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コロナ禍において、熱中症による救急搬送者数はどうだった?

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1――熱中症による搬送者数

図表1は、6~9月の暑さ指数(WBGT1)と熱中症による救急搬送者数の日ごとの推移である。暑さ指数(WBGT)とは、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい(1)湿度、(2)日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、(3)気温の3つを取り入れた指標である2。これによると、すべての生活活動で熱中症の危険性が特に高いとされる31℃以上3は、8/10~8/30の21日間のうち15日間を占めた。救急搬送者数はこの21日間に6~9月の全搬送者の52%が搬送されていた。
1 Wet Bulb Globe Temperature(湿球黒球温度)の略。ここでは、東京都、大阪市、名古屋市、新潟市、広島市、福岡市の6都市の日最高暑さ指数を使用した。
2 環境省熱中症予防サイト(https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php)より。
3 暑さ指数(WBGT)が28℃以上31℃未満が「厳重警戒」、31℃以上が「危険」とされている。
2――搬送者は、子ども、屋内・屋外における公衆の場、軽症者、が少なかった
搬送者の年齢構成は、昨年までは50%程度が65歳以上の高齢者で、次いで18~65歳未満が4割弱、7~18歳未満が1割強だった(図表4)。しかし、今年は、高齢者の割合が57.9%と、昨年よりも5ポイント以上上昇した。一方、18~65歳未満は33.5%と昨年よりも2ポイント程度、7~18歳未満は8.1%と昨年よりも3ポイント程度低下した。月別にみると、6~8月は特に65歳未満の構成比が低く、65歳以上が高かった。これは、新型コロナウイルスの感染拡大によって休校や部活動の中止、就労者も在宅勤務や社外活動が減少したことによる影響だと考えられる。9月は生活が例年に近づいたことから、搬送者の年齢構成も例年と大きな差はなくなっていた。
3――休校や各種イベントの中止の影響があった可能性
今回の消防庁による「熱中症による救急搬送人員調査」では、例年と比べて7~18歳未満、18~65歳未満の搬送者数の割合が低く、高齢者の割合が高かった。搬送者の年齢構成の変化の原因としては、休校や各種学校イベントの自粛、職場における在宅勤務の推奨や外回りの業務の減少等によって、例年であれば屋外で活動していた子どもや就労者が熱中症になる機会が少なかったことの影響が考えられる。また、屋外公衆の場からの搬送も例年と比べて減少しており、コロナ禍におけるイベント中止の影響が考えられる。
また、例年と比べて、軽症による搬送者が少なかった。これは、在宅率が高かったことが想定されることと、相対的に重症化しやすい高齢者の搬送が多かった可能性と、軽症の場合に、医療機関の負担軽減や新型コロナ感染不安等を理由に自宅療養を行った人が多かった可能性が考えられる。
新型コロナウイルスの流行の熱中症への影響に関しては、熱中症による死亡者数も判断の材料となり得るが、死亡者数の考察については翌年の厚生労働省の発表を待つこととする。
(2020年11月26日「基礎研レター」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
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