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世界各国の金融政策・市場動向(2020年8月)-トルコで大幅な実質マイナス金利の弊害も
経済研究部 主任研究員 高山 武士
1.概要:FRBが「長期目標と金融政策戦略」の修正を公表
1 本稿では金融政策はG20について確認する。また、株価・為替についてはMSCI ACWIの指数を構成する49か国・地域について確認する。中国と記載した場合は中国本土を指し香港は除く。また、香港等の地域も含めて「国」と記載する。
2.金融政策:FRBは「長期目標と金融政策戦略」の修正を公表、新興国の一部は継続利下げ
米国ではコロナ禍前には、失業率が歴史的低水準にあり雇用最大化は概ね達成されていたと評価できるだろう。一方でインフレ率は2%に届きにくい状況が続いていた。FRBは良好な雇用環境においてもインフレ率が高まらない環境では拙速に利上げをしないと表明した形になる。過度な緩和姿勢はバブル懸念となるが、低インフレが定着する前に緩和姿勢を強め、安定した物価を達成・維持する方が、結局は日本のように低インフレが定着し、デフレが懸念されることで金融政策の限界や低成長をもたらすことよりも好ましいと判断したとも言える。
一方で、平均2%の考え方(超過を許容する幅や期間)、雇用最大化が達成される前にインフレ率が大きく上昇した場合の考え方など、特に、緩和の出口に関する細かい方針は不透明である。現在はコロナ禍からの回復途中にあり、金融政策の出口までは遠いが、いずれはこうした出口に向けた具体的な方針を明示する必要が出てくるだろう。
新興国は、ブラジルが政策金利を引き下げている。ブラジルでは政策金利を2%として消費者物価(7月:前年同月比+2.31%)を下回る、実質マイナス金利の水準まで引き下げた形になる。なお、大幅な実質マイナス金利となっているトルコ(7月消費者物価:前年同月比+11.76%、政策金利:8.25%)では通貨安が進んでいたために利上げ観測も見られたものの、政策金利は据え置かれ、(低金利を志向する)政権の意向に沿う形となった。一方で、トルコ中銀は8月から資金供給オペの供給量を調整する形(政策金利での資金調達オペ供給量を削減し、より金利の高いオペ供給を増やす形)で、実態的な資金調達コストの高め誘導をはじめている。
米国や欧州の先進各国が実質金利でマイナス1%前後(政策金利0%前後、インフレ率1%前後)の金融環境のため、ブラジルのような若干の実質マイナス金利は、他国と比較して著しく低い水準となっている訳ではないが、トルコほど大幅なマイナスになると資金流出リスクも大きくなる。また、通貨安がさらに輸入物価を上昇させるという悪循環になりかねない。トルコ中銀は資金調達コストの高め誘導をしているが、通貨下落圧力はくすぶりやすい状況といえる。
2 雇用の最大化については、広範囲かつ包括的目標(a broad-based and inclusive goal)と位置づけ、雇用の不足(shortfalls)を評価すると修正している。
3 インフレ率が2%を下回る期間が続いていれば、しばらくインフレ率が2%を上回るように誘導することも明記している。
3.金融市場:株は米国中心に上昇、為替は若干のドル安
4 先進国の中で下落したニュージーランドについては、8月25日以降、サイバー攻撃を受け、4日連続で取引が一時停止された。
5 名目実効為替レートは8月25日の前月末比で算出。
6 トルコでは、黒海で天然ガス田とみられるエネルギー資源を発見したとの報道を受け一時上昇する場面もあったが、長続きはしなかった。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年09月01日「経済・金融フラッシュ」)
03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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