2018年03月12日

共働き・子育て世帯の消費実態(3)~利便性重視志向の食生活、高い教育熱、クルマやスマホ所有が多く買い替え頻度も高い?時短・代行ニ ーズの理解が鍵。

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■要旨
 
  • 本稿では、共働き世帯と専業主婦世帯の直近の消費支出の内訳について、主要品目だけでなく個別品目の違いまで見ることで、特徴を詳しく捉える。共働き世帯は専業主婦世帯より「教育」や「交通・通信」、「その他の消費支出」が多く、「住居」が少ない。
     
  • 消費内訳で最多の「食料」では、共働き世帯で妻の収入が多いほど「外食」や「調理食品」が多く、食材が少ない。共働きで妻がフルタイムで働く世帯ほど、利便性重視志向(時短・代行ニーズ)の強い食生活を送っており、「家事サービス」の利用も多い。
     
  • 共働き世帯で多い「教育」の内訳を見ると、共働き世帯の方が私立へ子供を通わせている家庭が多く、学習塾代も多い。近年では小学校受験にも働く母親の存在感がある。習い事付き学童保育や習い事送迎タクシーなどのサービスも登場しており、今後とも多方面に渡り教育熱は高まりそうだ。
     
  • 「交通・通信」の内訳を見ると、共働き世帯の方が自動車やスマートフォンの所有台数が多いために支出がかさんでおり、買い替え頻度が高い(あるいは高額品を買っている)可能性もある。背景には、共働き世帯では通勤手段として自動車が複数必要であったり、在宅率の低さから通信手段の必要性が高いこと、世帯収入が比較的多いことなどがあげられる。
     
  • 「その他の消費支出」では、共働き世帯の方が雑費がかさみ、使途不明金が多い。使途不明金の多さは、複数の有業者がいることによる個計化の影響もある。
     
  • 今後、ますます共働きが増え、消費力のあるパワーカップルも増えるだろう。フルタイムで働く女性が増えると、多方面に渡り、時間・代行ニーズが広がるだろう。政策は進んでいるが、両立環境の整備は過渡期だ。共働き世帯が何に困り、何を必要としているのか、そこに個人消費活性化の鍵が眠っている。

■目次

1――はじめに
2――共働き世帯と専業主婦世帯の消費支出内訳の比較
  1|主要品目の比較~共働きでは「教育」や「交通・通信」が多く、
   「住居」が少ない
  2|「食料」の内訳の比較~妻フルタイム世帯ほど利便性重視志向が強く、
   家事代行利用も多い
  3|「教育」の内訳の比較~共働きで授業料が高く私立児童が多い傾向、
   「お受験」に働く母の存在感も
  4|「交通・通信」の内訳の比較~共働きでクルマやスマホの保有台数が多く、
   買い替え頻度も高い?
  5|「その他の消費支出」の内訳の比較~共働きで雑費がかさみ、
   個計化で使途不明金も多い傾向
3――おわりに
 ~共働き・フルタイム女性増で、多方面で期待できる時短・代行ニーズの広がり
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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レポート紹介

【共働き・子育て世帯の消費実態(3)~利便性重視志向の食生活、高い教育熱、クルマやスマホ所有が多く買い替え頻度も高い?時短・代行ニ ーズの理解が鍵。】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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