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世界各国の金融政策・市場動向(2021年3月)-新興国では金融政策の引き締めの動きも
経済研究部 主任研究員 高山 武士
1.概要:新興国で金融引き締めの動きが広がる
1 本稿では金融政策はG20について確認する。また、株価・為替についてはMSCI ACWIの指数を構成する50か国・地域について確認する(2020年11月末よりMSCIの新興国としてクウェートが追加されている)。中国と記載した場合は中国本土を指し香港は除く。また、香港等の地域も含めて「国」と記載する。
2.金融政策:新興国で金融引き締めの動きが広がる
先進国では、まず日本銀行が「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」を踏まえた決定を行った。内容については、大きく「(1)貸出促進付利制度の創設」「(2)長期金利変動幅の明確化(±0.25%)と連続指値オペ制度の導入」「(3)ETF・REITの年間購入目途の撤廃と対象ETFのTOPIX型への一本化(日経平均およびJPX400を対象外に)」であった。(1)はマイナス金利のさらなる引き下げ余地の拡大、(2)は事実上の金利変動許容幅の拡大(従来の許容幅は±0.2%程度と見られていた)、(3)は平時のリスク性資産購入の縮小であり、(2)(3)は緩和の出口を見据えた修正と捉えられる。
ECBは現行の金融緩和の大きな枠組みは維持しつつ、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)での購入ペースの加速を明示、決定した。米国の長期金利上昇を背景に、域内の長期金利にも上昇圧力が生じていたため、資産購入を通じて金利低下を促し「良好な資金調達環境」を維持する姿勢を強調した形となる。また購入ペースについては、ECBスタッフによる経済見通しを公表する四半期毎に見直すとして、今後の運営についても明確化した。
FRBはFOMCで金融政策の現状維持を決定したが、金融規制として20年4月から実施していた補完的レバレッジ比率規制(SLR)の21年3月末で終了しており、正常化に向けた動きが見られる3。
一方、新興国では金融引き締めの動きが広がっている。
コロナ禍後、早期に金融引き締めを実施している国としてはトルコが挙げられ、昨年夏ごろから自国通貨安とインフレ圧力を背景に段階的に利上げを実施している。トルコで3月にも政策金利をさらに2%ポイント(17→19%)引き上げている。このほか、3月はブラジルで0.75%ポイント(2.00→2.75%)、ロシアで0.25%ポイント(4.25→0.50%)の引き上げが行われた。市場予想はブラジルで0.5%ポイントの利上げ、ロシアで据え置きであったため、これらの国では予想を上回る引き締め姿勢を示したことになる。背景にはインフレ圧力の高まりがあり、また通貨安が進んでいることも共通している。感染者数などで見たコロナ禍の状況に大きな進展はないものの、新興国でインフレ圧力の高まりや通貨安が進んだことを受けて、金融政策としては引き締めの動きが広がってきたと言える。
なお、トルコでは利上げを決定した後にエルドアン大統領が20年11月に着任したアーバル総裁を解任、その後に副総裁も解任している。金融引き締めに積極的だったアーバル総裁が解任されたことで、通貨安が進むきっかけとなっている。
2 第1節の表および本文中には記載していないが、デンマーク国立銀行は3月11日に技術的な調整として、中銀預金金利と貸出金利の簡素化(一本化)を決定している。
3 金融調節手段(資金吸収オペレーション)の1つであるリバースレポオペ(ON RRP)の利用上限の引き上げも決定している。
3.金融市場:中国株の下落が目立つ、為替はドル高が進行
さらに、中国株のうちシェアの大きいテンセントやアリババについては、3月下旬にブロック取引やそれに関連した下落が見られたと報じられており、巨額の資金を運用していたファミリーオフィス(アルケゴス)に絡む損失計上と関係している可能性もある。
先進国については、前月比ではほとんどの国で上昇したが、月後半以降は横ばい圏での推移となっている(前掲図表1)。
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(2021年04月01日「経済・金融フラッシュ」)
03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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