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- 岐路に立つバランス型ファンド~2020年10月の投信動向~
コラム
2020年11月06日
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外国株式へ資金流入が鈍化
2020年10月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、外国株式に大規模な資金流入があった【図表1】。外国株式への流入金額自体は3,000億円に迫り10月も大きかったが、9月の5,500億円と比べると2,500億円以上減少した。その他、国内REIT(と その他)にも資金流入があったが、流入金額は200億円未満で小規模だった。外国株式以外に目立った資金流入がなかったこともあり、ファンド全体でみても10月は1,100億円の資金流入と9月の4,600億円の資金流入から大きく減少した。
外国株式への資金流入の鈍化は、10月の市場環境が大きく影響したと思われる。9月は米国株式などが久々に月を通じて下落したため、タイミング投資や逆張り投資の買付が出やすい状況であった。それが一転して、10月は中旬までは概ね堅調であり、下旬に世界的に株価が下落したものの、利益確定の売却が出やすい状況にあった。
外国株式への資金流入の鈍化は、10月の市場環境が大きく影響したと思われる。9月は米国株式などが久々に月を通じて下落したため、タイミング投資や逆張り投資の買付が出やすい状況であった。それが一転して、10月は中旬までは概ね堅調であり、下旬に世界的に株価が下落したものの、利益確定の売却が出やすい状況にあった。
外国株式のインデックス・ファンドの流入金額をみると、8月の600億円弱から9月は1,100億円まで膨らんでいたが、10月は再び600億円強に落ち着いている。また、過去に投資家の人気を集めた外国株式のテーマ型ファンドで資金流出基調が続いているファンドの中には、9月に資金流出がやや収まっていたものの10月に再び資金流出が加速しているものも多かった。
10月の外国株式への資金流入はいまだに大規模だが、9月だけでなく7、8月と比べても少なかった。外国株式への流入金額は7月から9月までの3カ月累計で1.5兆円に達していたことを踏まえると、市場環境に加えて外国株式ファンドへの投資家の購入意欲も低下してきている可能性もある。
外国株式の新規設定ファンドの流入金額をみても、投資家の外国株式ファンド、もしくは新設ファンドへの投資疲れが懸念される。7月から9月は当月に新規設定された外国株式ファンドは最大のもので500億円以上の資金流入があったが、10月(赤太字)は新規設定で最大のファンドでも流入金額が200億円に届かなかった【図表2】。10月は新設ファンドでも外国株式ファンドに投資家の資金が集まりにくかったのかもしれない。
10月の外国株式への資金流入はいまだに大規模だが、9月だけでなく7、8月と比べても少なかった。外国株式への流入金額は7月から9月までの3カ月累計で1.5兆円に達していたことを踏まえると、市場環境に加えて外国株式ファンドへの投資家の購入意欲も低下してきている可能性もある。
外国株式の新規設定ファンドの流入金額をみても、投資家の外国株式ファンド、もしくは新設ファンドへの投資疲れが懸念される。7月から9月は当月に新規設定された外国株式ファンドは最大のもので500億円以上の資金流入があったが、10月(赤太字)は新規設定で最大のファンドでも流入金額が200億円に届かなかった【図表2】。10月は新設ファンドでも外国株式ファンドに投資家の資金が集まりにくかったのかもしれない。
中国株式ファンドは2017年後半から2018年前半にかけて投資家の人気を集め、特に2018年は基準価格が下落基調だったにもかかわらず、前半には毎月300億円前後の資金流入があった。ただ、2018年12月に基準価格が底を打ち上昇基調となるとともに資金流出に転じ、2020年8月、9月に流出が止まったが、2020年7月まで1年半以上も資金流出が続いていた。それが10月は中国政府の経済政策に対する期待感から中国株式が上昇し、一部ファンド(赤太字)の収益率が10%に迫るなど中国株式ファンドは総じて好調である中、2018年7月以降で最大となる資金流入があった【図表4】。
足元、欧米などで新型コロナウイルスの再拡大が懸念されているが、中国では感染が収まっており、最も経済活動の正常化に向かっている地域の一つとなっている。そのため、米中対立などの不透明感はあるものの、中国経済の回復を期待して中国株式ファンドを購入する投資家が今後さらに増えてくるのかもしれない。ただ、中国株式ファンドの資金動向とパフォーマンスを改めて見返すと、結果的にパフォーマンスの後追いで、パフォーマンスがピークアウト後に購入している投資家が多いことが分かる。単なるパフォーマンの後追いになっていないか十分に留意した上で投資したいところである。
いずれにしても、11月以降も外国株式への大規模な資金流入が続くのか、また米国(特にハイテク)株式ファンドなどの先進国株式ファンドが選好されてきたのが中国株式ファンドなどに移り変わっていくのか、今後の動向が注目される。
