2020年09月08日

新型コロナウイルスと各国経済-コロナ禍を上手く乗り切っているのはどの国か? 50か国ランキング

基礎研REPORT(冊子版)9月号[vol.282]

経済研究部 准主任研究員   高山 武士

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1―概要

新型コロナウイルスが世界的に流行、WHOがパンデミック宣言した3月11日から5か月以上が経過した。各国は新型コロナの感染拡大を防ぐために様々な手段を講じてきたが、感染拡大抑制に効果的な封じ込め政策は、ロックダウン(都市封鎖)や外出規制に代表されるように直接的に経済活動を制限することになる。厳しい感染防止措置と経済維持がトレードオフの関係にあることから、政府は難しい舵取りの中で政策実行を行っている。中にはスウェーデンのように厳しい行動制限の導入を避けている国もある。

本稿では、感染防止と経済維持にトレードオフの関係がある中で、感染を抑制しかつ経済活動も維持できている国、つまり上手くコロナ禍を乗り切っている国がどこなのかをランク付けして評価した*
 
* 本稿は7月3日に公表したニッセイ基礎研レター「新型コロナウイルスと各国経済-コロナ禍を上手く乗り切っているのはどの国か? 49か国ランキング」を修正したものである。対象国は世界株価指数(MSCIACWI)を構成する49カ国・地域に問い合わせの多かったベトナムを加えて50か国・地域とし、7月末までの数値を用いてランキングを更新した。なお、中国と記載した場合は中国本土を指し香港は除く。また、香港等の地域も含めて「国」と記載する。

2―先行事例・評価方法

各国の新型コロナウイルスへの対応に関する評価は、本稿の他に米ニュースメディアのPOLITICO、英エコノミスト誌、先端技術系の企業・非営利団体であるDeep Knowledge Group、ベルテルスマン財団と持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が発行するレポート(Sustainable Development Report2020)などで実施されている。

コロナ対応の評価方法は様々な切り口があり、高評価の国も切り口によって異なる。さらに、評価を実施する際のウエイトの置き方(例えば「健康」と「経済」ではどちらを重要視するか)でも評価に差が出てくる。また、感染者数の今後の動向や、経済活動の回復ペースなどには不透明な要素も多いため、断定的な評価を下すことは難しい。

しかし、各国での感染状況や経済パフォーマンスを概観しておくことは、コロナ対策の初期評価として興味深い内容である。そこで本稿では、シンプルに各国の「コロナ被害」と「経済被害」について、現時点で入手できる実データおよび予測データを利用して評価していく。

評価方法の概要は以下の通りである。
【コロナ被害】
「コロナ被害」については「(1)累積感染者数」「(2)感染拡大率」「(3)致死率」で評価する。なお、データは政府の発表等から作成されており、定義が公表主体によって異なる点には注意が必要である。

【経済被害】
「経済被害」については、コロナによって失われたGDPの損失を計算する。この「GDP損失」は各国の実質GDPの水準について「コロナ禍前の想定(ベースライン)」と「コロナ禍後の見通し」をそれぞれ計算した上で、その差額をコロナ禍での経済被害として推計している(データは主に国際機関が公表したものを用いている)。

なお、被害の推計を2020年のGDP差額に限っており、長期的な経済被害について考慮していない点、コロナ禍以外の要因での成長率変動を取り除いていない点には注意が必要である。

【総合評価】
総合評価としては次のように点数を付けている。「コロナ被害」と「経済被害」について、被害の小さい国から被害の大きい国まで好成績順に並べて、1~10点で点数をつける(高得点がコロナ禍に上手く対応していることを示す)。そして、「コロナ被害」の3項目と「経済被害」の1項目の点数をレーダーチャートにし、総合評価点をチャートの面積から計算する。
[図表1]日本のコロナ対策の評価
例えば、日本について評価すると図表1のようになる。感染者数が50か国中7位(7番目に少ない)で9点、感染拡大率は42位で2点、致死率は24位で6点、GDP損失は10位で9点となっている。総合点は面積の72点となる。この評価では、「コロナ被害」が3項目あり、「経済被害」が1項目しかないため、「コロナ被害」のウエイトが高めの評価と言える。

3―評価結果・上位国の特徴

さて、前節の方法で50か国のコロナ対応を評価してランク順に並べると、図表2のようになる。
[図表2]各国のコロナ対応の評価
総合順位では、台湾、マレーシア、韓国、中国、ベトナムの順に高評価となった。ランキング上位国を見ると、東アジアの国が多い。こうした国々がコロナ禍に上手く対応できている背景として、比較的早期から「謎の肺炎」に注意していた点に注目したい。

実際、東アジアの国々では中国との地理的な近さや新型コロナと同様に中国からアジアに拡大したといわれるSARSの経験もあり、早期の段階から水際対策を講じてきた。初動の早さが水際対策の効果を高め、国内への輸入感染が抑制できたと考えられる。その結果、その後の感染拡大に対する封じ込め政策を経済的なコストを抑えつつ導入できた可能性がある。そのためランキングには初動対応の巧拙が大きく反映されたと言える。

ただし、先行きの被害の織り込み方は「コロナ被害」では足もとの感染拡大率を、「経済被害」では国際機関の見通しを利用しており、実績とは異なる。

今後も継続的なコロナ対応は必要であり、実際の「コロナ禍被害」と「経済被害」の動向はこれからのコロナ対応への巧拙で大きく変動しうる。ロックダウンなどの厳しい封じ込め政策は経済への影響が甚大であり、財政出動の余地も限られていることから、導入に対する反対意見も強くなっている。経済活動を極力維持しつつ、感染拡大を抑制しようとする国は多い。

これからは、感染者の検査・早期発見と隔離などの医療体制を整えて、行動制限を行う場所・業種を極力限定しつつ封じ込めをするという、これまで以上に難しい舵取りが求められていると言えるだろう。
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経済研究部   准主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

(2020年09月08日「基礎研マンスリー」)

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