- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 世界経済 >
- IMF世界経済見通し-ワクチン普及加速で見通しを上方修正
IMF世界経済見通し-ワクチン普及加速で見通しを上方修正
経済研究部 主任研究員 高山 武士
1.内容の概要:20年は上振れ、21年も上方修正
2.内容の詳細:想定より速いワクチン普及が経済回復に寄与
世界経済成長率を見ると、20年の見込みで前回見通しから0.9%ポイント上振れ、21年も0.3%ポイント上方修正している。IMFはその理由として、20年については、下半期の回復が予想を上回る勢いであったこと、対人接触の回避に経済活動が適応してきたことを挙げている。また21年については、今年後半のワクチン普及による景気拡大期待と米国や日本をはじめとした追加の財政出動を反映した結果としている。
なお、国別に見ると、20年については改定見通しで公表している30か国中25か国が上振れしており、下振れは5か国のみとなった2。また21年については、上方修正が12か国、下方修正が18か国となり、世界全体では上方修正されているが、個別にみると下方修正されている国も多い3。
IMFでは、今回のベースラインの見通し作成に対する前提として、主に以下の点を挙げている。
【ベースライン見通しについての主要な前提】
・21年夏には先進国および一部の新興国にワクチンが広く普及し、22年下半期にはほとんどの国で利用可能になる(前回見通しより普及が速いと想定)
・ワクチンが広く利用可能になるまで、(変異種への対応を含め)ロックダウンの可能性がある
・世界全体で、21年から22年にかけて、治療法がさらに効率的で利用しやすくなっていく
・(上記のワクチンや治療法により)22年末までにはウイルス感染は低水準に抑制され、一部の国では、これよりも早く感染を抑制できる
・見通し期間の22年末までは、主要中央銀行で現行の低金利政策が維持される
・21年の原油価格は上昇するが、19年平均水準よりは低位となる。原油以外の一次産品価格は上昇、特に金属価格は高騰すると見られる
続いてベースラインシナリオの各国・地域の状況を確認しておきたい。
上振れリスクとしては、「ワクチン製造・普及や有効な治療法に関する好材料による感染収束の加速」「想定以上の財政政策の実施」を挙げている。
一方、下振れリスクとしては、「予想よりも強固なロックダウン(ワクチンが普及する前の感染急拡大など)」や、「医療の遅れ(ワクチン普及遅延・接種忌避・短い免疫有効期間・治療法改善の遅れ)」、「社会不安の高まり」「財政支援の縮小」を挙げている。
具体的には、ベースラインからの乖離率で見ると、先進国は楽観シナリオでは最大21年に+1.33%、悲観シナリオでは21年に▲0.92%としているのに対し、新興国は楽観シナリオでは最大22年に0.87%、悲観シナリオでは22年に▲0.55%としている。
1 なお、同日に公表したブログでは、「分岐する景気回復軌道 ワクチンとウイルスのスピード競争」の題名を付けている。「分岐する景気回復軌道」では、各国間の乖離(中国が最も回復が早く、米国もユーロ圏より回復が早い。また概ね先進国の方が新興国より回復が早い)および、各国内の格差(教育水準の低い労働者・若年層・女性・インフォーマル労働者)に言及、「ワクチンとウイルスのスピード競争」では、今後の見通しがウイルスの変異とワクチンのスピード競争の結果に大きく依存することに言及している。
2 20年の下振れはフィリピン(▲1.3%ポイント)やインドネシア(▲0.4%ポイント)の下振れ幅が大きい。
3 21年の上方修正の幅が大きい国は、インド(+2.7%ポイント、財政年度ベース)、米国(+2.0%ポイント)、一方、下方修正の幅が大きい国はイタリア(▲2.2%ポイント)、ポーランド(▲1.9%ポイント)、カナダ(▲1.6%ポイント)、英国(▲1.4%ポイント)。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2021年01月27日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
高山 武士のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/01/22 | 英国雇用関連統計(24年12月)-賃金上昇率は前年比5.2%台で推移 | 高山 武士 | 経済・金融フラッシュ |
2025/01/20 | IMF世界経済見通し-ベースラインは安定成長だが不確実性は高い | 高山 武士 | 経済・金融フラッシュ |
2025/01/16 | ロシアの物価状況(24年12月)-前年比伸び率は9%台半ばまで上昇 | 高山 武士 | 経済・金融フラッシュ |
2025/01/08 | ユーロ圏消費者物価(24年12月)-総合指数は3か月連続上昇、2.4%に | 高山 武士 | 経済・金融フラッシュ |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2025年01月22日
トランプ政権始動、円相場の行方は関税次第に~マーケット・カルテ2月号 -
2025年01月22日
英国雇用関連統計(24年12月)-賃金上昇率は前年比5.2%台で推移 -
2025年01月21日
気候変動 保険活用への影響-保険の“3つのA”はどのような影響を受けるか? -
2025年01月21日
EUにおけるソルベンシーIIのレビューを巡る動向2024-ソルベンシーIIの改正指令が最終化- -
2025年01月21日
「人生会議」とは何か?~アドバンス・ケア・プラニング(ACP)は、最期まで自分らしく生き抜くためのキーワードか~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【IMF世界経済見通し-ワクチン普及加速で見通しを上方修正】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
IMF世界経済見通し-ワクチン普及加速で見通しを上方修正のレポート Topへ