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- 現在の景況感は見解分かれる。見通しはやや悲観的に~価格は既にピークとの回答が最多。物流施設やデータセンターの選好が高まる。リスクは国内要因に集まる-第17回不動産市況アンケート結果
現在の景況感は見解分かれる。見通しはやや悲観的に~価格は既にピークとの回答が最多。物流施設やデータセンターの選好が高まる。リスクは国内要因に集まる-第17回不動産市況アンケート結果

金融研究部 主任研究員 吉田 資
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アンケートの概要
- 調査対象;不動産・建設、商社、金融・保険、不動産仲介、不動産管理、不動産鑑定、
不動産ファンド運用、不動産投資顧問・コンサルタント、不動産調査・研究・出版、
不動産に関連する格付、などに携わる実務家および専門家。
- アンケート送付数;201名
- 回答者数;121名(回収率;60.2%)
- 調査時期;2021年1月18日から1月22日
- 調査方法;Eメールによる調査票の送付・回収
アンケート回答者の属性(所属先内訳)は、「不動産ファンド運用・不動産投資顧問」(23.1%)が最も多く、次いで、「不動産・建設・商社」(20.7%)、「不動産仲介・管理・鑑定」(19.8%)、「その他不動産関連サービス(不動産調査・研究・出版、不動産に関する格付など)」(19.8%)、「金融・保険」(16.5%)であった。回答者の属性に大きな偏りは見られず、本アンケートは不動産市況の実態
に関して、属性による偏りを概ね排除していると考えられる。
アンケートの結果
(1) 現在の景況感
「不動産投資市場全体(物件売買、新規開発、ファンド組成)の現在の景況感」について質問したところ、「平常・普通」との回答が約4割、プラスの回答(「良い」と「やや良い」の合計)が3割強、マイナスの回答(「悪い」と「やや悪い」の合計)が2割強となった(図表-1)。第10回調査(2013年末)から前回調査(2020年初)までプラスの回答(「良い」と「やや良い」の合計)が7割以上を占めていたが、今回はプラスの回答が大幅に減り、「平常・普通」の回答がその分増える結果となった。
未だ終息の見えないコロナ禍による経済活動停滞の影響は幅広い分野に及んでおり、不動産市場でも、ホテルや商業セクターの売り上げが大幅に減少するなどダメージが顕在化している。一方で、CBRE「インベストメントマーケットビュー」(2020年第3四半期)によれば、2020年の国内不動産投資額(第3四半期までの累計)は前年比3%増加の2.6兆円となり、昨年から大きな変化は見られない。実体経済と金融市場、賃貸市場と投資市場の乖離が広がり、セクター間で景況感が大きく異なるなか、不動産分野の実務家・専門家の間でも景況感に対する見方が分かれている。
1 「景況見通しDI」の算出式;(「やや良くなる」+「良くなる」)-(「やや悪くなる」+「悪くなる」)[単位は回答割合(%)]
(1) 概況
「今後、価格上昇や市場拡大が期待できる投資セクター(証券化商品含む)」について質問したところ、「物流施設」(85%)との回答が最も多く、次いで「産業関係施設(データセンターなど)」(59%)、「賃貸マンション」(38%)、「エネルギー関連施設(太陽光発電施設など)」(30%)との回答が多かった(図表-4)。
「物流施設」に関して、ネット通販関連貨物の増加に伴い、EC 関連企業は物流拠点の拡大に積極的で、首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率は0.5%と、過去最低値を更新した(2020年第3四半期・CBRE調べ)。賃料も緩やかに上昇しており、実務家・専門家の期待が高まっている。
「産業関連施設」に含まれるデータセンターは、今や社会インフラとなった各種クラウドサービスや動画等のコンテンツ配信サービスの提供・配信基盤であり、クラウドサービスやコンテンツの成長に伴い、社会インフラとしての重要度が増している。総務省「情報通信白書」によれば、データセンターの市場規模(アジア太平洋地区)は年率7%程度のペースで拡大する見通しである。日本でもデータセンター市場の成長期待が高まっている。
「賃貸マンション」に関して、CBRE「インベストメントマーケットビュー」(2020年第3四半期)によれば、国内での不動産投資額(第3四半期までの累計)に占める住宅の割合は、18%(前年比+11%)と大幅に増加した。賃貸住宅は、他のセクターと比較して賃料変動が小さく安定収益を志向する投資家の関心が高まっている。
一方、「アウトレットモール」(2%)、「リゾート施設」(2%)、「都市型商業ビル」(2%)を期待する回答は、下位に留まった。
前回調査から回答割合が10%以上増加した投資セクター(期待が高まった投資セクター)は、「物流施設」(56%→85%)、「産業関係施設(データセンターなど)」(24%→59%)、「賃貸マンション」(22%→38%)、「エネルギー関連施設(太陽光発電施設など)」(6%→30%)であった(図表-5)。
これに対して、前回調査から回答割合が10%以上減少した投資セクター(期待が後退した投資セクター)は、「オフィスビル」(53%→14%)、「海外不動産」(24%→7%)、「ホテル」(17%→5%)であった(図表-5)。
「オフィスビル」について、2020年4月の非常事態宣言発令後、テナントの誘致に時間を要し空室率が上昇に転じている。三鬼商事によれば、東京都心5区の空室率(2020年12月)は4.5%(前年比+2.9%)と大幅に上昇した。募集賃料も21,999円(前年比▲0.9%)と下落傾向にある。
「海外不動産」は、前回調査では、国内不動産の高値警戒感や、グローバル分散投資のニーズなどを背景に、投資家の関心が高まっていた。日本経済新聞社によれば、人口10万人あたりの新型コロナウィルス感染者数(2020年1月27日時点)は、日本が298人であるのに対し、米国は7,724人、英国は5,488人となっている。欧米諸国は感染状況がより深刻であり、不動産市場への悪影響が大きいとの見方がある。
「ホテル」について、日本政府観光局によれば、2020年の年間訪日外国人数は412万人(前年比▲87%)と急減した。オータパブリケイションズの調査によれば、全国の平均客室稼働率(2020年10月)は52.7%(前年同月比▲29.4%)と低迷している。
(2021年02月02日「不動産投資レポート」)
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03-3512-1861
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
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