2021年03月01日

世界各国の金融政策・市場動向(2021年2月)-株価は中旬までは上昇したが、下旬に調整

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.概要:一部の国で追加緩和を実施

2月に世界各国1で実施された金融政策および、株価・為替の動きは以下の通り。
 

【2月金融政策】


【2月の株価・対ドル為替レートの動き】
・2月中旬にかけ新興国株を中心に上昇したが、2月下旬は調整圧力が強まった(図表1)
・対ドル名目実効レートは一進一退となったが、国別にはドル高が進む国が多かった(図表2)

(図表1)世界株価の動向/(図表2)対ドル為替レートの動向
 
1 本稿では金融政策はG20について確認する。また、株価・為替についてはMSCI ACWIの指数を構成する50か国・地域について確認する(2020年11月末よりMSCIの新興国としてクウェートが追加されている)。中国と記載した場合は中国本土を指し香港は除く。また、香港等の地域も含めて「国」と記載する。

2.金融政策:一部の国で緩和策拡充

2月の主要中銀の金融政策を振り返ると、一部の国で追加緩和を実施している。

先進国では、オーストラリア準備銀行が量的緩和策の延長(追加購入)を決定した。同行は昨年11月に政策金利(短期金利および3年物国債利回りの目標)を引き下げるとともに、残存年限5-10年の国債の1000億豪ドルを約6か月にわたって購入する方針を決定していた。今回の追加緩和は当初の購入予定額に達する4月中旬以降にも追加で1000億豪ドルの購入を行うことを決めた(購入ペースはこれまでと同じで週50億豪ドル)。

新興国では、インドネシアおよびメキシコ中銀が追加利下げに踏み切った2。いずれもコロナ禍の中、インフレ率が比較的安定していることから政策金利の引下げを決定している。なお、トルコ中銀は政策金利の変更はしなかったが、24日に法定準備率の引上げ(2.0%ポイント)と、準備金における外貨および金での保有上限の引下げ、リラ建て法定準備金への付利の引上げといった法定準備に対する一連の変更を実施しており、リラ需要に対する引き締め策を継続していると言える。
 
2 インドネシア中央銀行は自動車ローンや住宅ローンの頭金比率(借入金比率)の緩和なども同時に決定、公表した。

3.金融市場:株価は2月中旬にかけて上昇したものの下旬には下落

MSCI ACWIにおける月間騰落率を見ると、全体では前月比+2.2%、先進国が前月比+2.5%、新興国が前月比+0.7%となり、総じて上昇している。
(図表3)MSCI ACWI構成銘柄の国別騰落数 国別の株価の動きを見ると、2月は対象国50か国中、35か国が上昇、15か国が下落という結果となった(図表3)。

2月は前月比でみるとやや上昇となったが、時系列で見ると2月中旬にかけて先進国・新興国株式ともに大きく上昇(特に新興国の上昇が目立つ)した後、後半は下落するという展開だった(前掲図表1)。特に月末近い25日に米国で金利上昇が進んだことを受けて、株価が大きく下落する国が目立った。国別にはニュージーランドの株が大きく下げているが、これは同国株式市場でシェアの大きい医療機器メーカー大手に関して、ワクチン普及による需要低下などが懸念され、これまでの上昇からやや調整しているといった面も大きい。
(図表4)各国の株価変動率
通貨の騰落率を見ると、対ドルの27カ国の貿易ウエイトで加重平均した実効為替レート(Narrow)が前月比+0.5%、60カ国の貿易ウエイトで加重平均した実効為替レート(Broad)が前月比▲0.2%と異なる動きとなった3(前掲図表2)。今年1月をピークにドル安に歯止めがかかっている状況が続いている。米金利が上昇していることもドル買い圧力に寄与していると見られる。MSCI ACWIの構成通貨別に見ると、39通貨中13通貨が対ドルで上昇(ドル安)、26通貨が下落(ドル高)となった(図表5)。
(図表5)MSCI ACWI構成通貨の通貨別騰落数 通貨別に見ると(図表6)、1月に続いてアルゼンチンペソ、ブラジルレアルを中心にドル高(自国通貨安)が強いほか、メキシコペソやトルコリラといった新興国通貨も安い。先進国通貨では円やスイスフラン、スウェーデンクローナといった通貨に対してもドル高(自国通貨安)が進んでいる一方でポンドについては、イングランド銀行による追加緩和観測などが後退していることで、昨年末以降はポンド高が継続している。
(図表6)各国の対ドル為替レート変動率
 
3 名目実効為替レートは2021年2月23日の前月末比で算出。
(参考)主要国の新型コロナウィルス拡大後の金融政策一覧
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

(2021年03月01日「経済・金融フラッシュ」)

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