2021年03月08日

米雇用統計(21年2月)-雇用者数(前月比)は+37.9万人と4ヵ月ぶりの高い伸び、市場予想も大幅に上回る

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.結果の概要:雇用者数、失業率ともに前月から改善、市場予想も上回る(失業率は低下)

3月5日、米国労働省(BLS)は2月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+37.9万人の増加1(前月改定値:+16.6万人)と、+4.9万人から大幅に上方修正された前月、市場予想の+20.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大幅に上回った(後掲図表2参照)。2月の雇用増加数は20年10月(+68.0万人)以来、4ヵ月ぶりの水準である。

失業率は6.2%(前月:6.3%、市場予想:6.3%)と前月から▲0.1%ポイント低下、横ばいを見込んだ市場予想も下回った(後継図表6参照)。労働参加率2は61.4%(前月:61.4%、市場予想:61.4%)とこちらは前月、市場予想に一致した(後掲図表5参照)。
 
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

2.結果の評価:新型コロナの感染者数減少や経済活動再開が雇用回復に大きく貢献

2月の非農業部門雇用者数は、これまで新型コロナ感染拡大と感染対策としての経済活動制限で大きな影響を受けた娯楽・宿泊業が前月比+35.5万人の大幅な増加に転じ、雇用回復の大宗を占めた。2月は新型コロナ感染者数の増加ペースが鈍化したほか、一部の州で経済活動の制限が緩和されたことが娯楽・宿泊業の雇用回復に貢献したとみられる。

もっとも、2月は市場予想を大幅に上回ったものの、雇用者数は依然として新型コロナ流行前(20年2月)を950万人弱下回っている。2月の雇用増加ペースが継続した場合に雇用水準が新型コロナ流行前に回復するには25ヵ月を要するため、足元の雇用回復ペースは非常に緩慢である。
(図表1)時間当たり賃金の伸び率 一方、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比が+0.2%(前月改定値:+0.1%、市場予想:+0.2%)と+0.2%から下方修正された前月から上昇した一方、市場予想に一致した。前年同月比は+5.3%(前月改定値:+5.3%、市場予想:+5.3%)と、こちらは+5.4%から下方修正された前月、市場予想に一致した(図表1)。

このようにみると、2月は4ヵ月ぶりに高い雇用増加となったが、昨春の雇用喪失規模に比べて回復ペースは緩慢に留まっていると言えよう。もっとも、3月も新型コロナ感染者数の増加ペースは鈍化しており、ワクチン接種の進捗に伴うソーシャルディスタンシングの解消など経済正常化の動きが続くとみられるほか、追加経済対策に伴う景気押上げも期待できることから、今後は雇用の回復ペースは加速が見込まれる。

3.事業所調査の詳細:娯楽・宿泊が大幅に増加

事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+51.3万人(前月:+10.3万人)と前月から伸びが大幅に加速し、20年10月(+84.7万人)以来の増加幅となった(図表2)。
(図表2)非農業部門雇用者数の増減(業種別) 民間サービス部門の中では、人材派遣業が前月比+5.3万人(前月:+9.6万人)となったこともあり、専門・ビジネスサービスが+6.3万人(前月:+8.5万人)と前月から雇用の伸びが鈍化した。一方、医療・社会扶助サービスが+4.6万人(前月:▲9.6万人)と前月から増加に転じたほか、娯楽・宿泊が+35.5万人(前月:▲2.5万人)と3ヵ月ぶりに大幅な増加に転じ、雇用全体を押し上げた。もっとも、娯楽・宿泊業の雇用者数は新型コロナ流行前(20年2月)を依然として350万人弱下回っており、回復は道半ばである。

財生産部門は前月比▲4.8万人(前月:▲1.3万人)とこちらは2ヵ月連続で減少した。製造業が+2.1万人(前月:▲1.4万人)と前月から増加に転じたものの、建設業が▲6.1万人(前月:+0.1万人)と減少に転じて財生産全体を押し下げた。建設業の雇用減少は2月に大寒波が襲来した影響が大きいとみられる。

