2021年03月30日

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■要旨

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、欧米や日本では、冬場のピーク(第3波)から一時は激減したものの、足下ではリバウンドの兆しが見られ変異ウイルスの広がりもあり、感染の第4波への懸念が高まっており、終息への出口は未だ見えない。一刻も早く治療法が確立され、昨年12月から欧米で始まったワクチン接種が世界に広く行き渡って、できるだけ早い終息を願うばかりだが、ウィズコロナ期にある今、経営者は、アフターコロナ(新型コロナ終息後)の時代を見据えて、従業員の働き方(ワークスタイル)と働く場(ワークプレイス)の在り方をどう考えるべきだろうか。

筆者は従来から、「メインオフィス(本社など本拠となるオフィス)」と「働く環境の多様な選択の自由」の重要性を主張してきたが、コロナ禍を経てもその重要性は全く変わらない、と考えている。この「2つの重要性」は、アフターコロナを見据えた企業経営のニューノーマル(新常態)においても、変えてはいけない「原理原則」であり続ける、と考えたい。

これまで我が国の産業界で、その必要性が叫ばれながら必ずしも普及してこなかった在宅勤務でのテレワークが、コロナ禍の中で緊急避難的に大規模導入されたことを契機に、従業員の働く環境にあまり関心を払ってこなかった経営者にとってさえ、「在宅勤務」「働き方」「オフィス・ワークプレイス」が重要な経営課題のキーワードとして一挙に浮上したのではないだろうか。

そこで本稿と次稿の2編にわたり、コロナ後を見据えた働き方とオフィス戦略の在り方について、事例を交えて詳細に考察することとしたい。まず、前編の本稿では、コロナ禍での在宅勤務の位置付け・課題、コロナ後の人間社会のニューノーマルに関する基本的な考え方、コロナ後の働き方とワークプレイスの原理原則(2つの重要性)、「組織スラック(organizational slack:経営資源の余裕部分)」を備えた経営の重要性、について考察したい。

■目次

1――はじめに
2――緊急事態宣言下で大規模に導入された在宅勤務
  1|コロナ禍での在宅勤務はBCP対策
  2|在宅勤務での生産性格差を是正するサポートが必要
3――コロナ禍で制限されていた人間社会の本来の在り方に立ち返れ!
  1|リアルな場での創造的活動を取り戻すことこそがニューノーマルの在り方
  2|山極京大前総長とメルケル独首相の考え方に学ぶ
4――コロナ後の働き方とワークプレイスの在り方~変えてはいけない原理原則
  1|原理原則(1):メインオフィスの重要性
  2|原理原則(2):働く環境の多様な選択の自由の重要性
5――組織スラックを備えた経営の実践
  1|働き方改革とBCPの推進に向けて短期志向から中長期志向の経営へ
  2|利用率が大幅に下がっているオフィススペースは組織スラックと捉えるべき
  3|在宅と出社の厳格な切り分けは組織スラックを削ぎ落とすことになりかねない
6――前編のまとめ
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社会研究部   上席研究員

百嶋 徹 (ひゃくしま とおる)

研究・専門分野
企業経営、産業競争力、産業政策、イノベーション、企業不動産(CRE)、オフィス戦略、AI・IOT・自動運転、スマートシティ、CSR・ESG経営

経歴
  • 【職歴】
     1985年 株式会社野村総合研究所入社
     1995年 野村アセットマネジメント株式会社出向
     1998年 ニッセイ基礎研究所入社 産業調査部
     2001年 社会研究部門
     2013年7月より現職
     ・明治大学経営学部 特別招聘教授(2014年度~2016年度)
     
    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員
     ・(財)産業研究所・企業経営研究会委員(2007年)
     ・麗澤大学企業倫理研究センター・企業不動産研究会委員(2007年)
     ・国土交通省・合理的なCRE戦略の推進に関する研究会(CRE研究会) ワーキンググループ委員(2007年)
     ・公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会CREマネジメント研究部会委員(2013年~)

    【受賞】
     ・日経金融新聞(現・日経ヴェリタス)及びInstitutional Investor誌 アナリストランキング 素材産業部門 第1位
      (1994年発表)
     ・第1回 日本ファシリティマネジメント大賞 奨励賞受賞(単行本『CRE(企業不動産)戦略と企業経営』)

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レポート紹介

【アフターコロナを見据えた働き方とオフィス戦略の在り方(前編)-メインオフィスの重要性と働く環境の選択の自由を「原理原則」に】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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