2021年03月24日

英国雇用関連統計(2月)-年始のロックダウンで休業者が再び増加 

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:失業率は若干改善

3月23日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【2月】
失業保険申請件数1前月(259.63万件)から8.65万件増の268.28万件となった(図表1)。
申請件数の雇用者数に対する割合は7.5%となり、前月(同7.2%)から上昇した。

【1月(20年11月-21年1月の3か月平均)】
失業率は5.0%で前月(5.1%)から下落、市場予想2(5.2%)を下回った(図表1)。
就業者は3237.4万人で3か月前の3252.2万人から14.7万人の減少となった。
増減数は前月(▲11.4万人)から減少(減少幅の拡大)、市場予想(▲16.7万人)は下回った。
週平均賃金は、前年同期比+4.8%で前月(+4.7%)から改善、市場予想(+4.9%)は下回った(図表2)。

(図表1)英国の失業保険申請件数、失業率/(図表2)賃金・労働時間の推移
 
1 求職者手当(JSA:Jobseekerʼs Allowance)、国民保険給付(National Insurance credits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは失業保険等申請件数について公式統計とはしておらず実験統計という位置付けで公表している。ただし、公表日の前月のデータを入手できるため、速報性の高さという利点がある。
2 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:3回目のロックダウンにより休業者が再び増加

まず、失業保険申請件数と同じく2月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数は20年12-21年2月の平均で60.1万件となった。20年4-6月平均を底に改善が続いていたが、最新値では改善が止まっている(図表3)。

給与所得者データ3を見ると、1月の給与所得者は2832.8万人で前月差+6.8万人となり、昨年12から3か月連続での増加となった(図表4)。ただし、業種別に見ると居住・飲食・芸術・娯楽といったコロナ禍の影響を大きく受けた対面サービス産業については、給与所得者の減少傾向が続いていることが確認できる(図表4)。
(図表3)求人数の変化(要因分解)/(図表4)給与取得者データの推移
流出(退職など)と流入(就職など)のフローの傾向は、流出入ともに改善が頭打ちになる中で、流出数の減少が目立つ形になっている(図表5)。月あたり給与額(中間値)については前年同月比+3.9%で前月の+4.0%とほぼ同じ伸び率だった(図表4)。
(図表5)英国給与所得者の流出入推移/(図表6)英国の雇用統計(週次データ)
次に昨年1月までのデータを確認すると、20年11月-21年1月の失業率は5.0%と改善、失業者も170.3万人に減少した(前掲図表1)。賃金関係では、11-1月の平均賃金が前年同期比+4.8%(実質は+3.9%)と高い伸びを維持している。ただし、ONSはコロナ禍によって低所得の職が失われたことによる賃金の押し上げ効果が約1.6%程度あると指摘している。一方、労働時間は29.9時間(前年同期差▲2.4時間)、フルタイム労働者で34.5時間(同▲2.4時間)となり、労働時間は再び減少傾向に転じている(前掲図表2)。

週次データを見ると、年末年始から休業者が増加していることが分かる(図表6)。政府は今年1月から3回目のロックダウンに踏み切っている。3月8日以降は一部制限が緩和されているものの完全解除までは約4か月かかる計画であり(完全解除は6月21日を予定)、この間、対面サービス産業を中心に事業環境の悪い状況が続くだろう。一方、政府は雇用維持政策を今年9月末まで延長することを決定しており4、当面は政府支援により雇用環境が支えられる状況が続くと見られる。
 
3 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した実験統計。直近データは利用可能な情報の85%ほどを集計して算出。
4 CJRS(Coronavirus Job Retention Scheme)は21年6月までについては昨年8月と同じ水準での支給(月2500ポンドを上限に給与の80%まで支給、社会保障は雇用主負担)、その後21年7月以降は段階的な政府負担の引き下げを予定。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2021年03月24日「経済・金融フラッシュ」)

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