コラム
2021年01月07日

外国株式ファンドが投信販売を牽引~2020年12月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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外国株式に大規模な資金流入

2020年12月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、外国株式に6,000億円に迫る資金流入があり、11月の2,600億円の資金流入から倍以上増加した【図表1】。また、12月は11月に引き続き国内株式、外国REIT、バランス型、外国債券から資金流出があったが、いずれの資産クラスでも11月と比べて資金流出が鈍化した。ファンド全体でみると、11月の4,300億円の資金流出から12月は4,400億円の資金流入に転じた。
【図表1】 2020年12月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入
資金流入が大幅に増加した外国株式では、アクティブ・ファンドへの資金流入が11月の2,200億円から12月は4,800億円に、インデックス・ファンドへの資金流入が11月の500億円から12月は1,100億円へと、タイプによらず資金流入が11月から倍増した。個別ファンドをみても12月に資金流入が大きかったファンドのうち8本(赤太字)が外国株式ファンドであった【図表2】。この8本だけで12月は3,200億円の資金流入があり、11月の2,300億円から1,000億円近く資金流入が増えた。
【図表2】 2020年12月の推計純流入ランキング
12月は、11月に期待が高まった新型コロナウイルスのワクチンが欧米で実際に接種が開始されたことなどから、先行きに対する安心感が広がり資金流入が膨らんだと思われる。実際に12月は月を通して安定して外国株式に資金流入があった。それに加えて、11月は世界的に株価が大きく上昇する中で一部の外国株式ファンドで利益確定の売却が出ていたが、12月は株価上昇がやや一服したこともあり、11月ほど利益確定の売却が出なかったことも資金流入が膨らむ要因となった。
 
国内株式でも資金流出が12月は1,500億円と11月の4,500億円から大幅に鈍化したが、月末までボックス圏で推移し、外国株式と同様に利益確定の売却が11月と比べて少なかったためだと考えられる。バランス型の資金流出の鈍化も売却が一巡したというより、内外株式と同様に12月の市場環境が影響したと思われる。その一方で外国債券からの資金流出の鈍化は、新設ファンド(青太字)の影響が大きく、新設ファンドを除外すると11月と同様に12月も資金流出が続いていた。外国債券は純資産総額が12月末時点で11兆円と外国株式(26兆円)、バランス型(11兆円)に次いで大きく、しかも低金利下であまり収益が期待できないため、2021年に入っても資金流出が続くだろう。

2020年通年でも外国株式が牽引

2020年通年でみると国内株式と外国債券からは2019年と同規模の資金流出があったが、外国株式には大規模な資金流入があり、ファンド全体でも1年間で2兆2,000億円の純流入となった【図表3】。
【図表3】 2019年と2020年の資金流出入
外国株式には2020年に3兆5,500億円の資金流入があり、そのうち2兆6,000億円はアクティブ・ファンドへの資金流入であった。個別ファンドをみても資金流入が大きかったファンドのほとんどを外国株式のアクティブ・ファンド(赤太字)が占め、2020年は外国株式のアクティブ・ファンドが投信販売を牽引した形である【図表4】。
【図表4】 2020年の純流入ランキング
また、外国株式のインデックス・ファンドにも2020年は9,600億円の資金流入があった【図表5】。2019年の4,200億円の資金流入から2倍以上に膨らみ、集計できる1998年以降で最大の純流入となり、2020年末時点で純資産総額(【図表5】線グラフ)は4兆円に迫った。
【図表5】 外国株式インデックス・ファンドの資金流出入

存在感が高まる積立投資家

2020年は、つみたてNISA(制度)の活用が進んだ1年でもあった。つみたてNISAの口座数(棒グラフ)は2019年末時点の189万口座から直近の2020年9月末時点では275万口座と約1.5倍に増えた【図表6】。つみたてNISA口座からの買付額(線グラフ)の増加は口座数以上に顕著で、直近の2020年7-9月の3カ月間の買付額は1,000億円を超えた。
 
つみたてNISA口座からの買付額は、2020年1月から9月までの2,600億円と9カ月で2019年の年間買付額2,000億円を超えた。買付額がこの調子で足元の10―12月も増加したとすると、2020年通年で4,000億円近くと2019年の倍になると考えられる。つみたてNISA口座からの買付は、8割前後が(外国株式に限らない)インデックス・ファンドであることから、2020年は つみたてNISA口座からインデックス・ファンドに3,000億円以上の買付があったものと推察される。

外国株式インデックス・ファンドの流入増加や つみたてNISA(制度)の活用拡大から、個人投資家の間にも外国株式インデックス・ファンドでの資産運用、特に積立投資が浸透してきていることがうかがえる。このトレンドも2020年の外国株式への資金流入を底上げしていたといえよう。
【図表6】 つみたてNISAの口座数と3カ月の買付額の推移

2020年はテーマ型株式ファンドの一部が特に上昇

12月は内外のテーマ型株式ファンドの一部が好調であった【図表7】。また、2020年通してみてもテーマ型の外国株式ファンドに特に高パフォーマンスを上げているものがあり、上位10ファンドすべてがテーマ型の外国株式ファンドであった。うち8本(赤太字)が2019年に設定された比較的、新しいテーマ型のファンドであった【図表8】。2020年はコロナ禍の中で株価が大きく上昇する銘柄も一部存在したが、そのような市場環境にうまく乗れるような銘柄を組み込むテーマ設定がされていた株式ファンドがあったことが分かる。
【図表7】 2020年12月の高パフォーマンス・ランキング
【図表8】 2020年の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではあり ません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資 信託の勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2021年01月07日「研究員の眼」)

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