2019年08月23日

2019年超党派予算法が成立-当面「財政の崖」、米国債デフォルトリスクは回避も、残る連邦政府機関の閉鎖リスク

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
  1. 8月2日に2019年超党派予算法(以下、BBA)が成立した。BBAでは20~21年度の裁量的経費の歳出上限を予算管理法(BCA)で定められた水準から2年度合計で3,200億ドル引き上げることや、連邦政府債務上限の不適用期限を21年7月末までとすることなどが盛り込まれた。
     
  2. BCAは20年度の裁量的経費に対する歳出上限額を前年度から2割程度削減することを求めていたため、大幅な歳出削減(「財政の崖」)による経済への影響が懸念されていた。BBAによって21年度まで「財政の崖」が回避されることが決まった。また、法定債務上限の抵触に伴う米国債デフォルトリスクも、当分の間は回避されることになった。
     
  3. 一方、BBAによって財政規律ルールは一段と形骸化した。また、議会予算局(CBO)はBBAに伴う財政赤字の増加幅を今後10年間で1.7兆ドル、また、足元の金利低下を踏まえても10年後の債務残高(GDP比)はBBA前の92%から95%に上昇すると試算しており、財政状況の悪化に拍車がかかる見込みである。
     
  4. さらに、BBAで予算の大枠は決まったものの、10月の新会計年度開始までに省庁毎の予算配分を決める歳出法案を議会は成立させる必要があり、歳出法案や暫定予算で合意できない場合に連邦政府閉鎖のリスクは残っているため、今後の予算審議が注目される。
(図表1)裁量的経費の歳出上限
■目次

1.はじめに
2.2019年超党派予算法の概要
  (19年度財政見込み)
   :19年度の財政赤字(GDP比)は▲4.5%と12年度以来の高水準に
  (裁量的経費):20年度と21年度合計3,200億ドル引き上げ
  (財政収支への影響):10年間で1.7兆ドルの財政赤字拡大要因
  (財政収支・債務残高見通し):10年後の債務残高(GDP比)は95%に増加
  (連邦政府債務上限):21年7月末まで米国債デフォルトリスクは回避
3.20年度予算編成見通し、注目点
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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