2020年12月16日

年代別に見たコロナ禍の行動・意識の特徴~食生活編-若いほど外食再開の一方でオンライン飲み会にも積極的、共働き・子育て世帯で中食需要増

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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1――コロナ禍における外食やデリバリーなどの食生活の変容

ニッセイ基礎研究所では、全国の20~69歳の男女約2千名に対して「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」を継続的に実施している。数回に分けて、年代別の主だった変化について分析しており1、本稿では食生活の変容について捉える。
 
1 久我尚子「年代別に見たコロナ禍の行動・意識の特徴~買い物手段編」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2020/12/8)など
1全体の状況~コロナ禍で厳しい外食需要、外食需要の一部が中食シフト、中食需要自体も増している
まず、20~69歳全体の状況を概観する。調査では食生活の変容を捉えるために、飲食店の店内での飲食(外食)やテイクアウト・デリバリーサービス(中食)の利用のほか、コロナ禍で話題となったオンライン飲み会・食事会にも注目している。

図表1を見ると、1月頃のビフォーコロナと比べて9月末では、外食では減少が目立つ(増加の割合に対して減少の割合が高い)一方、テイクアウトなどの中食では増加が目立つ。

なお、調査結果概要2に示した通り、6月末と9月末を比べると、外食では減少の割合は低下していないものの(6月末53.7%→9月末54.4%、+0.7%pt)、利用していない割合は低下しており(20.0%→12.1%、▲7.9%pt)、経済活動の再開とともに、コロナ禍で外食を全く利用していなかった層で利用再開の動きが見える。
図表1 2020年1月頃と比べた9月末の食事手段の増減(n=2,066)
一方、9月末にかけて、中食では増加の割合が一層上昇しており(テイクアウト:21.7%→25.2%、+3.5%pt、デリバリー:10.0%→14.2、4.2%pt)、中食利用は一層増えている。

つまり、コロナ禍で外食需要の回復が厳しい状況にある中で、外食需要の一部が中食需要へシフトするとともに、中食需要自体も一層増している可能性がある。この背景には、コロナ禍でテイクアウトやデリバリーに対応し始めた飲食店が増え、消費者にとって選択肢が増え、サービスとしての魅力が増したことに加えて、ビフォーコロナから、利便性重視志向の高い共働き世帯や単身世帯、高齢世帯などが増加傾向にあることもあげられる。なお、このような中長期的な世帯構造変化の影響等によって、近年、中食市場は拡大傾向にある(図表2)。
図表2 外食・中食の市場規模
ところで、図表1ではオンライン飲み会・食事会では、利用していない割合が74.3%を占める。つまり、利用層は残りの25.7%であり、世間の話題ほどには多数派ではない。しかし、6月末の利用層は21.6%であったため、増加傾向にはある。
2年代別の状況~若いほど外食再開しオンライン飲み会にも積極的、共働き・子育て世帯で中食需要増
次に、年代別の状況を見ると、外食では、若いほど、変わらないや増加の割合が高まる傾向があり、20歳代では変わらないが全体を8.8%pt上回る(図表3(a))。一方、高年齢ほど減少の割合が高まる傾向があり、60歳代では全体を9.1%pt上回る。

つまり、新型コロナウイルスの感染による重篤化リスクの低い若い年齢ほど、ビフォーコロナと同様に外食を利用しており、リスクの高い高年齢ほど外食の利用を控えている。

また、6月末と9月末を比べると、若いほど変わらないの割合が上昇しており(20歳代:24.4%→36.8%、+12.4%pt)、コロナ禍においても外食の再開に積極的である。

テイクアウトやデリバリーなどの中食では、20・30歳代を中心に、若いほど増加の割合が、高年齢ほど利用していない割合は高まる傾向がある(図表3(b)・(c))。なお、60歳代では利用していない割合が全体を10%pt以上上回る。
 