足元、欧米などで新型コロナウイルスの再拡大が懸念されているが、中国では感染が収まっており、最も経済活動の正常化に向かっている地域の一つとなっている。そのため、米中対立などの不透明感はあるものの、中国経済の回復を期待して中国株式ファンドを購入する投資家が今後さらに増えてくるのかもしれない。ただ、中国株式ファンドの資金動向とパフォーマンスを改めて見返すと、結果的にパフォーマンスの後追いで、パフォーマンスがピークアウト後に購入している投資家が多いことが分かる。単なるパフォーマンの後追いになっていないか十分に留意した上で投資したいところである。
いずれにしても、11月以降も外国株式への大規模な資金流入が続くのか、また米国(特にハイテク)株式ファンドなどの先進国株式ファンドが選好されてきたのが中国株式ファンドなどに移り変わっていくのか、今後の動向が注目される。
コロナ・ショック以降、岐路に立つバランス型ファンド
外国株式には大規模な資金流入がある一方で、国内株式と外国債券からは10月も1,000億円前後の資金流出があった。国内株式ではインデックス・ファンドからの資金流出は止まったが、アクティブ・ファンドからは引き続き大規模な資金流出があった。その他にも金額こそ小さいが外国REITが資金流出に転じ、国内債券からも資金流出があった。それに加えて、10月は5月から資金流入が続いていたバランス型への流入が止まった。
そもそもバランス型は2019年に投資家の人気を集め、1年間で1.5兆円もの資金流入があった。2019年は資産の配分比率が固定されている、いわば一般的なバランス型ファンド(緑棒)に加えて、「その他」に分類しているレバレッジを活用したバランス型ファンド(青棒)も人気を牽引した【図表5】。2020年に入っても2月までは同様に資金流入が続いたが、コロナ・ショックとなった3月以降は「配分比率固定」、「その他」のバランス型ファンドともにショック前のように資金が集まらない状況になっている。特に、「その他」のバランス型ファンドでは7月以降、資金流出が続いている。
そもそもバランス型は2019年に投資家の人気を集め、1年間で1.5兆円もの資金流入があった。2019年は資産の配分比率が固定されている、いわば一般的なバランス型ファンド(緑棒)に加えて、「その他」に分類しているレバレッジを活用したバランス型ファンド(青棒)も人気を牽引した【図表5】。2020年に入っても2月までは同様に資金流入が続いたが、コロナ・ショックとなった3月以降は「配分比率固定」、「その他」のバランス型ファンドともにショック前のように資金が集まらない状況になっている。特に、「その他」のバランス型ファンドでは7月以降、資金流出が続いている。
リスクコントロールが組み込まれたバランス型ファンド(黄棒)に限ると、4月は資金流出していたが、それ以降はコロナ・ショック前並み、もしくはそれ以上の資金流入が続いている。バランス型ファンドの多くがコロナ・ショックで基準価格が大きく下落したが、リスクコントロールが組み込まれたバランス型ファンドの中にはコロナ・ショックを上手くやり過ごしたものもあった。そのようなファンドが6月以降、投資家の人気を集めているためである。10月に200億円以上の資金流入があった「投資のソムリエ」(青太字)がまさにそのようなファンドの代表格である【図表2】。
このようにコロナ・ショック前後でバランス型の販売動向が明らかに変わってしまったことが分かる。何よりショック後は、レバレッジを活用したものだけでなく資産運用の王道ともいえる配分比率が固定されたバランス型ファンドの販売も冴えない状況が続いている。コロナ・ショックではリスク性資産が総じて下落し、資産分散の効果が限定的であったこともあり、バランス型といえどもほとんどのファンドが下落を免れなかった。そのため、コロナ・ショックによって分散投資やバランス型ファンドの今後に対して懐疑的になっている投資家が増えてしまっているのかもしれない。
このようにコロナ・ショック前後でバランス型の販売動向が明らかに変わってしまったことが分かる。何よりショック後は、レバレッジを活用したものだけでなく資産運用の王道ともいえる配分比率が固定されたバランス型ファンドの販売も冴えない状況が続いている。コロナ・ショックではリスク性資産が総じて下落し、資産分散の効果が限定的であったこともあり、バランス型といえどもほとんどのファンドが下落を免れなかった。そのため、コロナ・ショックによって分散投資やバランス型ファンドの今後に対して懐疑的になっている投資家が増えてしまっているのかもしれない。
(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
(2020年11月06日「研究員の眼」)
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経歴
- 【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)
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