推移していたことを踏まえると、足元の16倍でもまだまだ高水準にあるといえる。

実際に2020年度(2021年3月期)本決算で企業が公表した翌2021年度の業績見通しでは、製造業を中心に業績回復が鮮明であった。しかし、良好な業績見通しが公表されたにもかかわらず、4月から5月にかけてTOPIXはほぼ横ばいであった。株式市場全体で見ると業績回復は想定の範囲内で既に株価に織り込まれており、他の悪材料を押し返すだけの材料にはならなかったといえる。
 
【図表2】 TOPIXの予想PERとEPSの推移
現時点で(12カ月先)予想PERに十分織り込まれていない来年度である2022年度の予想を元に、現在の株価が維持された場合の1年後のTOPIXの予想PERを計算すると14倍台となる。これは予想通りに業績が回復すれば、現在の日本株式の水準が維持されたとしても、1年後には割高感がある程度解消することを意味する。ただ、TOPIXベースでの予想増益率は、2021年度の20%超ほどではないが、2022年度も2年連続の二桁増が見込まれ、かなりの業績拡大が想定されている。

もし、現時点で予想されているほど業績回復が続かず息切れした場合は、現状の(12カ月先)予想PERが高水準にあるだけに、期待が外れることによって株価の下落でもたらされる可能性がある。その後さらに2018年の時のように投資家心理が冷え込み、予想PERつまり株価が長期に渡って低迷することも考えられる。

3――TOPIXの予想PER自体にも注意が必要?

3――TOPIXの予想PER自体にも注意が必要?

また、やや重箱の隅をつつく話なるが、先ほど見てきた予想PERを元にTOPIXの割高、割安といった株価の水準を考える際には注意が必要だ。それはソフトバンクグループ(以降、SBGと略)一銘柄によって、足元のTOPIXの予想PERがかなり引き下げられているからである。

SBGは2020年度の純利益が約5兆円と東証一部で最大となり、金額自体も大きかっただけに東証一部市場全体であるTOPIXにおいてもその影響が大きかった。TOPIXのEPS(赤線)をSBG(黄棒)とそれ以外の東証一部銘柄(青棒)に簡単に試算して分けてみると、2020年度はSBG1社の純利益により、TOPIXベースでも増益に転じたことが分かる【図表3】。

2021年度についても、SBGの純利益は足元のコンセンサス予想で2兆円強となっている。2020年度ほどではないが2021年度もSBG一銘柄でTOPIXのEPSが押し上げられることが見込まれている。TOPIXのEPSに対するSBGの寄与が大きくなっているだけに、TOPIXの予想PERから株価水準を考えるうえでも、SBGの業績(動向)は無視できなくなっている。
【図表3】 TOPIXのEPSの推移
実際に2021年度に入ってからTOPIXの予想EPSの趨勢にもSBGの業績予想が大きく影響していると思われる。TOPIXの2021年度予想EPS(赤線)をみると、2021年度に入ってからも上昇基調が続いている【図表4】。ただ、5月以降のTOPIXの予想EPSの上昇はSBGの決算発表に伴って2021年度の業績予想(黄線)が上方修正されたことによるところが大きかったと思われる。

2021年の3月や4月だとTOPIXからSBGを除外して予想PERを試算しても、(SBGを含めた)TOPIXの予想PERと比べて0.1倍も差が出なかった。それが直近ではTOPIXからSBGを除外すると予想PERが0.5倍程度、高くなる。つまり、先ほど【図表2】で予想PERが低下してきていることを確認したが、SBG一銘柄によってかなり引き下げられたといえる。TOPIXの予想PERの数字ほどは株価の割高感が市場全体では解消していない可能性があると言える。

SBGは実態的に投資ファンドに近く、他の通常の事業会社などと比べて相対的に業績の変動が激しいだけに、今後についてもこの5月のようにSBGの業績の実際の進捗具合などに合わせてTOPIXの予想EPSや予想PERが大きく変動するかもしれない。そういうことからも、繰り返しになるがTOPIXの予想EPSや予想PERの数値の取り扱いについて注意する必要があるだろう。
【図表4】 TOPIXの予想EPSとSBGの業績予想の推移(月次)

4――上値の目処は足元から10%程度か

4――上値の目処は足元から10%程度か

ここまでやや悲観的な話も含めて、今後の日本株式の動向の注目点について述べてきた。最後に外部環境も順風満帆で企業業績も堅調に回復した場合について言及したい。TOPIXの予想PERは【図表2】のように現時点でも高水準にあり更なる上値を考えにくい面がある。そこでTOPIXのPBR(紺線)の推移をみると、リーマン・ショック後だと1.5倍(点線)程度まで許容したことがある【図表5】。そのため、今回も1.5倍までは上昇する可能性があると考えている。TOPIXの水準で2,150ポイント程度、現在のTOPIXの水準から10%ほど高い水準である。
【図表5】 TOPIXのPBRと予想ROEの推移
ただ、過去にTOPIXのPBRが1.5倍つけたのは、リーマン・ショック前含めて概ね予想ROE(緑線)が9.5%(点線)超えていた期間(赤マーカー部分)である。足元の予想ROEが8.5%程度であることを踏まえると、過去の傾向からはよほどこれから企業業績がさらに上振れ、かつその好調な状況が続かないと、なかなかそこまではTOPIXが上昇しにくいといえるだろう。
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではあり ません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資 信託の勧誘するものではありません 。
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前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

(2021年06月03日「基礎研レポート」)

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