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各国中央銀行、危機対応モードに転換~今後の焦点は財政政策
総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次
1――FRBがゼロ金利・量的緩和再開へ、日銀もETFの購入を倍増
FRBがゼロ金利政策・量的緩和再開を決めた翌日の3/16、日銀は3/18-19に予定していた金融政策決定会合を前倒して開催した。現在マイナス0.1%の政策金利の引き下げは見送ったが、年6兆円の購入目標を掲げる上場投資信託(ETF)は12兆円と目標を倍増した。
先週は「コロナ・ショック」が金融市場に吹き荒れ、各国の株式市場が大きく値を下げた。米国の長期金利は史上初めて1%を割り込み、投資家の先行き不安を表すボラティリティー・インデックス(VIX指数)は急騰した。利回りが高く信用格付けが低いハイ・イールド債に投資するファンドから資金が流出する等、これまで「クレジット・バブル」とも指摘されてきたクレジット市場への懸念も高まっている。新型コロナウイルスや原油の急落に端を発する信用不安、流動性不安を封じ込めるべく、各国中央銀行がどのような対応をとるのか、市場の注目も集まっている。
2――今回の危機対応は厄介
リーマンショックの際には、金融危機に端を発して、その後実体経済に大きく影響が波及した。当初、今回のコロナ・ショックにおいて、感染拡大封じ込めに伴う経済活動の急停止によって実体経済が先んじて悪化し、その後に金融危機のリスクが高まっていくという見立てもあった[図表1]。しかしながら、足もとで流動性危機や信用不安への懸念は急速に高まっている。相次いで打ち出される各国の移動制限や経済活動の自粛によって需要は急速に消滅し、金融危機への恐れは「前倒し」されている(原油価格下落も加わる)。新型コロナウイルス拡大による公衆衛生上の危機、実体経済の悪化、流動性危機、信用不安がすべて重なってしまっている。
3――金融政策の対応では「時間が買えない」、次の主役は財政政策
金融政策は経済改革等を行う上での「時間を買う政策」とも言われる。今回のコロナ・ショックは、各国の中央銀行の政策余地が限られる中、各国とも経済活動が停滞して需要が急速に失われており、もはや金融政策で「時間を買う」ことは難しい。次の主役は財政政策だ。政策決定に時間を有することができないことを前提に、前倒しで政策を決定していくことが極めて重要だ。
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03-3512-1837
(2020年03月16日「研究員の眼」)
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