2020年12月10日

企業物価指数(2020年11月)―前年比▲2%前後の推移が続く公算大

藤原 光汰

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1.国内企業物価は2ヵ月連続で前年比▲2%台のマイナス

12月10日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、20年11月の国内企業物価指数は前年比▲2.2%(10月:同▲2.1%)と9ヵ月連続のマイナスとなり、事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲2.2%、当社予想は同▲2.3%)通りの結果となった。昨年10月の消費税率引き上げの影響が一巡したことにより、下落率が▲1.5%ポイント程度押し下げられ、2ヵ月連続で前年比▲2%台のマイナスとなっている。また、消費税を除いたベースでは10ヵ月連続のマイナスとなった。

内外の経済活動の再開に伴い、非鉄金属が前年比7.7%(10月:同7.0%)と5ヵ月連続のプラスとなっており、高めの伸びが続いている。一方、石油・石炭製品は前年比▲18.5%(10月:同▲16.2%)と9ヵ月連続で前年比2桁の下落が続いているほか、輸送用機器が前年比▲0.1%と1年2ヵ月ぶりのマイナスとなった。

国内企業物価指数は前月比では0.0%(10月:同▲0.2%)の横ばいとなった。前月比で内訳をみると、ガソリン(10月:前月比▲1.2%→11月:前月比▲1.2%)、灯油(10月:同▲2.0%→11月:同▲2.4%)、軽油(10月:同▲2.3%→11月:同▲2.0%)などの下落を受けて、石油・石炭製品が前月比▲1.1%(10月:同▲1.1%)と2ヵ月連続のマイナスとなったほか、既往の原油安を受けて、電力・都市ガス・水道が前月比▲1.4%(10月:同▲6.4%)と4ヵ月連続のマイナスとなった。一方、非鉄金属(10月:前月比0.7%→11月:前月比1.1%)や化学製品(10月:前月比0.6%→11月:前月比0.7%)、農林水産物(10月:前月比0.3%→11月:前月比0.6%)などが上昇したため、国内企業物価は前月から横ばいとなった。
国内企業物価指数(前年比・前月比)の推移/国内企業物価指数の前年比寄与度分解

2.輸入物価(前月比)は2ヵ月ぶりのプラス

20年11月の輸入物価指数は、契約通貨ベースでは前月比1.1%(10月:同▲0.1%)と2ヵ月ぶりのプラスとなった。一方、11月の円相場は前月比▲0.8%の円高水準となったことから、円ベースでは前月比0.5%(10月:同▲0.4%)と契約通貨ベースの伸びを下回った。
輸入物価指数変化率の要因分解(契約通貨ベース) 契約通貨ベースで輸入物価指数の内訳をみると、原油が前月比▲4.4%(10月:同▲6.9%)と2ヵ月連続のマイナスとなった一方で、石炭(10月:前月比▲0.1%→11月:前月比2.9%)、天然ガス(10月:同5.6%→11月:同10.4%)が上昇したことを受けて、石油・石炭・天然ガスが前月比0.9%(10月:同▲2.1%)と2ヵ月ぶりのプラスに転じた。そのほか、鉄鉱石(10月:前月比0.0%→11月:前月比22.8%)の大幅上昇などにより金属・同製品が前月比5.4%(10月:同1.6%)と前月から伸びを高めた。

3.当面前年比▲2%前後の推移が続く見込み

20年11月の需要段階別指数(国内品+輸入品)をみると、素原材料が前年比▲17.8%(10月:同▲19.1%)、中間財が前年比▲3.5%(10月:同▲3.2%)、最終財が前年比▲1.6%(10月:同▲1.4%)となった。素原材料の下落幅が縮小した一方で、中間財、最終財の下落幅が拡大しており、これまでの素原材料のマイナスが中間財、最終財の価格に波及したとみられる。
需要段階別指数の推移 また、消費者物価(生鮮食品を除く総合)と関連性の高い消費財は前年比▲1.8%(10月:同▲1.6%)と19ヵ月連続のマイナスとなった。

経済活動の回復を見込み、国際商品市況は足元で持ち直しの兆しがみられる。しかし、世界的に新型コロナウイルス感染症の収束がみえず、先行きの不透明感は依然として強いため、商品市況の改善幅は限定的だろう。国内企業物価指数は当面、前年比▲2%前後での推移が続く公算が大きい。
 
 

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(2020年12月10日「経済・金融フラッシュ」)

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