2020年04月01日

ユーロ圏消費者物価(3月)-下押し圧力強い結果に

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:2か月連続の減速

3月31日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
前年同月比は+0.7%、予想1(同+0.8%)より下振れ、前月(同+1.2%)から減速(図表1)
前月比は+0.5%、予想(同+0.6%)より下振れ、前月(同+0.2%)からは加速
【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2
前年同月比は+1.0%、予想(同+1.1%)より下振れ、前月(同+1.2%)から減速(図表2)
前月比は+1.1%、前月(同+0.4%)からは加速

(図表1)ユーロ圏のHICP上昇率/(図表2)ユーロ圏のHICP上昇率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料もの除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。

2.結果の詳細:飲食料のみ若干高いものの総じて低水準

図表2を見ると、3月のHICPの品目別成長率(前年同期比)は、「サービス」「エネルギーを除く財」「エネルギー」でいずれも減速したことがわかる。OPECプラスによる協調減産の決裂を受けた世界的な原油安の影響を受けて、エネルギー価格が前年同期比▲4.3%、前月比▲3.1%と大幅下落したことが、最も大きな要因となった。加えて、新型コロナウィルス(COVID-19)が猛威を振るっており、感染者数・死亡者数が多いイタリア・スペイン・フランス(図表3)を中心に個人の行動が制限されていることから、財・サービスの価格に幅広く低下圧力がかかっている。

なお、外出制限がなされる中で、むしろ需要が増えると考えられる飲食料については、図表4からわかるように、加工食品・アルコールで前年同月比+2.1%(前月比+0.6%)、未加工食品で前年同月比+3.5%(前月比▲0.5%)と、やや高めの上昇率となっているものの、物価全体を押し上げるほどの強さではない。
(図表3)ユーロ圏のCOVID-19感染者数・死亡者数/(図表4)ユーロ圏の飲食料価格の上昇率と内訳
国別のHICP上昇率では、図表5の通り3月のデータが開示されている17カ国でいずれも前年同期比減速している。前月比上昇率は、イタリア・ポルトガルで高いが、前年同月比での上昇率が低いことからもわかる通り、これらはいずれも季節的な要因によるものであり、足元での物価上昇圧力とは言えない(図表6)。

今後についても、原油価格の低迷とコロナ対策としての需要抑制が続くと予想されるため、しばらくは総じて低水準での推移が続くとみられる。
(図表5)ユーロ圏HICP上昇率(前年同月比)/(図表6)ユーロ圏HICP上昇率(前月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2020年04月01日「経済・金融フラッシュ」)

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