2021年02月09日

新型コロナ接触確認アプリ(COCOA)大学生の利用意向は上昇

第3回新型コロナによる暮らしの変化に関する調査(10代編)より

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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厚生労働省による「新型コロナウイルス接触確認アプリCOCOA」は、2月3日現在、ダウンロード数は2,464万件、陽性登録者数は累計10,092件である。ダウンロード数は、日本の人口1億2千万人に対して20%、陽性者の登録は、アプリがリリースされた7月以降の陽性者約36万2千人に対して2.7%程度にとどまっている。利用は少しずつ増加しているものの、利用者数に比べて、陽性登録件数がかなり少ない状況が懸念される。さらに2月3日には、去年9月末以降、一部のスマートフォンの利用者に対し、感染者との濃厚接触があった場合でも検知や通知が行われていなかったことが報じられた。接触確認アプリは、当初の期待に反して、利用者の少なさやトラブルが話題になることが多く、今回のトラブルについても今後の同アプリ利用意向にも影響があるかもしれない。

ニッセイ基礎研究所では、6月末以降、ウィズコロナ・アフターコロナの行動を予測するために、「新型コロナウイルスによる暮らしの変化に関する調査」をインターネット調査にて、継続的に実施している。このデータを使ったこれまでのレポート1において、接触確認アプリ(COCOA)の利用は、新型コロナウイルスの感染への不安があり、行動自粛を行っている人で利用意向があり、「自分の感染予防への効果は期待できなさそう」と考えつつも、「多くの人が利用することで、国内の感染が早く収束する」「濃厚接触通知があった場合に、優先的に検査を受けられる」とアプリを肯定的に捉えていていた。15~19歳を対象に行った調査では、利用意向がある人では、接触確認アプリについて「周囲の人の多くが利用している」「家族や学校・職場等、身近な人に強く推奨されている」と回答しており親しみを感じている人に多いようだった。本稿では、「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査~10代編」の7月調査2、10月調査3、2021年1月調査4のデータを使って、リリースから半年間における、10代の学生の接触確認アプリの利用意向について紹介する。
 
1 村松容子「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)利用意向が強いのはだれか」2020年07月15日、「新型コロナ接触確認アプリ(COCOA)利用意向のある人の評価ポイント」2020年10月16日、「新型コロナ接触確認アプリ(COCOA)利用意向のある人の評価ポイント(10代編)」2020年10月23日、「新型コロナ接触確認アプリ(COCOA) リリースから半年で利用意向はどうか」2021年2月3日
2 2020 年7月3日実施。調査対象は全国に住む 15~19 歳の男女(LINE リサーチのモニタ)。有効回答数 420。
3 2020年10月7~8日実施。調査対象は全国に住む 15~19 歳の男女(LINE リサーチのモニタ)。有効回答数 420。
4 2021年1月5~8日実施。調査対象は全国に住む 15~19 歳の男女(LINE リサーチのモニタ)。有効回答数 418。
 

1――接触確認アプリは、短大・大学生で利用意向が上昇

1――接触確認アプリは、短大・大学生で利用意向が上昇

図表1 接触確認アプリ利用意向の推移 1|「ぜひ利用したい(もう利用している)」は10月以降はわずかな伸び
接触確認アプリを「ぜひ利用したい(もう利用している)」と「場合によっては利用したい」をあわせた利用積極層は、2020年7月調査における47.3%から、10月には41.7%、2021年1月には41.4%と、7月から10月にかけて低下し、10月から翌年1月にかけては横ばいで推移していた(図表1)。「ぜひ利用したい(もう利用している)」は、10月調査で2割を超え、1月調査までの伸びは小さかった。
図表2 「ぜひ利用したい(もう利用している)」の推移 1月調査時点で「利用したことがあるが、現在は利用していない」は5%弱、「知らない・聞いたことがない」は1割程度だった。
 
2|専門学校・短大・大学生生で利用意向は上昇
「ぜひ利用したい(もう利用している)」の割合を属性別にみると、いずれも2020年7月から10月にかけては上昇していたが、10月から2021年1月にかけては、専門学校・短大・大学生のみ引き続き上昇しており、それ以外では、同程度にとどまっていた。





 

2――学生の生活はどの程度変わっているか

2――学生の生活はどの程度変わっているか

短大・大学生の利用意向上昇にはどういった背景があるのだろうか。中学・高校生(中高生)と、専門学校・短大・大学(大学生等)の学生とで、2021年1月における友人関係、学校生活で増えたこと、減ったこと、感じている不安の状況を比較する(図表3)。

まず、友人関係では、「直接会って話す機会」は中高生も大学生等も半数以で減少していた。学校生活では、「教師と直接話す機会の減少」「部活やサークル活動の機会の減少」「オンライン授業の増加」は、中高生でも経験していたが3割未満であったのに対し、大学生等では半数以上が経験していた。コロナウイルス感染拡大にともなう不安については、「自分の感染」や「受験や就職への悪影響」は、中高生も大学生等も同様に感じていたが、「自分が感染源になる」は大学生等で7割弱と、中高生の半数程度と比べて高かった。中高生と比べて大学生等では、特に学校生活において感染拡大前との変化が大きかった。不安についてみると、「自分の感染」「受験や就職への悪影響」は、中高生も大学生等も同程度が不安を感じていたが、「自分が感染源になる」は大学生等で高かった。
図表3 感染拡大前(2020年1月頃)との生活の変化/図表4 生活の変化と利用意向の関係
生活の変化や不安を感じている人の接触確認アプリ利用意向をみると(図表4)、「教師と直接話す機会の減少」「オンライン授業の増加」等の変化があった人で、アプリを「ぜひ利用したい(もう利用している)」と回答する割合が高く、「直接会って話す機会の減少」「部活やサークル活動の機会の減少」等の変化があった人で、「ぜひ利用したい(もう利用している)」または「場合によっては利用したい」といった利用に対して積極的な人が多かった。

また、同居家族でみると、親と同居していない人で「ぜひ利用したい(もう利用している)」が高くなっていた。親と同居していない人はほとんどが大学生等である。
 

3――生活に変化があった学生でアプリ利用意向が高い

3――生活に変化があった学生でアプリ利用意向が高い

15~19歳を対象に行った調査では、中高生と比べて大学生等では、授業のオンライン化、部活機会の減少等の要因により、学校生活が感染拡大前と比べて変わったままの状況にあった。こういった生活の変化がある人ほど、接触確認アプリの利用意向は高い傾向があったことから、大学生の「ぜひ利用したい(もう利用している)」が、上昇し続けている結果となったものと思われる。

若年は新型コロナウイルスに感染しても症状が出ないことがあることから、特に行動範囲が中高生と比べて格段に広い大学生等に対して、「感染源とならないように」といった呼びかけが繰り返されてきたことも影響しているだろう。また、親と同居していない人でアプリ利用意向は高かったことから、自活している大学生等が、アプリ利用も含めて、実行可能な感染拡大対策を実施しようとしていると見受けられる。
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

経歴
  • 【職歴】
     2003年 ニッセイ基礎研究所入社

(2021年02月09日「基礎研レター」)

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