一方、政府部門は前月比▲8.6万人(前月:+7.6万人)と前月から減少に転じた。内訳をみると、連邦政府が▲0.3万人(前月:▲2.4万人)と減少したほか、州・地方政府が▲8.3万人(前月:+10.0万人)と前月から大幅な減少に転じて全体を押し下げた。とくに、州・地方政府は教育関連の雇用が州政府で▲3.2万人、地方政府で▲3.7万人減少したことが大きいようだ。
前月(1月)と前々月(12月)の雇用増加数(改定値)は前月が+16.6万人(改定前:+4.9万人)と+11.7万人上方修正された一方、前々月は▲30.6万人(改定前:▲22.7万人)と、こちらは▲7.9万人下方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は+3.8万人の上方修正となった(図表3)。
 
BLSの公表に先立って3月3日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+11.7万人(前月改定値:+19.5万人、市場予想:+20.5万人)と+17.4万人から上方修正された前月、市場予想を下回った。この結果、ADP統計は増加幅が雇用統計を大幅に下回ったほか、雇用統計と異なり前月から雇用の伸びが鈍化する結果となった。
 
2月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が30.01ドル(前月:29.94ドル)となり、前月から+7セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.6時間(前月:34.9時間)と前月から▲0.3時間減少した。この結果、週当たり賃金は1,038.35ドル(前月:1,044.91ドル)と20年6月以来8ヵ月ぶりに前月から減少した(図表4)。2月に労働時間が大幅に減少したのは大寒波の影響とみられる。
(図表3)前月分・前々月分の改定幅/(図表4)民間非農業部門の週当たり賃金伸び率(年率換算、寄与度)

4.家計調査の詳細:労働力人口は小幅な増加に留まり、労働参加率は横這い

家計調査のうち、2月の労働力人口は前月対比で+5.0万人(前月:▲20.6万人)と前月から増加に転じたものの小幅な増加に留まった3。内訳を見ると、失業者数が▲15.8万人(前月:▲58.6万人)と前月に続き減少したものの、就業者数が+20.8万人(前月:+38.1万人)と失業者の減少を上回る増加となって労働力人口を押し上げた。一方、非労働力人口は+1.8万人(前月:+30.4万人)と前月から伸びが鈍化したものの、4ヵ月連続の増加となった。

これらの結果、労働参加率は61.4%と前月から横這いとなった(図表5)。一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率も1月が81.1%(前月:81.1%)とこちらも前月から横這いとなった。男女の内訳は、男性が87.6%(前月:87.7%)と▲0.1%ポイント低下した一方、女性が74.9%(前月:74.8%)と前月から+0.1%上昇するなどマチマチとなった。

一方、2月の失業率は6.2%と20年4月の14.8%からは大幅に低下しているものの、依然として新型コロナ流行前(20年2月)の3.5%は大幅に上回っている水準である。
(図表5)労働参加率の変化(要因分解)/(図表6)失業率の変化(要因分解)
2月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は414.8万人(前月:402.3万人)と前月から+12.5万人増加した。また、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは41.5%(前月:39.5%)と前月から+2.0%ポイント増加した(図表7)。これは12年6月(42.3%)以来の水準である。さらに、平均失業期間は27.6週(前月:26.0週)と前月から+1.6週長期化した。
 
最後に、周辺労働力人口(189.0万人)4や、経済的理由によるパートタイマー(608.8万人)も考慮した広義の失業率(U-6)5は、2月が11.1%(前月:11.1%)と前月から横這いとなった(図表8)。また、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+4.9%ポイント(前月:+4.8%ポイント)と前月から+0.1%ポイント拡大した。
(図表7)失業期間の分布と平均失業期間/(図表8)広義失業率の推移
 
3 2021年から人口推計を変更しているため、2020年と断層が生じている。ここで記載している1月の労働力人口、就業者数、失業者数、非労働力人口はこの断層を調整した後のもの
4 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
5 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2021年03月08日「経済・金融フラッシュ」)

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