2020年10月28日

コロナ禍を上手く乗り切っているのはどの国か?-50か国ランキング(2020年10月更新版)

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:7月に続き、台湾の評価が高い

2020年7月に新型コロナウイルスの感染拡大に対する影響について各国の状況を概観するために、「コロナ被害」および「経済被害」を数値化しランキングを行った1

本稿は2020年10月中旬までの状況を踏まえたランキングの更新版である。10月14日時点までのデータをもとに再評価をしたところ、結果は以下の通りとなった。
 

【評価結果】
・総合順位では、台湾、韓国、ニュージーランド、日本、パキスタンの順に高評価となった。
・評価が低い国は、欧州及び南米に多い。これらの国では感染拡大が続く一方で成長率も大きく落ち込んでいる傾向にある。

 
1 高山武士(2020)「新型コロナウイルスと各国経済-コロナ禍を上手く乗り切っているのはどの国か?49か国ランキング」『ニッセイ基礎研レター』2020-07-03を参照。本稿の分析対象国は、前回の対象国(MSCI ACWIの指数を構成する 49 カ国・地域)に加えて、問い合わせの多かったベトナムを加えて50か国・地域としている。また、中国と記載した場合は中国本土を指し香港は除くことし、香港等の地域も含めて「国」と記載する。
評価は、「コロナ被害」(感染拡大)と「経済被害」をいずれも小さく抑えている国という観点から実施し、具体的には「コロナ被害」は「(1)累積感染者数」「(2)感染拡大率」「(3)致死率」のデータ、「経済被害」はコロナ禍によって失われたGDPの損失を推計して評価している。より詳細な手法については、上記レポートを参照。

2.結果の詳細:今後も評価は大きく変動する可能性あり

今回、実施した評価は図表1の通りであり、感染者数・死亡者数を10月中旬までのデータに更新したほか、「経済被害」の算出のために用いた2020年(度)のGDP見通しを9月に公表されたOECDの見通し、および10月に公表されたIMFの見通しを用いて更新している(図表2)。

各国の「コロナ被害」と「経済被害」の状況をそれぞれ見ると、まず「コロナ被害」では、感染第2波が襲っている欧州で評価を下げている国が多い。アジアの中ではマレーシアも足もとの感染拡大率が大きくなったことで点数が下がっている。また、南米のアルゼンチンなど、一貫して感染を抑制できていない国では累積感染者数が大きく増えている2

次に「経済被害」では、最新の見通しを反映した結果、多くの国で評価が変動している。例えば、米国は7月時点の推計よりもGDP損失を低く抑えられる見通しとなっており、順位を上げている。なお、GDP損失が7月時点より小さい国では、経済への直接的な影響が少なかった国に加えて、大規模な財政政策したことで経済が下支えされている国もあると見られる。総じて見ると、新興国では7月時点の見通しよりGDP損失が大きくなっている傾向にあると言える。

こうした状況の中で、全体の順位を見ると台湾および韓国は高い順位を維持できている。特に台湾は、感染者数が少ない上に、経済状況では半導体事業が好調なことで、GDP損失は7月時点よりもかなり小さくなるものと見込まれている。

ニュージーランドは観光関連産業が盛んであることから、GDP損失は大きくなると見込まれるものの、コロナ被害をかなり小さく抑えていることで順位を上げた。

日本も、緊急事態宣言後に、感染第2波が襲っているが、他国と比較して、感染者数は少なく、死亡者も低水準に抑えていることから評価を上げている。パキスタンについては、6月をピークとする第1波に見舞われ、アジアの中では感染者数が多いものの、比較的速やかにピークアウトさせることができており、経済への影響も限定的にとどまると想定されている3ことで順位を上げた。

一方、南米や欧州は「コロナ被害」および「経済被害」のどちらも悪く、順位を下げている国が目立つ。欧州では、第1波の際、致死率が高くなってしまった国も多く、それが今回の評価にも影響している。

ただし、今回更新したランキングも、今後も大きく変動し得ると見られる。7月時点のランキングでは感染第1波を上手く抑えられるかの巧拙が問われていたが、感染第1波を抑えても、その後の行動次第では、再び感染が急拡大する可能性もある。
(図表1)各国のコロナ対応の評価
これまで各国が実施してきた封じ込め政策を見ると、中国のように、都市封鎖(ロックダウン)や大規模な検査により、感染の抑制をしている例がある一方で、インドのように全土で都市封鎖をしても感染がピークアウトしなかった例もある。欧州のように、都市封鎖や行動制限などによってピークアウトした後、再び感染が拡大するケースもあり、国によって成功例はあるものの、封じ込め政策の「特効薬」というべき方法は見つかっていないと言えるだろう。

そのため多くの国ではマスクやソーシャルディスタンスの確保といった基本的な感染予防策と、感染者の早期発見・隔離といった医療体制整備をしつつ、感染拡大の状況に応じて効果的な封じ込め政策を模索する状況が続いていると言える。不確実性は依然として高く、各国ともに油断ができない状況が続きそうだ。
(図表2)各国の成長率見通し
 
2 感染者数や死亡者は各国の報告数値を用いているが、国によって報告基準が異なる点に注意が必要。
3 パキスタンのGDP損失は年度単位で計測しており他国と基準が異なる点には留意が必要。ただし、経済被害が相対的に軽微である国であることは変わらない。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

(2020年10月28日「経済・金融フラッシュ」)

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