- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 日本経済 >
- さくらレポート(2021年1月)~景気は持ち直しているが、先行きに慎重
1.全9地域中3地域で景気判断を引き上げ、1地域で判断を引き下げ
2.業況判断は全地域で改善も、先行きは慎重
前回調査からの改善幅をみると、東海が+19ポイントと最も大きい。次いで中国や北陸(それぞれ+17ポイント。+15ポイント)が大きくなった。一方、さくらレポートで唯一景気の総括判断が引き下げられた北海道は+9ポイントと最も低い伸びにとどまった。さくらレポートの需要項目別等の判断をみると、東海は生産と輸出が増加基調にあり、設備投資が横ばい圏内となっており、他地域と比べると底堅さを確認できる。他方、北海度は個人消費の持ち直しペースが鈍化し、設備投資が減少しており、内需の弱さが確認された。
先行き(2021年3月)については、全地域で今回調査からの悪化を見込んでおり、先行きに対してはどの地域でも慎重な見方をしている。調査時期である2020年11月中旬~12月上旬は、新型コロナウイルスの感染第3波が広がっていたことや、「Go To キャンペーン事業」の一時停止などを受けて警戒ムードが漂っていたためと考えられる。ただし、足元では新型コロナウイルスの感染者数がさらに増加しており、2021年に入った後には1都3県で緊急事態宣言が再発令され、13日には7府県が対象地域に追加された。これらの地域にとどまらず、その他の地域においても経済活動は停滞し、3月のDIは予測時点よりも下振れるとみられる。また、今後も新型コロナウイルスの感染拡大による悪影響が長引けば、次回の地域経済報告(さくらレポート、2021年4月)では景気判断が下方修正される地域が増える可能性もあるだろう。
3.製造業の業況判断は全地域で改善、先行きは方向感にばらつき
世界的な経済活動の再開を受けた輸出の回復や、国内外での自動車需要の回復などを背景として明確な改善が示された。特に自動車産業と関連が深い鉄鋼や非鉄金属のほか、電気機械などで改善が目立った。
前回調査からの改善幅は、東海(+27ポイント)が最大となり、次いで東北、中国(+23ポイント)が高い。東北では、鉄鋼(+57ポイント)や非鉄金属(+43ポイント)が大きく改善した。一方、近畿では食料品(▲2ポイント)や紙・パルプ(▲6ポイント)など前回調査から悪化している業種もみられ、DIの水準は▲24と他の地域よりもやや低い。
先行きについては、関東甲信越、北陸の2地域で今回調査から改善が見込まれている一方、北海道などの6地域では悪化を見込んでおり、方向感にはばらつきがみられる(近畿は横ばい)。海外における新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて輸出は減速することが見込まれるほか、国内需要が弱い動きとなることで生産の持ち直しは一服するとみられる。ただし、調査時点から新型コロナウイルスの感染拡大傾向が強まっており、足元では緊急事態宣言が再発令された。2020年の緊急事態宣言と比べると経済活動の制限範囲は限定的であるものの、製造業の景況感は予測よりも下振れる可能性があるだろう。
日銀短観12月調査では、直近の為替変動を反映し、2020年度の想定為替レート(全規模製造業ベース)が106.74円と9月調査時点(107.25円)から円高方向に修正されている。足元の実勢(104円台前半)よりも円安水準にあることから、円高の進行の織り込みが遅れている可能性が高い。製造業への下押し圧力は非常に強い状態にあるといえる。
4.非製造業の業況判断は全地域で改善も、先行きは結果以上に悪化か
業種別では、「Go To キャンペーン事業」による需要押し上げの効果もあり、宿泊・飲食サービス業や対個人サービスが前回調査から大幅に改善した。ただし、これまでこれらの業種の牽引役となっていた訪日外国人旅行客によるインバウンド消費はほぼ消滅しており、DIの水準は平時と比べて非常に低い。また、小売なども大きく改善し、DIの水準は景気が「良い」と「悪い」の境目である0を上回る地域が優勢になっている。
前回調査からの改善幅は、中国が+14ポイントと最大となり、北陸と九州・沖縄が+13ポイントと続いている。中国では、宿泊・飲食サービスが+61ポイント、対個人サービスが+15ポイントと大幅な改善を見込んでいる。北陸では、宿泊・飲食サービスが+63ポイントと改善する一方、対個人サービスは▲11ポイントと全国で唯一の悪化を見込んでおり、回復が遅れている。
先行きについては、全9地域とも悪化を見込んでいる。調査時点では、新型コロナウイルスの感染が拡大していたほか、Go To トラベル事業の一時停止などもあり、先行きへの警戒感が燻っていたためと考えられる。特に新型コロナウイルスの影響を強く受ける宿泊・飲食サービスで大幅な悪化(▲20~▲45程度)が見込まれている。ただし、足元では新型コロナウイルスの感染がさらに拡大しており、Go To トラベル事業は全国で一斉停止となったほか、緊急事態宣言の発令に伴い飲食店は営業時間の短縮を余儀なくされている。予測時点では足元の状況が反映されていないため、宿泊・飲食サービスや対個人サービスを中心に、非製造業の景況感は製造業よりも大きく下振れる可能性が高いだろう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2021年01月14日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ
藤原 光汰
研究・専門分野
藤原 光汰のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2021/09/30 | ニッセイ景況アンケート調査結果-2021年度調査 | 藤原 光汰 | ニッセイ景況アンケート |
2021/09/13 | 企業物価指数(2021年8月)―上昇率は高水準も、前月から0.1ポイント縮小 | 藤原 光汰 | 経済・金融フラッシュ |
2021/08/27 | 鈍る緊急事態宣言への反応 | 藤原 光汰 | 研究員の眼 |
2021/08/12 | 企業物価指数(2021年7月)―前月から上昇率がさらに拡大。高水準が続く | 藤原 光汰 | 経済・金融フラッシュ |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2025年01月14日
今週のレポート・コラムまとめ【1/7-1/10発行分】 -
2025年01月10日
外国株式ファンド以外が売れず‼~2024年12月の投信動向~ -
2025年01月10日
2025年から大きく変わる韓国の労働関連政策のポイント -
2025年01月10日
開かれるプライベートアセットへの投資機会 -
2025年01月09日
2025年の原油相場見通し~トランプ政権始動の影響は?
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【さくらレポート(2021年1月)~景気は持ち直しているが、先行きに慎重】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
さくらレポート(2021年1月)~景気は持ち直しているが、先行きに慎重のレポート Topへ