2020年06月15日

欧州経済見通し-ロックダウンの影響はどれほどか

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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■要旨
  1. コロナ禍前後の状況を振り返ると、2019年末以降、回復基調を維持しつつあった欧州経済だったが、1月に中国で新型コロナウイルスが蔓延して以降、2月には北イタリアでクラスターが発生、3月には域内全体で感染急拡大、それに伴ってロックダウン(都市封鎖)を中心とした封じ込め政策が導入・強化され、内外環境は急速に悪化した。
     
  2. 政府は大規模な雇用支援策と倒産回避策をスピード感をもって打ち出してきた。経済活動の停滞に比して失業率が悪化していないのは、ユーロ圏の雇用調整ペースが遅いという特徴に加えて、政府が打ち出した対策が失業率上昇を抑制している面がある。
     
  3. 経済活動の水準を封じ込め政策との関係で捉えれば、5月以降は封じ込め政策を段階的に緩和し経済再開に舵を切っているため、4月の活動水準(小売売上高で約20%、鉱工業生産で30%弱の落ち込み)がボトムと考えられる。
     
  4. 外部環境を見ると、封じ込め政策を4月から5月にかけて緩和している国が多い。この傾向が続けば、域内・域外ともに同じように経済復興を模索していく形となるだろう。ただし、域外では感染者数の拡大が続いている国も多く、封じ込め政策の緩和傾向が継続するかには注意が必要である。
     
  5. 5月以降は封じ込め政策という「一時的な影響」が緩和されることで経済活動には回復が見られるだろう。しかし感染予防行動は経済活動再開後も続くと見られることから「恒久的な影響」が生じることは避けられず、回復力は非常に弱くなるだろう。
     
  6. ユーロ圏成長率は2020年4-6月期に急減速した後、ゆっくりとした回復基調をたどると見る(図表1・2)。暦年成長率は20年▲8.0%、21年5.1%と予想する。
     
  7. 現環境下ではコロナ禍の先行きの不確実性は相応に高く、ダウンサイドリスクも大きい。
(図表1)ユーロ圏の実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2ユーロ圏の物価・金利見通し)
■目次

1.欧州経済概況・見通し
  ・振り返り:コロナ禍で急減速する経済
  ・振り返り:政府は何をしてきたか
  ・見通しの前提:ロックダウンの影響はどれほどのものだったか
  ・見通し:ポイント
2.物価・金融政策・長期金利の見通し
  ・見通し:物価は低インフレ、金融緩和的な状況が続く
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伊藤 さゆり (いとう さゆり)

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