2020年10月09日

さくらレポート(2020年10月)~景気判断は8地域で引き上げ、先行きは慎重姿勢が継続

経済研究部 研究員   藤原 光汰

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1.全9地域中8地域で景気判断を引き上げ

10月8日に日本銀行が公表した「地域経済報告(さくらレポート)」によると、全9地域中、8地域で景気の総括判断を引き上げた一方、四国では判断を据え置いた。新型コロナウイルスの感染拡大により、前々回調査、前回調査(2020年3月、6月)は2期連続で全地域で景気判断を引き下げたが、経済活動の再開に伴い、今回調査では四国を除くすべての地域で景気の底入れが確認され、「持ち直しつつある」または「持ち直しの動きがみられる」などの表現が加えられた。しかしながら、新型コロナウイルスの感染収束がみえない中で、景気は引き続き厳しい状態が続いている。
地域景気判断

2.業況判断は8地域で改善も、先行きは地域ごとにばらつきがみられる

「地域経済報告(さくらレポート)」と同時に公表された「地域別業況判断DI(全産業)」をみると、8地域で前回調査(6月)から改善し、四国は横ばいとなった。

前回調査からの改善幅をみると、北海道、東北が+7ポイントと最も大きい。北海道は業況判断DIの水準でみても前回調査の時点で相対的にマイナス幅が小さく、新型コロナウイルスによる景気の落ち込みが比較的抑えられている可能性がある。一方、北海道と同様、前回調査で業況判断DIのマイナス幅が相対的に小さかった四国は、前回から横ばいとなった。四国の需要項目等別の判断を確認すると、個人消費や設備投資の動きは他の地域とあまり変わらないが、生産に回復の遅れがみられる。

先行き(2021年1月)については、4地域で今回調査からの改善、4地域で悪化、1地域で横ばいを見込んでおり、地域ごとに方向感にばらつきがみられる。最も改善幅の大きい東海は+5ポイントの改善を見込んでいる一方で、最も悪化幅の大きい四国は-5ポイントの悪化を見込んでいる。新型コロナウイルスの感染拡大による悪影響が長引く中、先行きの不透明感は依然として強く、経済活動が元の水準に戻るまでには時間を要するため、次回の地域経済報告(さくらレポート、2021年1月)では景気判断が据え置かれる地域が今回調査から増える可能性がある。
地域別の業況判断DI(全産業)/業況判断DIの変化幅(全産業)

3.製造業の業況判断は8地域で改善

製造業の業況判断DIは、全9地域中8地域で改善し、北陸は小幅に悪化した。

10月1日に公表された日銀短観(9月調査)では、中国をはじめとする海外経済の回復に伴う輸出の持ち直しや、国内での経済活動再開に伴う製品需要の回復を受けて、自動車を中心に改善が示された。地域経済報告(さくらレポート)においても、輸出依存度が比較的高いはん用・生産用・業務用機械や輸送用機械などで改善がみられた。ただし、景況感の水準は引き続き低い状態が続いている。

前回調査からの改善幅は、東海(+8ポイント)が最大となり、次いで北海道(+7ポイント)が高い。北海道では、電気機器(▲28ポイント)が大きく悪化する一方で、輸送用機械(+22ポイント)や食料品(+13ポイント)が改善し、全体を押し上げた。地域別では唯一の悪化となった北陸は、鉄鋼(▲16ポイント)や輸送用機械(▲40ポイント)など、悪化幅の大きい業種が目立つ。

先行きについては、四国を除く8地域で今回調査から改善が見込まれているものの、輸出の回復ペースは緩慢なものにとどまることが予想されるため、先行きの改善幅は急激な落ち込みの後としては小幅なものに留まっている。四国は13業種中8業種で悪化を見込んでおり、先行きの不透明感が強い。一方、それ以外の地域については、前回調査から改善幅が拡大している業種も多く、輸送用機械に加え、鉄鋼や非鉄金属などに持ち直しの動きがみられる。

日銀短観9月調査では、2020年度の想定為替レート(全規模製造業ベース)が107.25円と6月調査時点(107.74円)から若干円高方向に修正されている。前回調査以降、為替が円高に振れたためとみられるが、足元の実勢(105円台半ば)よりも円安水準にあることから、円高の進行の織り込みが遅れている可能性が高い。徐々に生産活動は戻っているものの、下押し圧力は強い状態が継続するとみられる。
地域別の業況判断DI(製造業)/業況判断DI(製造業)の変化幅
改善・悪化幅(前回→今回)/改善・悪化幅(今回→先行き)

4.非製造業の業況判断は8地域で改善も、先行きは全地域で悪化

非製造業の業況判断DIは、全9地域中8地域で改善し、四国は横ばいとなった。

緊急事態宣言の発令に伴うサービスの急激な落ち込みにより、前回調査では全地域、ほとんどの産業で悪化を示していたが、「Go To トラベル キャンペーン」の開始や、イベント等の人数制限の緩和などによる押し上げ効果もあり、今回調査では多くの地域、産業で改善がみられた。しかし、前回調査までの大幅な悪化を考慮すると、改善幅は小さい。業種別では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自粛要請、緊急事態宣言の影響で大幅に落ち込んでいた対個人サービス、宿泊・飲食サービスなどで景況感の改善が鮮明となった。ただし、これまでこれらの業種の牽引役となっていた訪日外国人旅行客によるインバウンド消費はほぼ消滅しており、今回調査における業況判断DIは対個人サービスが▲50前後、宿泊・飲食サービスが▲70~▲80程度となっており、平時と比べ水準は非常に低い。

前回調査からの改善幅は、東北(+7ポイント)が最大となり、北海道と近畿が+6ポイントと続いている。東北では、全12業種すべてで改善しており、対個人サービス(+20ポイント)の改善幅が最も大きい。近畿では、対個人サービスや宿泊・飲食サービスの改善に加えて、小売業の改善(+18ポイント)が目立った。

先行きについては、全9地域で悪化する見込みである。政府による需要喚起策が実施されているにもかかわらず、新型コロナウイルスの感染収束が見えない中、非製造業は慎重姿勢を崩していないとみられる。業種別では、対個人サービス、宿泊・飲食サービスは一部の地域を除いて引き続き改善する一方、企業の設備投資マインドの低下を受けて全地域で建設の大幅な悪化を見込んでいる。国内需要の低迷が今後も非製造業の景況感を押し下げるとみられる。
地域別の業況判断DI(非製造業)/業況判断DI(非製造業)の変化幅
改善・悪化幅(前回→今回)/改善・悪化幅(今回→先行き)
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   研究員

藤原 光汰 (ふじわら こうた)

研究・専門分野
日本経済

(2020年10月09日「経済・金融フラッシュ」)

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