コラム
2021年05月11日

テーマ型のESG関連ファンドが人気~2021年4月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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資金流入が全体的に鈍化

2021年4月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、外国株式に7,000億円の資金流入があり、ファンド全体で6,400億円の資金流入があった【図表1】。4月も引き続き大規模な資金流入があったといえるが、3月の9,300億円の資金流入と比べると大きく減少した。
 
資産クラス別にみても、外国債券以外のすべての資産クラスで3月と比べて資金流入が減少、資金流出に転じた、もしくは資金流出が拡大した。また、外国債券についても4月はSMA専用ファンドにまとまった資金流入があった影響で資金流出が3月と比べて減少したためであり、一般販売されているファンドに限ると資金流出が増加していた。3月の投信販売が好調過ぎた面もあるが、4月は資産クラスなどによらず全体的に販売にややブレーキがかかった、もしくは売却が膨らんだ様子である。
【図表1】 2021年4月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入

外国株式アクティブ・ファンドの販売に陰りが?

外国株式には7,000億円の資金流入と3カ月連続で7,000億円以上の資金流入となったが、3月の7,300億円の資金流入からはわずかに減少した。外国株式をタイプ別にみるとインデックス・ファンドには1,700億円の資金流入があり、3月の1,500億円の資金流入から増加し、販売は堅調であった。特に4月は、米国株式のインデックス・ファンド2本(【図表2】青太字)に計600億円の資金流入があった。その一方でアクティブ・ファンドへの資金流入が5,300億円と3月の5,800億円から500億円ほど減少した。
 
外国株式のアクティブ・ファンドへの資金流入が3月から減少したといっても引き続き大規模であったが、4月は外国株式のアクティブ・ファンドの販売にブレーキがかかった可能性がある。というのも、外国株式のアクティブ・ファンドへの資金流入5,300億円のうち3,300億円が4月に新規設定されたファンド(【図表2】赤太字など)への資金流入であったためである。3月は資金流入5,800億円のうち3月に新規設定されたファンドへの資金流入が500億円であったことからも、4月は新規設定されたファンドによって資金流入がかなり膨らんでいたといえる。
 
当月に新規設定されたファンドへの資金流入を除外すると、外国株式のアクティブ・ファンドへの資金流入が3月の5,300億円から4月は2,000億円と大きく減少した。そのことからも4月は3月から大きく内容が変化したといえるだろう。
 
また、個別ファンドでみても4月に新規設定されたファンド以外にも大規模な資金流入があった外国株式のアクティブ・ファンド(【図表2】緑太字)があったが、その一方で4月に資金流入が止まる、もしくは突然、大規模な資金流出に転じる外国株式のアクティブ・ファンド(【図表3】赤太字)もあった。これまで好調だった外国株式のアクティブ・ファンドの販売も一部では陰りが見え始めていることがうかがえる。
【図表2】 2021年4月の推計純流入ランキング
【図表3】 2021年4月に資金流入が止まった、資金流出が拡大したファンド
外国株式のアクティブ・ファンドは対面販売が中心になっており、販社の方針等の影響も大きく受ける。4月は、ただ単に新規設定ファンドに偏った投資推奨が行われただけの可能性もあるが、これまでの好調過ぎるくらいの高パフォーマンスをあげてきたため高値警戒感から外国株式のアクティブ・ファンドへの投資を見送る、または一部を売却に動く投資家も増えているのかもしれない。市場環境の影響に加えて、大規模な資金流入が続いているだけに外国株式への投資余力が少なくなっている投資家自体も増えていることも考えられる。いつまでこのような外国株式、特にアクティブ・ファンドへの大規模な資金流入が続くのか、今後の動向が注目される。

ESG関連ファンドが引き続き関心を集めているが

なお、4月は「グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンド」、「イノベーティブ・カーボンニュートラル戦略ファンド」などESGに関連するアクティブ・ファンドへ大規模な資金流入があった。引き続き投資家のESG投資への関心の高さがうかがえる。ただ、その一方でESGに関連するアクティブ・ファンドの火付け役となった「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」(【図表3】3位)は、2020年7月に設定されて以来、毎月400億円を超える資金流入があったが、4月は32億円の資金流入とその勢いがほぼ止まった。
 
ここで一概にESGに関連するアクティブ・ファンドといっても上記の3本で投資手法が異なる。4月に人気を集めた「グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンド」と「イノベーティブ・カーボンニュートラル戦略ファンド」はテーマに沿った銘柄選択をしている、いわゆるテーマ型ファンド(投資)である。それに対して4月に資金流入が止まった「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド」は、あくまでも投資先を選ぶ際にESGも考慮して銘柄選択(ESGインテグレーションなどと呼ばれる)を行っているファンドである。
 
最近は、この2本以外にもESG、特に環境に関するテーマ型ファンドがよく新規設定されている。個人投資家にとってESGインテグレーションよりコンセプトが分かりやすいこともあり、ESGに関するテーマ型ファンドが投資家に受けるようになっているのかもしれない。今後、投信市場においてもESG投資が一過性のブームで終わらず定着していていくのかと合わせて、どのような投資手法が投信市場で定着していくのかにも注目していきたい。

内外RETIには戻り売り

バランス型も資金流入こそ継続していたが流入金額が100億円と3月の1,000億円から大きく減少した。3月のバランス型への資金流入は新設ファンドで資金流入が膨らんでいたことに加え、4月はそれまでバランス型の資金流入を牽引していた「投資のソムリエ」(【図表3】青太字)への資金流入にもやや陰りが見えた。それらの特定のファンド以外では、3月でも積極的にバランス型に投資されている様子は見られなかったこともあり、3月の流入規模は続かなかった。
 
また、国内株式は4月にTOPIXや日経平均株価などが2020年10月以来半年ぶりに月間で下落したが、300億円の資金流出に転じた。SMA専用ファンドから300億円強の資金流出があり、一般販売されているファンドに限るとほぼ資金の出入りがなかったが、株価が下落したといっても引き続き高値圏で推移していたこともあり、積極的に国内株式に投資する投資家は少なかった様子である。

それに加えて4月は、国内REITも資金流入から資金流出に転じ、外国REITは資金流出が加速した。国内REITは流出金額こそ100億円と小さかったが、資金流出は2020年2月以来のことである。また外国REITは2020年10月から資金流出が続いているが、それまでは流出金額が200億円前後であったのが4月は500億円と膨らんだ。外国REITからの資金流出が500億円を超えたのは2018年10月以来のことである。
 
内外問わずREITは株式などと比べてコロナ・ショック後の価格の戻りが緩慢であったが、この3月もしくは4月にコロナ・ショック前、つまり2020年2月以前の水準に戻ってきている。そのため、4月は内外REITともに戻り待ちをしていた投資家の売却によって資金流出が膨らんだものと推察される。REIT価格が今後も堅調な展開が続くようだと、ファンドからの資金流出が当面続く可能性があるだろう。

3月までの反動で4月に高パフォーマンスに?

4月に高パフォーマンスであったファンドをみると、ハイテク系など一部のテーマ型の株式ファンド(赤太字)に加えてブラジル・レアルの通貨選択型などブラジル関連ファンドも好調であった【図表4】。2月下旬以降、米国の金融政策や長期金利の動向が意識され、ハイテク株やブラジル・レアルなどの新興国通貨の下落が目立った。4月はそれらが落ち着き反発したこともあり、関連するファンドの中に特に高パフォーマンスをあげるものがあった。
【図表4】 2021年4月の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではあり ません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資 信託の勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2021年05月11日「研究員の眼」)

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