2021年01月13日

景気ウォッチャー調査(20年12月)~感染拡大で、現状は前月から更に悪化。飲食・サービスの景況感悪化が顕著~

経済研究部 准主任研究員   山下 大輔

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1.景気の現状判断DIは2か月連続で更に悪化も、先行き判断DIはほぼ横ばい

1月12日に内閣府が公表した2020年12月の景気ウォッチャー調査(調査期間:12月25日~31日)によると、3か月前との比較による景気の現状判断DI(季節調整値)は35.5と前月から10.1ポイント下落した。前月からの落ち込みが10ポイントを超えるのは2020年3月以来である。他方で、2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は37.1と前月から0.6ポイント上昇した。
現状判断DI・先行き判断DIの推移 また、地域別でみると、現状判断DI(季節調整値)は、全国12地域の全てで前月よりも悪化した一方、先行き判断DI(季節調整値)は8地域が上昇に転じた(下落したのは東北、南関東、北陸、中国の4地域)。現状、先行きともにDIの低下幅が最も大きかったのは中国で、現状の低下幅が最も小さかったのは北海道、先行きの上昇幅が最も大きかったのは近畿であった。従前に比べて調査期間中には感染状況に落ち着きがみられた北海道や近畿は相対的に景況感が悪化しなかった一方、急激な感染拡大に見舞われた地域は総じて景況感が悪化した。
今回の結果からは、このところの新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、前月に引き続き、景況感が急速に悪化していることが示された。ただし、12月調査(調査期間:12月25日~31日)には、1月7日に首都圏の1都3県に発出された緊急事態宣言の影響が含まれていないことに留意する必要がある。なお、景気の水準自体に対する判断を示す現状水準判断DI(季節調整値)についても30.0(前月差▲7.1ポイント)となり、2か月連続で低下した。
地域別現状判断DI・先行き判断DIの前月差/現状判断DIと現状水準判断DIの比較

2.景気の現状判断DI(季節調整値):全ての内訳で前月より悪化

現状判断DI・回答者構成比 現状判断DI(季節調整値)は、4月に7.9まで落ち込んだ後に、5月から6か月連続で改善し、10月には50を超えた。その後の感染拡大により、11月から下落に転じた。景気の現状判断DIの回答者構成比をみても、悪化と回答した割合(「悪くなっている」と「やや悪くなっている」の回答の合計)(11月:34.8%→12月:50.3%)が増加して全体の半数を超えた一方で、改善と回答した割合(「良くなっている」と「やや良くなっている」の回答の合計)(11月:27.0%→12月:14.6%)や現状維持(「変わらない」)と回答した割合(11月:38.2%→12月:35.1%)は減少しており、景況感の悪化が鮮明となっている。
現状判断DI(季節調整値)の内訳においても、家計動向関連(前月差▲11.4ポイント)、企業動向関連(同▲6.6ポイント)、雇用関連(同▲8.3ポイント)の全てで、前月から引き続いて悪化した。また、家計動向関連の内訳をみても、小売関連(前月差▲6.7ポイント)、飲食関連(同▲20.5ポイント)、サービス関連(同▲19.9ポイント)、住宅関連(同▲6.5 ポイント)の全てで悪化しており、飲食やサービスの悪化度合いが特に大きかった。感染拡大に伴う営業時間の短縮要請やGo To Eatの利用自粛、Go To Travelの停止決定などの影響が強く表れた。また、企業動向関連の内訳においても、製造業(前月差▲2.0ポイント)、非製造業(同▲9.7ポイント)の双方で2か月連続で悪化した。
現状判断DIの内訳の推移/現状判断DI(家計動向関連)の内訳の推移
回答者のコメントからは、感染拡大やGo To Travelキャンペーンの一時停止の影響への言及が多々見られた。また、感染拡大に伴う在宅勤務の増加を反映した需要増加への言及もあった。

