2020年03月04日

【臨時FOMC】政策金利▲0.5%引き下げを決定。市場は好感せず、催促相場は継続へ

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.金融政策の概要:全会一致で▲0.5%の緊急利下げを決定

連邦公開市場委員会(FOMC)の臨時会合が3月3日(現地時間)に開催され、全会一致で政策金利の▲0.50%ポイントの引き下げが決まった。

今回発表された声明文では、「米国経済のファンダメンタルズは引き続き強い」との判断を示した一方で、「コロナウイルスが経済活動にリスクをもたらす」とし、リスクへの対処として政策金利を引き下げることが示された。また、フォワードガイダンスとして「経済を支えるために手段を用いて適切に行動する」ことが明記されており、追加緩和を示唆する内容となった。

2.金融政策の評価:利下げにも係わらず、株式市場は下落。催促相場で追加緩和は不可避

パウエル議長が2月28日に追加利下げを示唆する緊急声明を発表していたことから、FRBが利下げを決定すること自体は想定されていた。しかしながら、3月17~18日に予定されていた定例会合前に臨時会合で決めたことは予想外であった。これは、3日発表されたG7の財務相・中央銀行総裁による共同声明で、「(新型コロナウイルスが世界経済の成長に与えうる潜在的な影響に鑑み)下方リスクから守るために、全ての適切な政策手段を用いるとの我々のコミットメントを再確認する」としたことを踏まえた措置と言えよう。

パウエル議長の記者会見では、コロナウイルスの感染拡大に対しては多面的な政策対応が必要とし、金融政策ができる役割として緩和的な金融環境を支えることで、消費者や企業の信頼を高めるとしたほか、引き続き経済を支えるために手段を用いて適切に行動するとしており、資本市場が安定しない場合に追加緩和も辞さない姿勢を明確にしている。

もっとも、FRBの追加緩和にも係わらず、3日の米株式市場はダウ指数の下落幅が▲750ドルを上回るなど、前日比で▲3%近い下落となっており、現時点では今回の金融政策変更が資本市場の安定に繋がっていない。

当研究所は、今後の金融政策がコロナウイルスの米国内での感染状況や、資本市場の動向に左右されるものの、足元の資本市場の反応からは、3月の定例会合やその後4月28~29日で追加緩和を余儀なくされる可能性が高い考えている。FRBは米実体経済への影響が不透明な中で今後も難しい選択を迫られよう。

3.声明の概要

(金融政策の方針)
  • (コロナウイルスによる経済活動への)リスクを踏まえ、最大の雇用と物価安定目標の達成を支援するため、連邦公開市場委員会は本日、FF金利の目標レンジを0.5ポイント引き下げ、1.0%-1.25%にすることを決定した。
 
(景気判断)
  • 米国ファンダメンタルズは引き続き強い。しかしながら、コロナウイルスは経済活動にリスクをもたらす。
 
(フォワードガイダンス)
  • 委員会は、経済見通しに対する変化やその影響を注意深く注視しており、経済を支えるために手段を用いて適切に行動する。

4.会見の主なポイント(要旨)

記者会見の主な内容は以下の通り。
 
  • パウエル議長の冒頭発言
    • 米連邦公開市場委員会(FOMC)は本日、フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0.5ポイント下げ、1-1.25%にすると発表した。同僚と私は、経済見通しに対する新たなリスクに直面している米国経済が好調を維持するのを助けるために、この措置をとった。
    • 米国経済のファンダメンタルズは依然として強い。1月のFOMC会合の時点では、引き続き経済成長の見通しは良好であり、金融政策がこの見通しを支持するために良い状況にあると判断していた。
    • それ以降、コロナウイルスの蔓延が新たな課題とリスクをもたらしている。大流行は多くの国の経済活動を混乱させ、金融市場の大きな動きを促した。ウイルスとそれを封じ込めるための対策は、暫くの間、国内外の経済活動を圧迫するとみられる。観光・旅行業界への影響は出始めており、グローバル・サプライチェーンに依存する業界からも懸念の声が上がっている。
    • しかし、全体的な経済への影響の大きさと持続性は依然として極めて不確実であり、状況は流動的である。
    • このような背景から、委員会は米国の見通しに対するリスクが大きく変化したと判断した。これを受けて、我々は金融政策のスタンスを緩和し、経済への支援を強化した。
    • 我々は今後数週間、および数カ月の間、経済見通しに対する変化やその影響を注意深く注視しており、経済を支えるために手段を用いて適切に行動する。
 
  • 主な質疑応答
    • (多くの同僚が経済見通しへの影響を評価するのは時期尚早と語っていた先週から何が変わったのか)ここ数週間で本当に変わったのは、このウイルスがより広範囲に広がっていることだ。ここ米国でも少し広がり始めている。
    • (今回の行動は他の中央銀行との協調行動の一環と捉えていいのか)我々は世界中の中央銀行を継続的に活発な議論を行っている。各国の中央銀行はそれぞれ特定の制度的背景に整合的なことを行っているが、我々は、継続的にお互いに話しあっている。
    • (今回の会合で他の政策手段について検討したのか)検討していない。我々が議論したのは現在の政策スタンスで、それが適当かである。本日は変更することが適当だと判断した。
    • (供給ショックへの対処としては、利下げは適していないのでは)ウイルス感染に対しては多面的な対応を必要とする。その対応は、先ず医療専門家や保健政策の専門家からなされる。対応が適切と判断した場合には、財政当局も加わる。そのほか、多くの公的、民間部門が加わる。しかし、金融政策にも役割がある。金融政策は経済活動全般を支える効果的な手段だ。我々は、政策金利の引き下げによって感染率を低下させたり、壊れたサプライチェーンを修復することはできない。金融政策は緩和的な金融環境を支え、景気を圧迫する金融環境の引き締まりを回避し、家計や企業の信頼を高める。
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2020年03月04日「経済・金融フラッシュ」)

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