2021年01月29日

米GDP(20年10-12月期)-前期比年率+4.0%と前期(同+33.4%)から大幅に低下、市場予想も下回る

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.結果の概要:成長率はプラス成長を維持も前期から大幅に低下、市場予想も下回る

1月28日、米商務省の経済分析局(BEA)は20年10-12月期のGDP統計(1次速報値)を公表した。10-12月期の実質GDP成長率(以下、成長率)は、季節調整済の前期比年率1で+4.0%(前期:+33.4%)とプラス成長となったものの、47年の統計開始以来最大の伸びとなった前期から大幅に低下した(図表1・2)。また、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の同+4.2%も下回った。10-12月期の実質GDPの水準は新型コロナ流行前(19年10-12月期)を依然▲2.5%下回る。

一方、20年通年の成長率は前年比▲3.5%と09年(同▲2.5%)以来11年ぶりのマイナス成長となった。
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)/(図表2)米国のGDP(項目別)
10-12月期の成長率を需要項目別にみると、民間設備投資が前期比年率+13.8%(前期:+22.9%)、住宅投資が+33.5%(前期:+63.0%)と前期から低下したものの、2桁の伸びを維持した一方、個人消費が+2.5%(前期:+41.0%)となり、大幅な低下となった(図表2)。また、在庫投資の成長率寄与度も+1.0%ポイント(前期:+6.6%ポイント)と前期からプラス幅が縮小した。

また、政府支出は前期比年率▲1.2%(前期:▲4.8%)とマイナス幅は縮小したものの、2期連続のマイナス成長となったほか、外需の成長率寄与度も▲1.5ポイント(前期:▲3.2%ポイント)と、こちらも2期連続のマイナスとなって成長を押し下げた。

このように、当期は設備投資や住宅投資は前期から引き続き好調を維持したものの、秋口以降の新型コロナ感染の再拡大や経済対策効果が剥落した影響もあって個人消費の伸びが大幅に鈍化する結果となった。
 
1 以降、本稿では特に断りの無い限り季節調整済の実質値を指すこととする。

2.結果の詳細:

(個人消費・個人所得)可処分所得が2期連続減少、個人消費も大幅に減速
10-12月期の個人消費は、サービス消費が前期比年率+4.0%(前期:+38.0%)とプラス成長を維持した一方、財消費は▲0.4%(前期:+47.2%)と小幅ながらマイナスに転じた(図表3)。財消費では、耐久財が横這い(前期:82.7%)と前期から大幅に伸びが鈍化したほか、非耐久財が▲0.7%(前期:+31.1%)とマイナスに転じた。

耐久財では、自動車・自動車部品が+3.7%(前期:+77.5%)とプラスを維持したものの、家具・家電が▲5.6%(前期:+68.1%)、娯楽・スポーツカーが▲2.4%(前期:+52.0%)と前期からマイナスに転じた。

非耐久財は、衣料・靴が+2.4%(前期:+182.7%)とプラスとなった一方、食料・飲料が▲2.5%(前期:+5.5%)、ガソリン・エネルギーが▲3.9%(前期:+88.5%)とマイナスに転じて消費を押し下げた。

サービス消費は、飲食・宿泊サービスが▲7.7%(前期:+206.2%)、輸送サービスが▲4.9%(前期:+161.1%)と前期に大幅な伸びとなった反動や新型コロナの感染再拡大に伴う一部州での経済活動制限もあってマイナスに転じたほか、住宅・公共料金も▲0.4%(前期:+0.7%)と小幅ながらマイナスに転じた。一方、医療サービスが+12.4%(前期:+90.8%)、娯楽サービスが+12.2%(前期:+225.0%)と2桁の伸びを維持してサービス消費を押し上げた。

実質可処分所得は前期比年率▲9.5%(前期:▲16.3%)と前期からはマイナス幅が縮小したものの、2期連続のマイナスとなった(図表4)。これは失業保険の追加給付などの経済対策の期限切れに伴い、政府からの移転所得が減少したことが大きい。

また、可処分所得の減少を反映して貯蓄率は13.4%(前期:16.0%)と前期から▲2.6%ポイント低下した。もっとも、貯蓄率は新型コロナ流行前(2019年10-12月)の7.3%と比べて依然高止まりしている。
(図表3)米国の実質個人消費支出(寄与度)/(図表4)米国の実質可処分所得伸び率と貯蓄率
(民間投資)資源関連の回復で建設投資が5期ぶりのプラス成長
10-12月期の民間設備投資は前期からの伸びは鈍化したものの、内訳をみると設備機器投資が前期比年率+24.9%(前期:+68.2%)、知的財産投資が+7.5%(前期:+8.4%)とプラスを維持したほか、建設投資が+3.0%(前期:▲17.4%)と5期ぶりのプラスとなり、3分野全てでプラス成長となった(図表5)。
(図表5)米国の実質設備投資(寄与度)と実質住宅投資 建設投資では、製造業が▲6.4%(前期:▲17.1%)、電力・通信が▲14.6%(前期:▲8.0%)、商業・医療が▲7.5%(前期:▲0.6%)と前期に続きマイナス成長が続いたものの、資源関連が+245.9%(前期:▲67.0%)と3桁のプラス成長に転じ、建設投資を押し上げた。