<Go To Travelキャンペーンの一時停止の影響に関する主なコメント>
  • Go To Travelキャンペーンの一時停止によりキャンセルが相次ぎ、残る仕事がほぼない。従業員も半数が解雇される予定である。(南関東・旅行代理店)
  • 大都市でのGo To Travelキャンペーン停止に続き、全国でも1月11日まで停止され、宿泊は緊急事態宣言時より悪い。レストランは、県による21時までの時短要請もあり、クリスマス、新年の予約が激減している。宴会は、12~1月はほぼキャンセルである。(東海・都市型ホテル)
  • Go To Travelキャンペーンや、新型コロナウイルスの感染が少し落ち着いていたなかで、3か月前より客が戻りつつあったが、今月はGo To Travelキャンペーンの一時停止の発表や全国的な感染拡大の影響もあり、前年同期と比べて客の利用は大幅に減少している。(北陸・テーマパーク)
 
<感染拡大に伴う在宅時間の増加を反映した需要増加に関する主なコメント>
  • 新型コロナウイルスの感染拡大に連動して、インターネット契約は伸びている。テレワークや遠隔授業の影響で、1ギガバイト以上といった通信容量の大きな回線への切替えが進んでいる。(近畿・通信会社)
  • コロナ禍のなかで、空気清浄機や加湿器などがとても売れている。また、家に籠もるという巣籠り的な需要で大型テレビも売れているので、例年にない部分ではプラスになっている。(東北・家電量販店)
  • クリスマス、年末年始関連商品の動きが好調である。新型コロナウイルス禍で、客が外食を控えたり、巣籠りしたり、年末年始の帰省を中止したりしているため、内食需要が堅調であり、特におせちは好調である。(中国・スーパー)
  • 新型コロナウイルスの影響で、年末に外出を控える人が家で時間を過ごすために本を買っている。(四国・一般小売店[書籍])
 
<その他の特徴的なコメント>
  • 新型コロナウイルスに振り回された1年である。葬儀業界もコロナが収まれば、以前に戻るだろうと考えている人もいるが、実は今の状態は10~15年後に起きることを先に見ているだけである。少子化で後を見てくれる人がおらず、親戚もいなくなった状態で葬儀が行われるという状況である。また、お金を使わなくても葬儀はできるということを皆が知ってしまった。(甲信越・その他サービス[葬祭業])
  • 12月は最も繁忙期であるが、新型コロナウイルスの影響で厳しい状況の上に、鳥インフルエンザ発生で原料となる鶏が入らず、2重のマイナス要因となっている。売上も計画に対して80%を下回りそうな状況である。しかしながら、量販店を中心とした販売は伸びており、お歳暮等のギフトは前年比20%増になる予定である。(九州・農林水産業)
  • エッセンシャルワーカーである建物清掃従事者は、新型コロナウイルス禍に関係なく業務を遂行しているが、人手不足が深刻で、労働力確保のためにコストが上がっている。新規物件についてはある程度納得できる金額で契約できるが、既存契約は値上げができず、年5日の有給休暇取得義務も加わり、赤字現場が増えてきている。(南関東(東京都)・その他サービス業[ビルメンテナンス])

3.景気の先行き判断DI(季節調整値):全体としてほぼ横ばい(悪化状況は継続)

