2020年12月16日

コロナ禍における生活の変化(1)-「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」からみる生活行動の変化と地域間較差

生活研究部 主任研究員   井上 智紀

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1――はじめに

新型コロナウィルス感染症の国内における感染拡大に伴う緊急事態宣言から半年以上が経過した。周知の通り、緊急事態宣言の前後から今日に至るまで、検査体制の拡充もあいまって新規感染者数は7~8月の第二波を超え、足元では第三波の感染拡大の最中にある。この間、我々の生活は“三密の回避”、“在宅勤務”や“リモートワーク”、“ソーシャルディスタンス”といったキーワードが示すように、従前とは異なるものとなってしまったようにも見受けられる。こうした、いわば“ニューノーマル”ともいわれる生活様式は、新型コロナの感染状況が地域により異なるように、地域差がみられるのだろうか。本稿では、弊社が本年6月、9月に実施した「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査1」より、緊急事態宣言中の4月および各調査時点である6月末、9月末の3時点における生活行動として、買い物、食事サービス利用、働き方の3つの局面および生活時間について、感染拡大前(今年1月頃)との対比をもとに地域ごとの状況を概観していく。
 
1 調査概要等、調査の詳細は弊社サイト内の特設ページを参照されたい。
 

2――買い物行動の変化

2――買い物行動の変化

1|増加した買い物行動
感染拡大前(今年1月頃)に比べて利用が増加した行動についてみると、緊急事態宣言中の4月では中国地方で「スーパー」が、東京都で「ネットショッピング」「キャッシュレス決済サービス」が、南九州で「コンビニエンスストア」が、それぞれ全体に比べ高くなっている。また、第1回調査を実施した6月時点では東京都で「ネットショッピング」「キャッシュレス決済サービス」が、第2回調査を実施した9月時点では東海および愛知県、南九州で「ドラッグストア」が、四国、北九州、南九州で「ネットショッピング」が、愛知県で「キャッシュレス決済サービス」が、それぞれ高くなっている。

3時点間の変化に着目すると、「スーパー」「ドラッグストア」および「キャッシュレス決済サービス」が多くの地域で6月から9月にかけて上昇するなか、「デパートやショッピングモール」では東京都で4月から6月にかけて僅かながら上昇しているものの全体に低調な状態が続いている。また、南九州の「ドラッグストア」、東北の「キャッシュレス決済サービス」はそれぞれ一貫して上昇しているなど、増加した買物行動には業態や地域により差がみられている。
図表1 増加した買物行動
2|減少した買物行動
感染拡大前(今年1月頃)に比べて利用が減少した行動についてみると、緊急事態宣言中の4月では北海道で「スーパー」「ドラッグストア」が、東海および愛知県、北九州で「デパートやショッピングモール」が、北九州で「スーパー」が、それぞれ全体に比べ高くなっている。また、第1回調査を実施した6月時点では北海道で「スーパー」「ドラッグストア」が、東海および愛知県で「デパートやショッピングモール」が、第2回調査を実施した9月時点では東京都、愛知県で「デパートやショッピングモール」が、それぞれ高くなっている。

3時点間の変化に着目すると、「スーパー」「ドラッグストア」「コンビニエンスストア」が多くの地域で一貫して下降しているのに対し、「デパートやショッピングモール」では4~6月では横ばいで6月以降に下降に転じる地域が多くなっている。このほか甲信越の「コンビニエンスストア」、「ドラッグストア」では6~9月にかけては上昇に転じるなど、同じ実店舗であっても業態や地域により利用が減少した買い物行動にも差がみられている。
図表2 減少した買物行動

3――食事サービス利用の変化

3――食事サービス利用の変化

1|増加した食事サービス
感染拡大前(今年1月頃)に比べて利用が増加した行動についてみると、緊急事態宣言中の4月では東京都、大阪府で「デリバリー」が、北関東、北陸、愛知県、中国で「テイクアウト」が全体に比べ高くなっている。また、第1回調査を実施した6月時点では北関東および東京都で「テイクアウト」が高く、東京都では「デリバリー」も高くなっている。一方、第2回調査を実施した9月時点では大阪府で「デリバリー」が、北関東、甲信越、愛知県で「テイクアウト」が高くなっている。

3時点間の変化に着目すると、「デリバリー」「テイクアウト」ともに緊急事態宣言下の4月から6月にかけては多くの地域で下降した後、6~9月にかけては上昇に転じている。一方、「店内飲食」については、4~6月にかけての上昇は北陸、中国の2地域に留まり、6~9月にかけて北海道、大阪府、四国で上昇している。
図表3 増加した食事サービス
2|減少した食事サービス
感染拡大前(今年1月頃)に比べて利用が減少した行動についてみると、緊急事態宣言中の4月では愛知県、北九州で、第2回調査を実施した9月時点では東京都、北陸で、それぞれ「店内飲食」が高くなっている。

3時点間の変化に着目すると、「店内飲食」は甲信越、東海、大阪府、中国、北九州では4~6月にかけて、北海道、中国、四国では6~9月にかけて、それぞれ下降する一方、南関東、甲信越、北陸では6~9月にかけて上昇している。
図表4 減少した食事サービス

