2020年08月03日

ユーロ圏GDP(2020年4-6月期)-スペインの落ち込みが特に深刻

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前期比2桁の悪化、統計開始以来で最悪

7月31日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏GDPの一次速報値(Preliminary Flash Estimate)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏19か国GDP(2020年4-6月期、季節調整値)】
前期比は▲12.1%、市場予想1(▲12.1)と同じ、前期(▲3.6%)から悪化した(図表1)
前年同月比は▲15.0%、市場予想(▲14.5%)より下振れ、前期(▲3.1%)から悪化した(図表2)

(図表1)ユーロ圏の実質GDP成長率(前期比)/(図表2)ユーロ圏の実質GDP成長率(前年同期比)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様。

2.結果の詳細:スペイン、フランス、イタリアの順に落ち込みが大きい

4-6月期の成長率は、新型コロナの影響が顕在化してきた1-3月期からさらに悪化し、前期比▲12.1%(年率換算▲40.3%)、前年同期比▲15.0%と統計開始(1995年)以降で最も悪化した。

欧州委員会統計局が公表した各国の伸び率のうち、経済規模の大きい4か国を見ると、前期比ではドイツ▲10.1、フランス▲13.8%、イタリア▲12.4%、スペイン▲18.5%といずれも2桁を超える急落となった(図表3)。

なお、コロナ禍の影響は1-3月期から顕在化していることから、落ち込んだ経済の水準を見るには1-3月期分の下落も加味される前年同期比の伸び率が参考になる。前年同月比で見るとドイツ▲11.7%、フランス▲19.0%、イタリア▲17.3%、スペイン▲22.1%となり、スペイン経済は2割以上の経済活動が停止したことになり、深刻さが際立っている。なお、ユーロ域内において比較的落ち込みが軽微であったドイツ経済でも、米国を超える悪化幅となっている。
(図表3)ユーロ圏主要国の4-6月期GDP伸び率/(図表4)フランスの実質GDP水準
落ち込みが大きいフランスとスペインについて、各国統計局(フランス国立統計経済研究所(INSEE)、スペイン統計局(INE))が公表している成長率の内訳を見ていきたい。

まず、フランスの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費▲11.0%(前期▲5.8%)、政府消費▲8.0%(前期▲3.5%)、投資▲17.8%(前期▲10.3%)、輸出▲25.5%(前期▲6.1%)、輸入▲17.3%(前期▲5.5%)となり、軒並み1-3月期から急落している(図表4)。

供給別には、生産業が前期比▲16.8%(前期:▲5.6%)、建設業が▲24.1%(前期:▲12.8%)、市場型サービス産業▲13.4%(前期▲5.0%)、非市場型サービス▲8.2%(前期:▲3.8%)とこちらも軒並み下落する結果となった。
(図表5)スペインの実質GDP水準/(図表6)スペインの産業別GDP成長率(前期比伸び率)
次にスペインの成長率(前期比)を見ると、需要項目別には個人消費▲21.0%(前期▲6.6%)、政府消費+0.4%(前期+1.8%)、投資▲22.3%(前期▲5.7%)、輸出▲33.5%(前期▲8.2%)、輸入▲28.8%(前期▲6.6%)となり、政府消費を除き2割から3割強の落ち込みが見られる(図表5)。

供給別には、農林水産業が前期比+4.4%(前期+1.6%)、工業が▲18.5%(前期▲6.5%)、建設業が▲24.1%(前期▲6.8%)、サービス業が▲19.1%(前期▲4.7%)となった。細かい業種を見ると、外出制限の影響を受けやすい卸・小売・運輸・住居・飲食サービスで、40%を超える悪化を記録したことが分かる(図表6)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2020年08月03日「経済・金融フラッシュ」)

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