図表3 2020年1月頃と比べた9月末の年代別に見た食事手段の利用の増減
ところで、中食が増加した20・30歳代では、職業は正規雇用者3、配偶者がいる場合の配偶者の職業も正規雇用者4、ライフステージは第一子誕生や第一子小学校入学など低年齢児のいる割合が高い5。つまり、コロナ禍で低年齢児のいる共働き世帯で中食需要が増した様子がうかがえる。

前述の通り、ビフォーコロナから共働き世帯は中食需要をけん引しているが、外食需要も強い。総務省「家計調査」などを分析すると、子育て世帯では専業主婦世帯と比べて共働き世帯で外食の支出額が多い6。低年齢児のいる共働き世帯をはじめ、外食需要の強い層がコロナ禍で外食を控えた結果、外食需要が中食需要へとシフトした様子がうかがえる。

また、6月末と9月末を比べると、全ての年代で増加の割合が上昇傾向にあり、テイクアウトは40・50歳代、デリバリーは20・30歳代での伸びが比較的大きい。

オンライン飲み会・食事会は、高年齢層ほど利用していない割合が高く、若いほど利用層が多い(図表2(d))。これは、買い物手段の分析でも見たように、ビフォーコロナから、若いほどデジタル手段の利用水準が高いほか、友人との飲み会などに積極的であることも影響しているのだろう。

また、6月末と9月末を比べると、全ての年代で利用していない割合は低下傾向にあり、利用者は増加傾向にあるが、若いほど増加傾向が強い。
 
3 正規雇用者の割合は、全体40.1%、20歳代49.4%、30歳代56.9%に対して、テイクアウトサービスの利用増加層では20歳代55.4%(全体+15.3%pt、同年代+6.0%pt)、30歳代62.0%(全体+21.9%pt、同年代+5.1%pt)
4 配偶者が正規雇用者の割合は、全体25.8%、20歳代19.4%、30歳代35.3%に対して、テイクアウトサービスの利用増加層では20歳代25.3%(全体▲0.5%pt、同年代+5.9%pt)、30歳代45.3%(全体+19.5%pt、同年代+10.0%pt)
5 第一子誕生と第一子小学校入学の割合の合計は、全体14.5%、20歳代16.1%、30歳代39.2%に対して、テイクアウトサービスの利用増加層では20歳代24.1%(全体+9.6%pt、同年代+8.0%pt)、30歳代48.2%(全体+13.7%pt、同年代+9.0%pt)
6 久我尚子「共働き・子育て世帯の消費実態(3)」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2018/3/12)など
 

2――まとめ

2――まとめ~ポストコロナでは外食再開の動きが強まるが、中食市場は堅調に推移・拡大の余地あり

図表4 18歳未満の子のいる世帯の父母の就業状況 コロナ禍において、若いほど外食再開の動きが強いものの、全体としては外食控えが続いている。一方、テイクアウトやデリバリーに対応する飲食店が増え、サービスとしての魅力が増したことで、外食需要の一部が中食へシフトするとともに、中食需要自体も増している。また、コロナ禍の中食需要は、ビフォーコロナから中食需要や外食需要の強い共働き・子育て世帯がけん引している様子もある。

海外ではワクチン接種が始まり、行動制限が緩和されるポストコロナが近づいてきた。

ポストコロナでは、年代によらず外食再開の動きが強まるだろう。一方で、中食需要の強まりは、中長期的な世帯構造の変化が影響しているため、今後も堅調に推移するだろう。

あらためて世帯構造の変化を見ると、2000年代初頭では、子育て世帯では専業主婦世帯と共働き世帯が同程度だったが、共働き世帯が上回り、2019年では6割を超える(図表4)。

また、単身世帯は増加傾向にあり、2015年で全体の34.5%を占め(総務省「国勢調査」)、2040年では約4割を占める見込みだ(国立社会保障人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計、2018年推計)」)。なお、このうち約半数は高齢世帯が占めるようになる。

今後とも利便性を重視する世帯が増えるため、人口減少下においても、外食と比べて市場規模の小さな中食市場は拡大の余地があるだろう。
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

(2020年12月16日「基礎研レター」)

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