2020年07月17日

英国雇用関連統計(6月)-無給休業者が50万人も

経済研究部 准主任研究員   高山 武士

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1.結果の概要:失業保険申請は頭打ち

7月16日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【6月】
失業保険申請件数1前月(265.95万件)から2.81万件減の263.14万件となった(図表1)。
申請件数の雇用者数に対する割合は7.3%となり、前月(同7.4%)から下落した。

【5月(3-5月の3か月平均)】
失業率は3.9%で前月(3.9%)から変わらず、市場予想2(4.2%)を下回った。
就業者は3294.8万人で3か月前の3307.3万人から12.5万人の減少となった。
増減数は前月(+0.6万人)から減少したものの、市場予想(▲27.5万人)は上回った。
週平均賃金は、前年同期比▲0.3%で前月(+1.0%)から減速したものの市場予想(▲0.5%)は上回った(図表2)。

(図表1)失業保険申請件数/(図表2)賃金・労働時間の推移
 
1 求職者手当(JSA:Jobseekerʼs Allowance)、国民保険給付(National Insurance credits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは失業保険等申請件数について公式統計とはしておらず実験統計という位置付けで公表している。ただし、公表日の前月のデータを入手できるため、速報性の高さという利点がある。
2 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:失業率は変化なしだが、労働時間・賃金は急速に悪化、無給休業者も

6月の失業保険申請件数は急上昇した4・5月からわずかに減少、申請者数の割合も7.3%と小幅に低下し、悪化に歯止めがかかった。水準自体はまだ高いがコロナ禍による雇用環境の悪化には歯止めがかかったと見られる3

失業保険申請件数と同じく6月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、4-6月の平均求人数は33.3万件で3か月前との差は▲46.3万件と急減した。産業別に見ると、製造業が▲2.7万件、サービス業が▲41.4万件、その他産業が▲2.2万件となり、ほとんどがサービス業での落ち込みとなっている。大幅減だが単月のデータでは下落は止まった4
(図表3)給与取得者データの推移 一方、給与所得者データ5を見ると、6月の給与所得者は2836.4万人で前月差▲7.4万人となり、減少が続いている6(図表3)。ただし、月あたり給与額(中間値)は前年同月比+0.9%と5月(同▲0.9%)から上昇に転じており、最悪期は脱したと言えるだろう7

続いて5月までのデータを確認する。

3-5月の失業率は3.9%となりコロナ禍での急速な悪化は見られなかった。ONSは職探しをやめてしまい非労働力人口となった人数が増えた点に言及しており、データ上も非労働力人口は3か月前から21.3万人の増加、労働参加率は64.1%(12-2月期64.4%)と悪化を示している。
ただし、週次データ(実験統計)を見ると、非労働力人口の上昇よりも一時休業者とカウントされている雇用者の存在が失業率の上昇を抑制している面が大きい(図表4)。

特に今回の調査では一時休業などで仕事を離れている人のうち、給与が全額支給されている人は半数に満たず、約50万人(労働力人口比1.5%程度)はまったく収入がないことが明らかになった。雇用者の一部はほぼ失業状態とも考えられ、雇用環境は失業率以上に悪いと言える(図表5)。
(図表4)英国の雇用統計(週次データ)/(図表5)コロナにより一時休業している人への給与支給状況
賃金関係では、3-5月の平均賃金が前年同期比▲0.3%(実質は▲1.3%)となり、実質だけでなく名目賃金伸び率もマイナスに転じた(前掲図表2)。労働時間は26.6時間(前年同期差▲5.5時間)、フルタイム労働者で31.2時間(同▲6.2時間)となり、賃金・労働時間についてはコロナ禍の影響を受け、大きく悪化している。
 
3 ONSは新型コロナ対策でUCが拡充されたためUC受給水準となった雇用者が多く、失業者と一致しないことを指摘している。
4 未季節調整の原系列(実験統計)で、4月35.8万件(4月3日集計)、5月31.6万件(5月7日集計)、6月33.3万件(6月5日集計)。だだし、最新のオンライン広告件数(実験統計)では、6月26日から7月3日にかけて再び減少しており、増加基調にはない。
5 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した実験統計。直近データは利用可能な情報の85%ほどを集計して算出。
6 雇用維持制度(Job Retention Scheme、10月末まで)により一時休業している従業員は給与所得者としてカウントされるため、雇用維持制度の恩恵を受けられなかった人が一定いると見られる。なお、7月12日時点で同制度の利用者は延べ940万件に達している。
7ONSは給与所得者については、5月以降の傾向として、流出する人(退職など)はむしろ以前より少なくなっており、流入する人(就職など)が減ったことが給与所得者の減少に寄与していることを指摘している。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

(2020年07月17日「経済・金融フラッシュ」)

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