2020年05月01日

ユーロ圏GDP(2020年1-3月期)・失業率(3月)-新型コロナで大幅悪化

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:GDPが大幅悪化

4月30日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏GDPの一次速報値(Preliminary Flash Estimate)および失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏19か国GDP(2020年1-3月期、季節調整値)】
前期比は▲3.8%、市場予想1(▲3.8%)と同じ、前期(+0.1%)から低下した(図表1)
前年同月比は▲3.3%、市場予想(▲3.4%)より上振れ、前期(+1.0%)から低下した

【ユーロ圏19か国失業率(2020年3月、季節調整値)】
失業率は7.4%、市場予想(7.8%)より下振れ、前月(7.3%)より悪化した(図表2)
失業者は1215.6万人となり、前月(1195.9万人)から19.7万人増加した

(図表1)ユーロ圏の実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)失業率と国別失業者数
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様。

2.結果の詳細:GDPは内需・外需ともに大幅な悪化が想定される

1-3月期の成長率は前期比でも前年同期比でも▲3%を下回り、新型コロナウィルス(COVID-19)の影響によって大きく落ち込んだことが分かった。3月の1か月間に生産停滞の影響が集中していると想定すると、3月は例月に比べて11.4%程の生産量が消えた形となる2

欧州委員会統計局は、一次速報時点ではヘッドラインの成長率しか公表していないため、国別の落ち込みは現時点では不明だが、同日、フランス国立統計経済研究所(INSEE)、イタリア国家統計局(ISTAT)、スペイン統計局(INE)がそれぞれ各国のGDP成長率(一次速報値)を公表している。これら3か国の成長率は、フランス前期比▲5.8%(前年同期比▲5.4%)、イタリア前期比▲4.7%(前年同期比▲4.8%)、スペイン前期比▲5.2%(前年同期比▲4.1%)となった。

フランスの成長率(前期比)を需要項目別に見ると3、個人消費▲6.0%(前期+0.3%)、政府消費▲2.3%(前期+0.5%)、投資▲11.8%(前期+0.0%)、輸出▲6.5%(前期▲0.0%)、輸入▲5.9%(前期▲0.3%)となった。寄与度では、内需が▲5.7%ポイント(前期▲0.2%ポイント)、外需が▲0.2%ポイント(前期:+0.1%ポイント)となって、内需・外需ともに大きく低迷していることが分かる(図表3)。他国のデータも順次明らかになってくるが、多くの国で内需・外需ともに大幅に落ち込んだと思われる。
(図表3)フランスの実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表4)若年失業率と国別若年失業者数
一方、失業率は7.4%と若干の悪化にとどまった。欧州でロックダウンが本格化したのが、3月中旬以降であった4ため、雇用への影響は限定的だったと言える。25才以下の若年者の失業率は15.8%(前月15.4%)、失業者数は5.2万人の増加となり、失業者の4人に1人は若年層であった。国別には、フランスやスペインでの悪化が全体の失業率を上昇させたことが分かる5(図表4~6)。
(図表5)ユーロ圏の失業率(国別)/(図表6)ユーロ圏の若年失業率(国別)
 
2 2019年10月から2020年2月まではGDPが一定で2020年3月のみ減少したと仮定した場合の計算(前期比▲3.8%から逆算)。
3 INSEEは新型コロナウィルスの影響を反映し推計方法を変更している点、今後修正される可能性が高い点を注意喚起している。
4 ドイツはメルケル首相が3月16日に店舗閉鎖等、22日に接触制限措置等を発表(5月3日まで。4日以降の段階的緩和方針も発表済)、フランスはマクロン大統領が3月12日に外出自粛要請等、16日に17日正午以降の外出制限を実施(5月10日まで。11日以後の段階的緩和方針も発表済)、イタリアはコンテ首相が3月9日に国内全土レベルでの移動制限を発表(5月3日まで。4日以降の段階的に緩和方針も発表済)スペインはサンチェス首相が3月14日に警戒事態宣言を発令した(移動制限や店舗閉鎖等、5月9日まで)。
5 図表5・6では3月のイタリアの失業率が改善(8.4%、前月は9.3%)している点が目立つが、ISTATは求職活動をやめた人が大幅に増加した点を指摘している(失業者の減少26.7万人に対し、15-64才の非労働力は30.1万人増加)。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2020年05月01日「経済・金融フラッシュ」)

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