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- ユーロ圏消費者物価(6月)-エネルギー価格は下げ止まり
2020年07月01日
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1.結果の概要:HICPは前月比・前年同月比いずれも加速
6月30日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
【総合指数】
・前年同月比は+0.3%、市場予想1(+0.2%)より上振れ、前月(+0.1%)から加速(図表1)
・前月比は+0.3%、予想(+0.2%)より上振れ、前月(同+0.1%)から加速
【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2】
・前年同月比は+0.8%、予想(+0.8%)通りで、前月(同+0.9%)から減速(図表2)
・前月比は+0.3%、前月(+0.0%)から加速
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料もの除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。
2.結果の詳細:エネルギー価格の下げ止まりが加速に寄与
まず、6月のHICPの品目別成長率を「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」「エネルギー」「食料品(アルコール含む)」の3分類に分けて見る。

次に「エネルギー」を見ると、6月は前年同月比▲9.4%(前月▲11.9%)、前月比+1.7%(前月▲1.7%)となり、原油価格の下げ止まりを受けて上昇に転じた。その結果、前年同月比寄与度は▲0.97ポイント(前月:▲1.20%ポイントま)まで縮小された(前掲図表1・2)。
一方、「飲食料(アルコール含む)」は前月比で▲0.2%(前月は前月比+0.3%)と下落に転じ、前年同月比でも減速傾向にある(図表3)。特に4月に急上昇した未加工食品は前月比▲1.1%と下落傾向を強めている。
全体としてみると、「コア部分」が若干減速、「飲食料」も上昇が一服し、いずれも減速要因だったが、「エネルギー」が下げ止まったことによる上昇圧力(下落要因の剥落)の方が若干大きく、全体の物価指数としては加速することとなった。
5月の国別のHICP上昇率を見ると(図表4・5)、前年同月比では未公表のオーストリアを除く18か国中半分の9か国でマイナス、残り9か国でプラスとなった。一方、前月比では14か国がプラス圏にあり、足もとでは上昇圧力が生じている国の方が多い。6月はウェイトで最大のドイツのインフレ率が比較的高めであったことが全体の加速に寄与している(前年同月比+0.8%、前月比では+0.7%)。
ユーロ圏では原油価格の下げ止まりによって、これまでのようなエネルギー価格主導の物価下落圧力は解消されていると言える。一方で、世界経済の低迷からエネルギー価格の上昇圧力は強くない。ユーロ圏内の需要も弱含んでいるため、財・サービスの価格にも上昇圧力が生じにくい傾向は続くと見られ、引き続きインフレ率はしばらく0%台前半での推移となるだろう。
ユーロ圏では原油価格の下げ止まりによって、これまでのようなエネルギー価格主導の物価下落圧力は解消されていると言える。一方で、世界経済の低迷からエネルギー価格の上昇圧力は強くない。ユーロ圏内の需要も弱含んでいるため、財・サービスの価格にも上昇圧力が生じにくい傾向は続くと見られ、引き続きインフレ率はしばらく0%台前半での推移となるだろう。
3 飲食料も除く。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年07月01日「保険・年金フォーカス」)
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経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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