2020年10月14日

IMF世界経済見通し-上方修正も、先行きの不確実性は高い

経済研究部 准主任研究員   高山 武士

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1.内容の概要:20年は▲4.4%、6月より上方修正

10月13日、国際通貨基金(IMF)は世界経済見通し(WEO;World Economic Outlook)を公表し、内容は以下の通りとなった。
 

【世界の実質GDP伸び率(図表1)】
2020年は前年比▲4.4%となる見通しで、6月改定見通し(同▲5.2%1)から上方修正
2021年は前年比+5.2%となる見通しで、6月改定見通し(同+5.4%)から下方修正

(図表1)世界の実質GDP伸び率/(図表2)世界の名目GDP(市場為替換算ドル)
 
1 6月に公表した改定見通しから、購買力平価を変更している(11年基準→17年基準、17年基準では11年基準よりも先進国のシェアが増加、新興国・途上国のシェアが低下している)。6月に公表した見通しは世界成長率で20年▲4.9%、21年+5.4%(11年基準購買力平価)だが、これを17年基準購買力平価で換算すると20年▲5.2%、21年+5.4%となる。

2.内容の詳細:不確実性は依然として大きい

IMFは、今回の見通しを「長い、困難な回復(A Long and Difficult Ascent)」と題して作成し220年の見通しは▲4.4%と世界金融危機(09年▲0.1%)と比較しても深刻なマイナス幅だが、6月時点(▲5.2%)の予想よりは深刻ではないとして上方修正している

その理由としては、ロックダウン(都市封鎖)緩和後の回復が速やかに進んだことなどから、4-6月期の落ち込みの実績が予想よりも軽微だったこと、7-9月期の回復力が強めだったことを挙げている。一方で、社会的距離(ソーシャルディスタンス)の確保が長期化すると見られることから、21年の見通しは下方修正している(6月時点:5.4%→今回:5.2%)。

また、コロナ禍後の4月時点で作成した見通しは、不確実性の高さから2年間(2021年まで)の予測値しか公表されなかったが、今回は6年間(25年まで)の予測が公表されている。中期の見通しについては、深刻な景気後退による倒産や失業などで潜在供給力が失われ、コロナ禍前に見込まれていた経済水準への回復が遅くなることを指摘している3(前掲図表2)。さらに今回の経済の落ち込みにより貧困削減が止まり、格差拡大が進む点を重要な課題として強調している。

IMFは、こうした状況下では、短期的には成長を支える経済政策を実施しつつも、中期的な潜在GDPが低下する中では返済が困難になるほどに債務を増加させないようにするという舵取りをしていく必要があるとしている。

また、IMFは今回のベースライン予想の不確実性の高さを引き続き強調するとともに、代替シナリオも用意しているため、これについては後述する。
(図表3)先進国と新興国・途上国の実質GDP伸び率 さて、ベースラインのシナリオで各国・地域の状況を確認すると、先進国と新興国・途上国の実質GDP伸び率は、いずれの地域でも20年は大幅マイナス成長、21年は反動増という経路を描く(図表3)。新興国・途上国が先進国よりも20年の落ち込みが小さく、21年の回復も大きいという傾向にあるが、これは、新興国のうち中国の成長率が底堅く推移すると予想されていることが大きな要因と言える。
(図表4)各国・各地域の成長率と実質GDP水準
実際、国ごとの成長率を見ると、インド(20年:▲10.3%)やメキシコ(同▲9.0%)など新興国・途上国でも大きく落ち込んでいる国は少なくない(図表4)。また、世界全体で見ると、2021年の実質GDP水準は2019年をわずかに超える水準に回復すると予想されている(図表4の赤い棒グラフが100を超えている)が、これはアジア新興国の一部(中国・ASEAN5)の上昇が全体を押し上げているためである。他の多くの主要国については、2021年に反動増はみられるものの、2021年には2019年の水準まで回復しないと予想されている。

各国・各地域の失業率を見ると4(図表5)、先進国全体の失業率は、20年7.3%、21年6.9%と20年に大きく悪化したのち、改善ペースも小幅となることが予想されている。しかし、4月時点の見通し(20年8.3%、21年7.2%)と比較すると下方修正(改善)されているが、時短勤務などの不完全就業者の増加が著しい点を指摘している。また、新興国については見通しを作成していないものの、入手可能なデータからは2020年の失業者が大幅に増加すると見込まれているとしている。
(図表5)各国・各地域の失業率
次にIMFの挙げる不確実性について見ていきたい。

IMFでは、リスクバランスを定量的に評価することは困難であるとしつつ、いくつかのリスク要因を挙げている。

具体的には上方要因としては「感染拡大を伴わず景気回復が予想以上に進む」「財政政策の拡充」「新技術などによる生産性の向上」「治療法の進歩」「安全・有効なワクチン開発」を指摘する一方、下方要因として「感染爆発(outbreaks)」「政策支援の剥落」「金融市場の緊張」「流動性不足、支払い不能」「社会不安の高まり(政治的・社会的問題の顕在化や悪化)」「地政学的緊張」「貿易政策の不確実性、技術摩擦」「気象災害」を挙げている。

また、IMFでは今回のベースラインの予想を作成するにあたって、社会的な距離の確保が2021年に入っても続くが、ワクチン普及や治療法の改善などによって、2022年末には広範囲にわたって感染が低水準に抑制できると前提を置いており、代替シナリオとして、新型コロナウイルスに対する封じ込め政策を強化・長期化する必要がある悲観シナリオと、ウイルスを比較的早期に克服できる楽観シナリオも説明している。
(図表6)世界の実質GDP伸び率 悲観シナリオでは、世界成長率が20年に約▲0.75%pt、21年に約▲3%ptとベースラインより低くなる。一方、楽観シナリオでは、21年に約0.5%pt、22-23年は約1%pt成長率が上振れするが、24年には緩やかになり、25年はベースライン成長率よりは低くなるとしている(図表6)。
 
2 なお、同日に公表したブログでは、「長く、不均等で、不確実な復興の道」の題名を付けている。「不均衡」で国による経済への影響・回復にバラツキが生じると考えられること、国内でも労働市場で低所得労働者・若年層・女性への被害が大きいことなど、「不確実」で今後の回復過程でもリスクがかなり残っていることを示していると推測される。
3 同日公表のブログでは、具体的にコロナ禍前と比べ2020-21年で11兆ドル、2020-25年で28兆ドルのGDPが失われると言及している
4 IMFでは新興国・途上国地域の失業率については集計・試算していない国が多いため、先進国を中心に見る。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、国際経済

(2020年10月14日「経済・金融フラッシュ」)

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