設備機器投資は、産業機器が+24.8%(前期:+18.0%)と前期から伸びが加速した一方、情報処理関連が+16.8%(前期:+48.0%)、輸送機器が+63.9%(前期:+253.8%)と前期から伸びが鈍化した。

知的財産投資では、娯楽・文学等が▲0.4%(前期:▲11.5%)と前期からマイナス幅は縮小したものの、4期連続でマイナスとなったほか、ソフトウエアが+8.2%(前期:+9.8%)、研究・開発が+8.2%(前期:+10.8%)といずれも前期から伸びが鈍化した。

最後に住宅投資は、戸建てが前期比年率+80.8%(前期:+18.1%)と前期から大幅に伸びが加速したほか、集合住宅も+8.8%(前期:+46.9%)と前期から伸びは鈍化したものの、プラス成長を維持した。
(図表6)米国の実質政府支出(寄与度) (政府支出)連邦政府の政策効果剥落から減少
10-12月期の政府支出の内訳は、連邦政府が前期比年率▲0.5%(前期:▲6.2%)、州・地方政府が▲1.7%(前期:▲3.9%)といずれもマイナス幅は縮小したものの、連邦政府が2期連続、州・地方政府は3期連続のマイナス成長となった(図表6)。

連邦政府支出では、国防関連支出が+5.0%(前期:+3.2%)と前期から伸びが加速した一方、非国防支出が▲8.4%(前期:▲18.3%)とマイナス幅は縮小したものの、2期連続のマイナスとなって連邦政府支出を押し下げた。非国防関連支出の減少は中小企業支援策である給与保護プログラム(PPP)や所得補償策の期限切れに伴う補助金の減少などの影響が大きい。
(貿易)輸出入ともに前期から伸びが鈍化
 10-12月期の輸出入は輸出が前期比年率+22.0%(前期:+59.6%)、輸入が+29.5%(前期:+93.1%)といずれも前期から伸びが大幅に鈍化した。当期は外需の成長率寄与度がマイナスとなったが、輸出額に比べて輸入額の伸び鈍化の影響が大きかったことによる。
輸出を仔細にみると、財輸出が前期比年率+31.1%(前期:+104.3%)と3桁の伸びとなった前期の反動もあって伸びが鈍化した一方、サービス輸出は+4.3%(前期:▲0.5%)と4期ぶりにプラスに転じた(図表7)。

財輸出では、工業用原料が+34.2%(前期:+25.6%)と前期から伸びが加速した一方、食料・飲料が+30.7%(前期:+32.8%)、資本財(自動車関連除く)が+29.9%(前期:+62.5%)、消費財(食料、自動車関連除く)が+41.0%(前期:+219.6%)、自動車関連+19.6%(前期:+3,105.5%)といずれも前期の大幅な伸びから軒並み鈍化した。

サービス輸出では、輸送が+44.6%(前期:+43.1%)と小幅ながら伸び加速したほか、旅行が+96.1%(前期:▲44.8%)と4期ぶりにプラスに転じた。

一方、輸入は、財輸入が+30.8%(前期:+110.2%)、サービス輸入が+22.2%(前期:+24.9%)と前期から伸びが鈍化した(図表8)。

財輸入も、工業用原料は+31.2%(前期:+11.8%)と輸出同様に前期から伸びが加速した。一方、自動車関連が+61.6%(前期:+1,812.5%)、消費財(食料、自動車関連除く)が+29.9%(前期:+102.0%)、資本財(自動車関連除く)が+25.8%(前期:+62.8%)、食料・飲料が+8.8%(前期:+35.4%)といずれも前期から伸びが鈍化した。

サービス輸入は、輸送が+74.6%(前期:+116.5%)と前期からは鈍化も高い伸びを維持したほか、旅行が+757.2%(前期:+562.5%)と前期に続いて3桁の伸びとなった。
(図表7)米国の実質輸出(寄与度)/(図表8)米国の実質輸入(寄与度)
(物価・名目値)PCE価格指数は総合、コアともに前期比で伸び鈍化
10-12月期のGDP価格指数は前期比年率+2.0%(前期:+3.5%)と前期から低下したほか、市場予想(同+2.2%)も下回った。この結果、名目GDP成長率は前期比年率+6.0%(前期:+38.3%)となった(図表9)。

一方、FRBが物価の指標として注目するPCE価格指数2は、前期比年率+1.5%、前年同期比+1.2%(前期:+3.7%、+1.2%)と前期比が前期から低下した一方、前年同期比は前期から横ばいとなった(図表10)。また、物価の基調を示す食料品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は、前期比年率+1.4%、前年同期比+1.4%(前期:+3.4%、+1.4%)と、こちらも前期比が低下した一方、前年同期比は横這いとなった。このため、当期は前期に比べて物価上昇圧力が低下したと判断できよう。
(図表9)米国の名目と実質の成長率/(図表10)米国のPCE価格指数伸び率
 
2 現在、FOMCのメンバーは四半期に一度物価見通しを公表しており、そこで物価の指標として採用されている指数がPCE価格指数とコアPCE価格指数である。見通しは年単位で、各年の10-12月期における前年同期比が公表されている。
 
 

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窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
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(2021年01月29日「経済・金融フラッシュ」)

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