2021年02月08日

オフィス市場は調整色が強まる。コロナ再拡大がホテル・商業の回復に打撃。-不動産クォータリー・レビュー2020年第4四半期

金融研究部 主任研究員   佐久間 誠

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(2) 賃貸マンション
東京23区のマンション賃料は底堅く推移している。三井住友トラスト基礎研究所・アットホームによると、2020年第3四半期は前年比でシングルタイプが+1.5%、コンパクトタイプが+2.9%、ファミリータイプが+6.6%となった(図表-12)。
図表-12 東京23区のマンション賃料
一方、住宅系REITの運用実績をみると、賃貸マンションの需要が弱含んでおり、なかでも都心エリアに近い住居においてその傾向が強い7。住民基本台帳人口移動報告によると、12月の東京都の転入超過数は▲4,648人と6ヶ月連続でマイナスとなり、2020年全体の転入超過数は+31,125人と、前年(+82,982人)から減少した(図表-13)。今回の緊急事態宣言の発令が10都府県において3月7日まで延長されるなか、人口の移動が集中する年度末にかけての動向を注視したい。
図表-13 東京都の転入超過数(月次累計値)
 
7 アドバンス・レジデンス投資法人によると、2020年12月末の首都圏の賃貸マンション稼働率は1月末と比較して▲0.3%低下したのに対して、東京主要7区の稼働率は▲1.8%低下した。
(3) 商業施設・ホテル・物流施設
商業セクターは、引き続きテナントの業態により、明暗が分かれている。商業動態統計などによると、2020年12月の小売販売額(既存店、前年同月比)は百貨店が▲13.0%、コンビニエンスストアが▲4.0%、スーパーが+1.6%となった(図表-14)。百貨店は15カ月連続、コンビニエンスストアは10カ月連続で、前年同月を下回った。一方、スーパーは、昨年9月の消費増税の駆け込み需要の反動で9月の販売額が前年比マイナスになったものの、その後は3ヶ月連続で前年同月を上回っている。
図表-14 百貨店・スーパー・コンビニエンスストアの月次販売額(既存店、前年比)
コロナ禍により甚大なダメージを受けたホテルセクターは、依然として厳しい状況にある。2020年10-12月累計の訪日外国人客数は前年同期比▲98.1%の14.3万人、2020年全体では前年比▲87.1%の411.6万人となった(図表-15)。宿泊旅行統計調査によると、2020年10-12月の延べ宿泊者数は前年同期比▲34.5%減少し、このうち外国人が▲95.6%、日本人が▲19.8%となった(図表-16)。また、STR社によると、全国のホテル稼働率は4月(14.1%)をボトムに11月には55.1%まで回復したが、12月は新型コロナの第3波拡大に伴う「GoToトラベル」キャンペーン中止を受けて再び43.0%に低下している。
図表-15 訪日外国人客数の推移(12ケ月累計、前年同月比は月次ベース)
図表-16 延べ宿泊者数の推移(月次、前年比)
CBREによると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率(2020年12月末)は0.5%(前期比±0%)、実質賃料は4,460円/月坪(前期比+0.9%)となった(図表-17)。EC関連企業の需要が市場拡大を牽引しており、2021年第2四半期までに供給予定の大規模物流施設は既に5割超の面積が内定済みとのことである。また、近畿圏の空室率は3.7%(前期比▲0.3%)、実質賃料は4,020円/月坪(前期比+1.3%)となり、2006年の調査開始以来、初めて4,000円を上回った8
図表-17 大型マルチテナント型物流施設の空室率
 

4. J -REIT(不動産投信)市場・不動産投資市場

4. J -REIT(不動産投信)市場・不動産投資市場

2020年第4四半期の東証REIT指数(配当除き)は、米国の新政権誕生などを受けて景気に対する楽観見通しが強まり株式市場が大きく上昇するなか、J-REIT市場にも資金が流入し9月末比3.3%上昇した。セクター別では、バリュエーション面で割安であったオフィス系REITや商業系REITが買われ、オフィス(+5.8%)と商業・物流等(+2.2%)が上昇した一方で、住宅(▲2.0%)は下落した(図表-18)。12月末時点のバリュエーションは、純資産10.7兆円に保有物件の含み益3.9兆円を加えた14.6兆円に対して時価総額は14.4兆円でNAV倍率は0.98倍、分配金利回りは4.0%で10年国債利回り(0.0%)とのスプレッドは4.0%となった。
図表-18 東証REIT指数(配当除き、2019年12月末=100)
2020年のJ-REIT市場を振り返ると、東証REIT指数(配当除き)は▲16.9%下落し、3年ぶりの下落となった(図表-19)。年初は上昇してスタートしたが、2月下旬以降、新型コロナウイルス感染拡大を受けて急落し、高値からの下落率は一時リーマン・ショック時(2008年)に次ぐ大きさを記録した。その後は上昇に転じたものの、オフィス市況の先行き懸念などを背景に上値の重い展開となった。銘柄数は62社(▲2社)、市場時価総額は14.4兆円(前年比▲12%)に減少したものの、新規の物件取得が順調に進み、運用資産額(取得額ベース)は20.3兆円(前年比+6%)と過去最高を更新した。業績面では、ホテルを中心に変動賃料収入が剥落したことなどから市場全体の予想1口当たり分配金は前年比▲7%減少した一方で、保有不動産の評価額は概ね横ばいとなり1口当たりNAVは前年比+1%増加した。
図表-19 2020年のJ-REIT市場(まとめ)
また、J-REITによる物件取得額は1兆3,932億円(前年比▲2%)となり例年並みの水準を確保した。アセットタイプ別では、投資口価格が堅調で物件の取得パイプラインが豊富な物流施設(6,204億円、45%)が最大で、次いでオフィスビル(3,488億円、25%)、住宅(2,117億円、15%)の順となった(図表-20)。デットの調達環境も引き続き良好で、投資法人債の発行金額は1,643億円(平均期間9.3年、平均利率0.54%)となった。
図表-20  J-REITによるアセットタイプ別の取得割合
 
 

(ご注意)本稿記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本稿は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
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金融研究部   主任研究員

佐久間 誠 (さくま まこと)

研究・専門分野
不動産市場、金融市場、不動産テック

(2021年02月08日「不動産投資レポート」)

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