コラム
2021年02月05日

テーマ型もインデックス・ファンドで?~2021年1月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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外国株式に大規模な資金流入

2021年1月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、外国株式に6,900億円もの大規模な資金流入があった【図表1】。外国株式、国内REIT(とその他)以外の資産クラスではすべて資金流出していたが、少額であったため、ファンド全体で見ても5,600億円の資金流入となった。ファンド全体への純流入は2カ月連続で、流入金額は昨年12月の4,400億円から1,200億円も増加し、2018年10月以来の流入規模であった。
 
外国株式には6,900億円の資金流入があり、12月の5,900億円の資金流入から1,000億円増加した。詳しくみると、外国株式のアクティブ・ファンドへの資金流入が5,200億円と12月の4,900億円から400億円増加し、インデックス・ファンドへの資金流入が1,700億円と12月の1,100億円から600億円増加した。アクティブ、インデックス問わず外国株式の販売が2021年に入っても、引き続き好調であったといえよう。
【図表1】 2021年1月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入

3つのタイプのアクティブ・ファンドが牽引

1月は外国株式アクティブ・ファンド全体で流入金額が5,200億円となったが、当初設定額が100億円を超えるような新規設定ファンドはなく、様々なアクティブ・ファンドが売れた。1月に資金流入が大きかった外国株式のアクティブ・ファンドは、以下の3つに分けることができる。
 
まず、1つ目がテクノロジー系のテーマ型の株式ファンドである。足元で特段、新しい投資テーマが出てきているわけではないが、コロナ禍でさらに進展すると考えられる情報通信系の投資テーマなどが引き続き注目され、大規模な資金流入があったファンド(赤太字)が多かった【図表2】。
 
次に、2つ目が特定地域に限定している株式ファンドである。米国株式ファンド(青太字)はアクティブ、インデックスといった運用形式に問わず、昨年から引き続き1月も投資家の人気を集めた【図表2】。それに加えて、特定のファンドに100億円以上といった大規模な資金流入があったわけではないが、新興国株式ファンドにも資金流入があった。特に中国株式ファンドには1月に100億円弱集めた新設ファンドがあったこともあり、全体で400億円に迫る資金流入があった。懸念されている新型コロナウイルスの感染拡大が欧米と比べて東南アジア圏の新興国では相対的に落ち着いていることや、先進国株式と比べて新興国株式が好調なことなどに注目している投資家も多いのかもれない。一方で、2、3年前に人気を集めたインド株式ファンドからは相変わらず資金流出が続いている。
 
そして3つ目は昨年後半から注目されている「ESG」に関連するアクティブ・ファンド(緑太字)である【図表2】。昨年からの「ESG」の火付け役となった「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド」に加えて、1月新設された「アライアンス・バーンスタイン・世界SDGs株式ファンド」にもシリーズ合計で240億円の資金流入があった。その他にも流入金額が1月に100億円をこえるような「ESG」に関連するアクティブ・ファンドもあり、「ESG」への関心も引き続き高いことがうかがえる。このように投資家の多様なニーズに応えられているため、販売が好調なのかもしれない。
【図表2】 2021年1月の推計純流入ランキング

インデックス・ファンドでもテーマ型が台頭か

また、外国株式のインデックス・ファンドについては1,700億円の資金流入があったが、その大部分が米国、先進国、全世界株式指数などの時価加重型の株式インデックスに連動するファンドへの流入である。ただ、それに加えて1月はテーマ型の株式インデックス・ファンドで流入金額が100億円を超えたものもあるなど、テーマ型の株式インデックス・ファンド全体で200億円を超える資金流入があった【図表3:棒グラフ】。
【図表3】 テーマ型株式インデックス・ファンドの資金流出入と純資産総額の推移
そもそも、テーマ型の株式ファンドといえば先ほど1月に人気だったアクティブ・ファンドで触れたように、ファンドマネージャが投資テーマに沿って銘柄選択を行う、アクティブ・ファンドが一般的である。そんな中、2018年頃からファンドマネージャの代わりに投資テーマに沿う(カスタム)インデックスを運用会社等が事前に作成し、それを参照して運用するファンド、つまりテーマ型の株式インデックス・ファンドも設定されるようになってきている。
 
このテーマ型の株式インデックス・ファンドは、既存の(テーマ型の)株式アクティブ・ファンドよりも信託報酬や売買コストが低く設定されており、低コストが最大の魅力である。それに加えて、テーマ型の株式インデックス・ファンドの中にはここ最近の株式市場の選好をうまくとらえて、かなり高パフォーマンスを上げているファンドも出てきている。実際に1月に高パフォーマンスだったファンドをみると、上位10ファンドのうち4本がテーマ型の株式インデックス・ファンド(赤太字)であった【図表4】。こうしたこともあって、テーマ型の株式インデックス・ファンドに注目する投資家が増えているのかもしれない。テーマ型の株式インデックス・ファンドの純資産総額をみても、足元の資金流入と高パフォーマンスによって急増している【図表3:線グラフ】。1月末時点で500億円に迫り、1月の1カ月で2倍に膨らんだ。

なお、投資テーマに沿って銘柄選択を行う集中投資は分散投資した場合と比べて、どうしても当たり外れが大きくなってしまう。つまり、テーマ型の株式インデックス・ファンドは、インデックス・ファンドといっても市場平均狙いの時価総額加重型の株式インデックスに連動した、いわゆる通常のインデックス・ファンドと特性が大きく異なる。そのため、あくまでも(テーマ型の)株式アクティブ・ファンドの代替としての用途が主になるが、今後、テーマ型の株式インデックス・ファンドも通常のインデックス・ファンドと同様に投資家に浸透していくのかどうかが注目である。
【図表4】 2021年1月の高パフォーマンス・ランキング

国内株式の売却はいつまで続くのか

1月は月末こそ株価が急落したが、それまで世界的に株価が堅調な中、確認してきたように外国株式への投資意欲は引き続き旺盛で大規模な資流入があったが、その一方で国内株式は資金流出が続いた。まさにホームカントリーバイアスなど全くなく投資している投資家が多いことがうかがえるが、国内株式市場の市場関係者の一人としては、何とも悲しい状況である。投資家が注目している投資テーマに関連する銘柄が残念ながら国内株式には存在しない、もしくは少ないことが影響しているのかもしれない。
 
ただ、国内株式の流出金額は1月300億円と12月の1,500億円から1,200億円ほど減少した。あくまでも減少した1,200億円のうち800億円はSMA専用ファンド(12月400億円の資金流出から1月400億円の資金流入に)であるが、一般販売されているインデックス・ファンドでも資金流出が鈍化し、また日によっては資金流入に転じている。
 
実際に一般販売されている国内株式のアクティブ・ファンドは1月に900億円の資金流出と12月と同程度の資金流出があったが、インデックス・ファンドは12月の300億円弱の資金流出から1月200億円弱の資金流入に転じた。インデックス・ファンドの資金の動きを日次でみると、1月にインデックス・ファンドが資金流入に転じたのは株価急落を受けて、29日(赤囲い)の資金流入が大きかったためであることが分かる。ただ、28日まででもインデックス・ファンドからの資金流出は20億円に満たず、日経平均株価が2万8,000円台と30年ぶりの高値圏で推移する中で資金流出がほぼ止まっていたといえる。ゆえに、利益確定等の売却が一巡、もしくは株価が高水準を維持する中で投資する動きが多少は出てきているのかもしれない。
【図表5】 国内株式インデックス・ファンドの推計日次資金流出入の推移
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではあり ません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資 信託の勧誘するものではありません 。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2021年02月05日「研究員の眼」)

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