2021年01月14日

企業物価指数(2020年12月)―前年比でマイナス幅は徐々に縮小へ

藤原 光汰

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1.原油価格の持ち直しが国内企業物価を押し上げ

1月14日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、20年12月の国内企業物価は前年比▲2.0%(11月:同▲2.3%)と10ヵ月連続のマイナスとなり、事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲2.2%、当社予想は同▲2.0%)を上回る結果となった。また、消費税を除いたベースでは11ヵ月連続のマイナスとなった。

内外の経済活動の持ち直しに伴い、非鉄金属が前年比10.4%(11月:前年比7.9%)、スクラップ類が同33.0%(11月:同17.5%)と前月から伸びを高めたほか、原油価格の持ち直しを受けて、石油・石炭製品のマイナス幅が縮小(11月:前年比▲18.4%→12月:前年比▲16.5%)したことなどにより、国内企業物価の下落幅は前月よりも縮小した。

国内企業物価は前月比では0.5%(11月:同▲0.1%)と4ヵ月ぶりに上昇した。前月比で内訳をみると、ガソリン(11月:前月比▲0.9%→12月:前月比4.0%)、灯油(11月:同▲2.3%→12月:同9.1%)、軽油(11月:同▲2.0%→12月:同8.6%)などがプラスに転じたことにより、石油・石炭製品が前月比4.7%(11月:同▲1.0%)と3ヵ月ぶりの上昇となった。国内企業物価に対する寄与度は0.25%ptとなり、全体の押し上げ幅の約半分を占めている。また、非鉄金属(11月:前月比1.2%→12月:前月比3.8%)やスクラップ類(11月:同5.3%→12月:同18.8%)、農林水産物(11月:同0.5%→12月:同1.3%)などの上昇幅が拡大した。一方、既往の原油安を受けて、電力・都市ガス・水道は前月比▲1.1%(11月:同▲1.9%)と5ヵ月連続のマイナスとなった。
国内企業物価指数(前年比・前月比)の推移/国内企業物価指数の前年比寄与度分解

2.輸入物価(前月比)は2ヵ月連続のプラス

20年12月の輸入物価は、契約通貨ベースでは前月比2.2%(11月:同1.2%)と2ヵ月連続のプラスとなった。一方、12月の円相場は前月比▲0.5%の円高水準となったことから、円ベースでは前月比1.9%(11月:同0.5%)と契約通貨ベースの伸びを下回った。
輸入物価指数変化率の要因分解(契約通貨ベース) 契約通貨ベースで輸入物価の内訳をみると、原油が前月比7.3%(11月:同▲4.4%)と3ヵ月ぶりの上昇となったほか、液化天然ガスの高い伸びが継続(11月:同10.4%→12月:同10.5%)したことなどを受けて、石油・石炭・天然ガスが前月比6.4%(11月:同0.9%)と上昇幅を大きく拡大させた。そのほか、鉄鋼(11月:前月比1.2%→12月:前月比5.2%)や非鉄金属(11月:同1.6%→12月:同4.7%)などの上昇により、金属・同製品は前月比3.6%(11月:同5.4%)と7ヵ月連続のプラスとなった。

3.国内企業物価のマイナス幅は徐々に縮小へ

20年12月の需要段階別指数(国内品+輸入品)をみると、素原材料が前年比▲15.8%(11月:同▲17.9%)、中間財が前年比▲3.2%(11月:同▲3.5%)、最終財が前年比▲1.4%(11月:同▲1.6%)となり、すべての需要段階で下落幅が縮小した。素原材料の下落幅は緩やかな縮小を続けており、今後も時間をかけて中間財、最終財の価格に波及していくとみられる。

また、消費者物価(生鮮食品を除く総合)と関連性の高い消費財は前年比▲1.6%(11月:同▲1.7%)と20ヵ月連続のマイナスとなった。
需要段階別指数の推移 国際商品市況は徐々に持ち直しているものの、新型コロナウイルス感染症の影響により内外で経済活動を制限する動きが広がっており、先行きの不透明感は依然として強い。一方、米国の財政支出拡大が原油需要の下支えとなるとの見方から、原油価格は足元で上昇しているほか、銅価格は堅調に推移している。そのため、前年比で国内企業物価のマイナス幅は徐々に縮小していくと見込まれ、年度末にかけてゼロ近傍まで上昇する可能性があるだろう。
 
 

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(2021年01月14日「経済・金融フラッシュ」)

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