2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は、7月に感染拡大への懸念で大きく落ち込んだ後に、8月から10月まで3か月連続で上昇し、前月に上昇は止まったが、今月は再び上昇した。ただし、上昇幅は小さく、ほぼ横ばいである。
先行き判断DI・回答者構成比 景気の先行き判断DIの回答者構成比でみても、悪化と回答した割合(「悪くなる」と「やや悪くなる」の回答の合計)(11月:50.6%→12月:49.1%)と微減である一方で、改善と回答した割合(「良くなる」と「やや良くなる」の回答の合計)(11月:10.4%→12月:11.5%)や現状維持(「変わらない」)と回答した割合(11月:39.0 →12月:39.4%)は微増となっており、前月と傾向は変わっておらず、悪化した状態が継続しているといえる。
先行き判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連(前月差+1.1ポイント)、企業動向関連(同+0.3ポイント)は上昇する一方で、雇用関連(同▲0.9ポイント)は低下した。家計動向関連や企業動向関連が上昇した理由について、回答者のコメントからは、ワクチンの接種開始に対する期待、Go To Travelキャンペーンなどの各種政策の再開への期待などが背景にあったようだ。なお、家計動向関連の内訳をみると、住宅関連は前月から2.6ポイント低下したものの、小売関連(前月差+0.5ポイント)、飲食関連(同+5.8ポイント)、サービス関連(同+1.6ポイント)は上昇した。企業動向関連の内訳でも、製造業(前月差+0.8ポイント)、非製造業(前月差+0.3ポイント)の両方で前月より上昇した。
先行き判断DIの内訳の推移/先行き判断DI(家計動向関連)の内訳の推移
回答者のコメントからは、これまでの調査と同様に、感染拡大に伴う今後の先行きへの懸念が強く伺われた。他方、上述のように、ワクチンの接種開始に対する期待、Go To Travelキャンペーンなどの各種政策の再開への期待の声もみられた。

<感染拡大に伴う今後の先行きへの懸念に関する主なコメント>
  • 新型コロナウイルスの収束に向けた道筋や時期がはっきりと見通せないことに加えて、実体経済への負の影響も明らかになってきていることなどから、企業が将来に向けた投資に消極的になることが見込まれるため、この先の景況感はやや悪くなる。(北海道・通信業)
  • 新型コロナウイルス感染者が増加してGo Toキャンペーンも一時停止となり、経済の停滞が懸念される。大雪の影響も予測され、不安しかない。(東北・スーパー)
  • Go To Travelキャンペーンの一時停止決定により、雇用調整助成金の相談が増加傾向にあり、その相談内容も深刻になってきており、経済の冷え込みが感じられる。(沖縄・職業安定所)
<政策効果やワクチン開発などに対する期待に関する主なコメント>
  • 政府の新型コロナウイルス対策及びワクチンの効果により、将来は景気が良くなると考える。(東海・一般小売店)
  • Go To Travelキャンペーンが再開すれば、ゴールデンウィークの需要を含めて、販売量に必ず良い影響が出る。(北陸・旅行代理店)
  • ワクチン接種の開始や、東京オリンピック・パラリンピックがどんな形であれ開催されるという状況になれば、ようやく明るい兆しが見える。とにかく感染者数が減少していくことを願うばかりである。(東北・広告業協会)
  • 年末に向け、新型コロナウイルス感染のピークに向かおうとしているが、年末年始の自粛要請で峠は越えられるのではないか。そもそも客単価や購入点数はある程度安定しているので、あとの問題は街に人出が戻るかだけである。2~3か月先には若干なりとも来客数は増加するとみている。(東北・コンビニ)
  • ワクチンの効果が現れるのは早くとも初夏以降になるとみており、まだまだ油断のできない状況が続く。この年末年始の我慢とワクチンの相乗効果での早期収束を願うばかりである。新型コロナウイルスの収束に先行きがみえない限り、経済対策を打っても効果はないと断言できる。(北海道・商店街)

12月調査の結果は、このところの新型コロナウイルス感染症の急激な感染拡大により、感染拡大に伴う営業時間の短縮要請やGo To Eatの利用自粛、Go To Travelの停止などが実施されたことで、飲食やサービスを中心として現状の景況感が著しく悪化していることを示すものであった。来月の調査(2月8日公表予定、調査期間:1月25日~31日)では、1月7日に首都圏の1都3県に発出された緊急事態宣言(実施期間:1月8日~2月7日)の影響などにより、現状の景況感は更に悪化する可能性が高いだろう。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

山下 大輔 (やました だいすけ)

研究・専門分野
日本経済

(2021年01月13日「経済・金融フラッシュ」)

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