4――働き方の変化

4――働き方の変化

1|増加した働き方
感染拡大前(今年1月頃)に比べて増加した行動についてみると、緊急事態宣言中の4月では南関東および東京で「在宅勤務などのテレワーク」「オンライン会議や打合せ」が、甲信越で「労働時間」がそれぞれ高くなっている。また、南九州では「上司や部下、同僚との日常的なコミュニケーション」「出張」「労働時間」のほか「オンライン会議や打合せ」も高い。6月、9月においても南関東および東京では「在宅勤務などのテレワーク」「オンライン会議や打合せ」が高くなっているほか、6月には北陸で「上司や部下、同僚との日常的なコミュニケーション」「出張」が、南九州で「勤務先への出社」「オンライン会議や打合せ」が高い。一方、9月では東京都で「労働時間」が高く、大阪府で「在宅勤務などのテレワーク」が高くなっている。

3時点間の変化に着目すると、4~6月にかけては多くの地域で「在宅勤務などのテレワーク」が下降しており、横ばいであった地域でも6~9月にかけては下降している中、甲信越、近畿では6~9月にかけて上昇に転じている。また、北海道、関東、甲信越、東海、近畿で6~9月にかけて、「勤務先への出社」が上昇している。
図表5 増加した働き方
2|減少した働き方
感染拡大前(今年1月頃)に比べて減少した行動についてみると、緊急事態宣言中の4月では南関東および東京都で「勤務先への出社」が高く、東京都では「上司や部下、同僚との日常的なコミュニケーション」も高くなっている。このほか東北では「上司や部下、同僚との会食」が、甲信越では「在宅勤務などのテレワーク」が、愛知県、北九州では「労働時間」が高く、北九州では「上司や部下、同僚との日常的なコミュニケーション」も高い。6月、9月においても南関東および東京都では「勤務先への出社」が、甲信越では「出張」が高く、東京都では「上司や部下、同僚との日常的なコミュニケーション」も高い。

3時点間の変化に着目すると、多くの地域で「勤務先への出社」は一貫して、「労働時間」は4~6月にかけて、「上司や部下、同僚との日常的なコミュニケーション」は6~9月にかけて、それぞれ下降している。
図表6 減少した働き方

5――生活時間の変化

5――生活時間の変化

1|増加した生活時間
感染拡大前(今年1月頃)に比べて増加した生活時間についてみると、緊急事態宣言中の4月では東京都で「睡眠時間」「食事時間」「家事時間」が、北関東および東京都で「家族と過ごす時間」が、北九州で「家事時間」が、南九州で「一人で過ごす時間」が、それぞれ高くなっている。また、第1回調査を実施した6月時点でも同じく東京都で「睡眠時間」「家事時間」が、北関東および東京都で「家族と過ごす時間」がそれぞれ高いほか、北関東では「趣味や娯楽、スポーツ時間」も、東京都では「休養・くつろぎ時間」も、それぞれ高くなっている。一方、第2回調査を実施した9月時点では東京都で「家事時間」「家族と過ごす時間」が、南九州で「休養・くつろぎ時間」が高い。

3時点間の変化に着目すると、「睡眠時間」「食事時間」「家事時間」「休養・くつろぎ時間」「家族と過ごす時間」は多くの地域で4~6月にかけて下降しており、「家族と過ごす時間」は6~9月にかけてもさらに下降している。
図表7 増加した生活時間
2|減少した生活時間
感染拡大前(今年1月頃)に比べて減少した生活時間についてみると、緊急事態宣言中の4月では東京都および愛知県で「交際やつきあい時間」が高く、東京都では「一人で過ごす時間」、愛知県では「食事時間」も高くなっている。また、第1回調査を実施した6月時点でも同様に、東京都および愛知県で「交際やつきあい時間」が高く、東京都では「趣味や娯楽、スポーツ時間」「一人で過ごす時間」、愛知県では「休養・くつろぎ時間」「家族と過ごす時間」も高くなっている。一方、第2回調査を実施した9月時点では東京都で「交際やつきあい時間」、中国で「趣味や娯楽、スポーツ時間」が高くなっている。

3時点間の変化に着目すると、4~6月にかけては多くの地域で「一人で過ごす時間」が下降している一方、6~9月にかけては「趣味や娯楽、スポーツ時間」は北海道、東北、甲信越、中国で上昇、南関東、東海、北九州では下降するなど地域により異なる結果となっている。
図表8 減少した生活時間

6――結果の総括

6――結果の総括

以上みてきたとおり、買い物、食事サービス利用、働き方の3つの局面における生活行動および生活時間のいずれについても、緊急事態宣言下の4月および各調査時点である6月末、9月末の3時点における生活行動はそれぞれ様々に変化している上、地域によってもそれぞれ異なっていた。

時点間の差や地域差はいずれもそれぞれの時点、それぞれの地域における感染拡大の状況のほか、キャッシュレス決済やテレワークなどそれぞれの地域固有の特性による影響も受けた結果であるように思われる。こうした生活行動や生活時間が、第三波の真っ只中にある今、どのように変化しているかについては、今月実施する第3回の調査の結果を用いて改めて示すこととしたい。感染拡大の状況はこのほか、生活上の様々な局面における不安に対する影響としても現れている。生活不安の状況については稿を改めて提示する予定である。
 

Appendix

Appendix

各回の「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」の地域別のサンプル数は下表のとおりである。就労者に限定すると6月調査における四国、9月調査における北陸、四国ではサンプル数が30に満たず結果の信頼性に疑義が残るため、「働き方」に関する分析部分では図表中に参考として掲載するに留め、本文中には記載していない。
図表9 各回調査における分析に用いたサンプル数
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生活研究部   主任研究員

井上 智紀 (いのうえ ともき)

研究・専門分野
消費者行動、金融マーケティング、ダイレクトマーケティング、少子高齢社会、社会保障

(2020年12月16日「基礎研レター」)

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