2020年02月21日

21年度予算教書-財政赤字・債務削減見込みの実効性に疑問符

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
  1. 19年9月末に終了した19年度の財政赤字は▲9,842億ドル(名目GDP比▲4.6%)となり、15年度から財政赤字の拡大基調が持続している。さらに、20年度の財政赤字見込みも▲1兆834億ドル(同▲4.9%)と更なる拡大が見込まれている。
     
  2. 2月10日に発表された21年度の予算教書では、非国防関連の裁量的経費や、社会保障関連支出の削減などにより、21年度の財政赤字を▲9,661億ドル(同4.1%)に抑制する方針が示された。また、10年後(30年度)の財政赤字も▲2,610億ドル(同▲0.7%)へ削減することを見込んでいる。
     
  3. この結果、債務残高(名目GDP比)は19年度実績の79.2%から30年度は現行の予算関連法を前提にした議会予算局(CBO)の予想(98.3%)や、行政予算管理局(OMB)の予想(78.9%)を大幅に下回る66.1%への低下が見込まれている。
     
  4. もっとも、予算教書やOMBは、非現実的な高い成長率を前提として試算しており、財政赤字や債務残高を過少評価している可能性が高い。当研究所は現実的な成長率に変更した場合に30年度の債務残高は86%程度に悪化すると試算している。
     
  5. 今後、議会で21年度予算審議が本格化するものの、非国防関連の裁量的経費について超党派で議会が合意した金額から大幅な削減が要求されていることや11月に選挙を控え審議時間が限られていることから、予算教書からの大幅な見直しは避けられないだろう。
(図表1)歳出入、財政収支見通し(GDP比)

■目次

1.はじめに
2.財政状況の振り返り
  (財政収支・債務残高):15年以降、財政赤字の拡大基調が持続
3.予算教書の概要
  (財政収支見通し):30年度に名目GDP比▲0.7%を目指す
  (歳出削減の内訳):非国防関係の裁量的経費を大幅に削減
  (主要な提案事項と財政収支への影響):今後10年間累計で4兆6,260億ドルの削減
  (債務残高見通し):30年度に名目GDP比66%まで低下を目指すも実効性に疑問
4.今後の見通し
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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